02
臨海22世紀
作者 長宗我部 芳親
海中退治譚編
02
構文と誤字脱字など
> と、玄関の扉が開き、タッタッタッと裸足のセーラが駆け寄ってきた。
⇒この書き方は、視点保有者に向かってセーラが動いている描写になります。
たとえば「駆け寄った」「駆けてきた」はともにこちらに向かって動いている動きを表しますよね。だから「駆け寄ってきた」は意味合いの同じ言葉を重ねています。
先に説明しましたが、「駆け寄った」も「駆けてきた」も視点保有者に向けて動いているのです。実はこの補助動詞の「くる」や「いく」は、視点保有者から見た、つまり文章を書いた人から見た描写なんですね。
この補助動詞は視点を表すこともあるので、これからは使い方に注意してください。
補助動詞がわかるようになると、文章の質が劇的に改善しますので、気を配って書いてみましょう。
> 仕事柄上、一緒に行動することが多いのでいつでもコンタクトを取れるようにだ。
⇒「仕事柄、」か「仕事上、」かですね。仕事のウエイトが高い場合は「仕事柄、」のほうがオススメです。
>食事でお腹も膨れ、とてもリラックスしているようだ。
⇒ここに「ようだ」が入っているので、視点はミオンにはないとわかります。すると先ほどの「駆け寄ってきた」はちょっと食い違いを生じかねません。
ですがここを「とてもリラックスしている。」とするとミオンの感覚を直接書いているため視点がミオンになってしまいます。ですので先ほどのところを「駆け寄ってきた」にすると、ちょっと都合が悪いわけです。
> 黒いマントの下に、黒色の軍服に身を包んだ、長身スタイリッシュな女性だ。ロングコートから垣間見える白い絶対領域が彼女の華奢さを強調させている。
⇒助詞「に」が出てくるのですが、「黒いマントの下に」の「に」がどこにかかっているのか不明です。考えられるのは「(身を)包んだ」ですが直結させると「黒いマントの下に(身を)包んだ」となってちぐはぐです。
ここは、
> 黒色の軍服の上に、黒いマントをまとった、長身スタイリッシュな女性だ。
⇒とすれば、軍服はすでに着ているのでどういう服装なのかがわかりやすいです。
ただ、次に「ロングコートから垣間見える」とあるのでどういう服装なのかがわかりづらいですね。「黒いマントの下に」ロングコートを着ているのか。逆に「黒いマントの上に」着ているのか。このあたりは書き手がどういう服装を連想しているかで変わってきますので、訂正は書き手の意図に従って行ないましょう。
※構成と展開について
セーラの幼らしさが生き生きとした文体で書かれているので、キャラクターが立っていますね。ミオンも出てくるけど、ここはセーラのパートと見たほうがよいかもしれません。
であれば「駆け寄ってきた」より「駆け寄っていった」「駆けていった」としたほうが、セーラのパートとしては意図どおりになりますね。
補助動詞の中でも「いく」「くる」は視点保有者を特定する手がかりになりますので、誰に焦点を合わせているかが示されます。たった二文字の補助動詞ですが、それが文章全体に効いてくるボディーブローとなるのです。
今、誰に焦点が当たっているんだっけ? ということを考えて使い分けるようにしましょう。
物語の展開はひじょうにスムーズに流れています。
構成も「01」でなぜミオンが海を泳いでいたのかの理由を端的に示していますので、こちらも引っかかりがありません。
全体の完成度はかなり高いですね。
では、続けて「03」に向かいますね。
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