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 半身に斬りかかろうとした矢先、篠木は上半身を翻して攻撃をかわした。

⇒「半身」が二回出てくるので、映像が浮かびませんでした。

 かといって「上半身に斬りかかろうとした矢先、篠木は上半身を翻して攻撃をかわした。」と書くとなにか間抜けになってしまいます。「半身に斬りかかる」がおかしいので、単に「斬りかかろうとした矢先、〜」でよいと思います。



 攻撃をかわされたことでカグツチに生じたタイムラグに、篠木は彼の降り掛かった腕に踵落としを与えて対応する。

⇒「タイムラグ」より「スキ」のほうが適切だと思います。

 また「篠木は彼の降り掛かった腕に」の「彼」は誰でしょうか。バッと見だと「篠木」なのか「カグツチ」なのかわかりません。もしカグツチの腕であれば「彼の」は書かなくてもだいじょうぶです。

 「踵落としを与えて対応する」ですが、打撃は「加える」ものです。また対応は「ある物事に対して応じる」ことです。適切に応じる場合は「対処」のほうがふさわしいですね。そして「加える」は次文にありますので、使わずに表現してみます。

 それを踏まえて書き改めます。

⇒攻撃をかわして生じたスキに、(篠木は)降り掛かった腕へ踵落としで対処する。

 「篠木は」はなくても意味は通じます。



 篠木は持ち前の剣が突き刺さり、攻撃する手段を失ったカグツチ。

 その顔に向かって篠木は渾身の蹴りを入れた。

⇒前文の「篠木は」は不要ですね。また二文に分けるとテンポが悪くなります。

⇒剣が突き刺さって攻撃手段を失ったカグツチの顔に、篠木は渾身の蹴りを入れた。

 と書けば、流れるような動作が再現できます。



 光に照らされ目を篠木は見開いた。

⇒これも語順が悪いですね。

⇒光に照らされた篠木は目を見開いた。

 かもしれませんが、人間であれば網膜が焼けるので゛光に照らされると目を細めるかまぶたを閉じるか下を向くかしますね。

 人間でなければそんな配慮はしないかもしれません。



 ぱっと光って。光は飛び散って。

 レーザーは彼の横顔に殴り掛かるかのように当たった。

 間もなく、篠木の身体は翻るように吹き飛んだ。

⇒「ぱっと輝いて、光が飛び散って。」とすれば「光」の字の重複は避けられます。

 次の二文は一文にすると流れるような動作に転換できます。

⇒レーザーは彼の横顔へ殴り掛かるかのように当たり、身体が翻るように吹き飛んだ。

 どうでしょうか。動きがスムーズに行なわれていますよね。



「貴様、その肉体は人間のものだぞ? 神に適うとでも思ったのか」

⇒この場合の「かなう」は匹敵する意なので「敵う」ですね。



 しばらく静寂に包まれたが、ふと辺り一帯にグチュグチュと音が響き渡る。

 ゴオオオォォォ――

 辺り一帯を突然、強い突風の渦が襲った。

⇒「辺り一帯」が近いところで二回出てきます。「片方を削る」でしたよね。

⇒しばらく静寂に包まれたが、やがてグチュグチュと音が響き渡る。

 ゴオオオォォォ――

 辺り一帯を突然、強い突風の渦が襲った。



 すると黒い靄がほんの僅かに浮かび上がり、異型の者が現れた。

⇒基本的には「異形の者」ですね。



 篠木の荒々しかった呼吸は落ち着き。

 虚ろだった瞳は赤く染まった。

 篠木は獣のように唸る。

⇒ここも文を分けないほうがよいですね。とくに一文と二文はひと続きの動作なので、一文のほうが適切です。

⇒篠木の荒々しかった呼吸は落ち着き、虚ろだった瞳は赤く染まった。そして獣のように唸る。

 と書くと情景が浮かびますよね。



 間髪を入れず、篠木は前衛に就いていたカグツチの前に駆け寄り、拳を固めて殴り掛かった。速い。

⇒間髪を入れず、篠木は前を固めていたカグツチに駆け寄り、拳を固めて殴り掛かった。

 速い!

⇒「速い」ことを強調したければ、行を改めて感嘆符(!)を付けましょう。

 あと「前」の字の重複を解消してみました。



 これを見て危機感を感じたトコヨは飛び立とうとする。

⇒「危機感」は「覚える」「抱く」「ある」「持つ」ものですね。

 「感」の字の重複からも、おかしな表現だと気づけるようになりましょう。



 だが、彼が気づいた頃には羽に大きな穴が篠木によって開けられていた。

⇒直前にも「彼が気づいた頃には」という表現がありましたので、少し変えてみます。

⇒だが、篠木によって羽に大きな穴が開けられていた。



 同じく、彼女に元へ拳が降り掛かったが……

⇒同じく、彼女へ拳が降り掛かったが……。

 ですね。



 篠木はその巨体に押しつぶされ、意識を失うこととなった。

⇒ここはシンプルに「意識を失った。」でよいでしょう。



 ヒバリはアスカの開放で手が埋まっていた。

⇒「アスカの介抱で」ですね。



 魂が出入りしたの跡が見つからなかったのだ。

⇒「魂が出入りした跡が〜」ですね。



 ここでヒバリの意識が戻った。

 どうたら彼女には自分が何をしてかの記憶がないらしい。

⇒「ここで」は不要です。「どうやら彼女には〜」ですね。



 だが、その一方で浮かない顔をしていたヒナはなんと言えよう。

⇒この一文に意味がよくわかりません。

 ヒナは言う言葉がないのか、ヒナにかける言葉がないのか。

 おそらくこのふたつのどちらかですが、どちらかを判明させる手がかりがありません。




────────



第一章の総括です。


 展開としては「現代和風ファンタジー」の本作は、神が魂と羽衣を回収する役を担っている。そして神の一柱であるヒバリが、回収していた魂を逃してしまう。

 ヒバリを介抱したアスカと、ヒバリの上司であるヒナの三名が、失われた魂を求めて戦う物語。

 斬新とまではいきませんが、和風ファンタジーには一定の需要があるため、うまく書けたらある程度の評価を集められるでしょう。

 第七話で書きましたが、シーンに必要な情報が適切に提示されていないので、読み手が混乱してしまう場面が見られます。

 そのシーンが「いつ」「どこで」「誰と誰が」「なにをする」シーンなのか。

 それを明確にして、書き漏らした情報がないかを確認してみてください。


 構造としては「三人称視点」で描かれていて、ときどき先取り情報が出てくるため、「神の視点」になりがちなので注意してください。

 「神の物語だから」と言い訳しても、読み手が人間であることを忘れないようにしましょう。

 「三人称視点」は、誰の心の中も覗いてはいけない決まりです。

 そのぶん、観察力を駆使して、外形から心情を汲み取れるだけの文章力・表現力が求められます。


 本当は「一人称視点」で書いて欲しいところなのですが、この物語は最低でも人間のアスカと神のヒバリ、この二名を描けないと物語が進まないため、「一人称視点」は採用できません。

 なので「三人称視点」以外の選択肢はないのですが、文章がまだ練られておらず、展開がもたついたり先走ったりしてしまうケースも見受けられます。


 物語の構想と勢い自体はよいので、それを活かした文章が書けるよう、指摘した校正ポイントをしっかりと自分のものにしてくださいね。


 以上、第一章の総括でした。



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