非公開作品のためタイトル、著者名、URL等は割愛致します。(04)
さて、朝になり、昨晩ヒナとヒバリが約束した時間になった。
⇒「さて、」は要りません。時間の経過は空行などで表現すれば事足りますよ。
ふとそれが彼女の視界にとまる。
⇒「視界にとまる」と書くと「動いていたものが目に入る場所でとまった」ように映るので「目にとまる」でよいでしょう。おそらく「視界に入る」と「目に止まる」の混同表現と思われます。
ひとまず手紙を取ってみると、そこには、『頑張って』とのメッセージが添えられていた。
⇒「『頑張って』のメッセージ」ですね。「との」は文語的で散文の小説とは少し相性が悪くなっています。
部屋を見渡すにも家を後にした後みたいだった。
⇒「部屋を見渡すも」ですね。「見渡すにも」は「見渡そうと思っているのだが難しい状況」であるときに使います。
「家を後にした後みたいだった。」は「後」が二回出てきます。基本的に一文に同じ感じは使わないように意識するだけで、格段に文章力が高まりますよ。
ここでは「家を出た後みたいだった。」と平易に書いたほうが正確に伝わります。
朝早く電車に乗れば、満員になった車両に乗らなくて済む。
⇒ここは助詞「に」が3回出てきます。重文ならまだなんとかなるのですが、複文だと意味が格段にとりにくくなるので、助詞「に」を減らせるだけ減らした文に仕立てます。
「朝早くなら、満員の電車(車両)に乗らなくて済む。」
電車でも車両でかまわないのですが、単に車両と書かれるとバスも含まれてしまうため、取り違えにくい「電車」に置き換えています。これで助詞「に」は1回になりました。
助詞も一文に1回だけ使うように工夫すると、格段に文章力が高まります。
ただ助詞「に」と「のに」「には」は別の助詞とカウントします。他の助詞と組み合わせると意味合いが異なるからです。
ある日に思い至って行動にでたものが、いつの間にか彼女自身の日課となっていたのだった。
⇒ここも助詞「に」が出てきますね。
「ある日思い至って行動に移したものが、いつの間にか(いつしか)日課となっていた。」
「出る」という単語は意味が多いため多用しがちになります。「小説賞・新人賞」では、より適切な言葉を選択する「
ここで「いつの間にか」の「にか」が助詞「に」ではないかと思われるかもしれませんね。ここは「いつの間にか」というひとつの慣用句なので、仮に助詞「に」だとしてもカウントしないことになっています。慣用句の助詞はカウント外なので、覚えておきましょう。
彼女を最後に見たのは、家を出ていく前。だから、アスカには彼女がそれをみてどう思ったのか確かめる術はなかった。
⇒ここは前文「おにぎりはヒバリが眠りについた頃に密かに握ったものだ。」なので、当たり前のことが書かれています。残すとするなら、
「だから、彼女がそれを見てどう思ったのか確かめる術はなかった。」
だけですね。
缶にはおまけで小さなおじさんがしがみついていた。
⇒これは面白いですね。こういうところにネタを仕込めるのは発想力のある証拠です。仮に魑魅魍魎であっても、なかなか小さなおじさんが自動販売機の缶に付いているなんて考えませんからね。
缶を開けてをぐびっと中を飲み干した。
⇒「ぐびっと」で「飲み干し」てしまうと、一回で飲み干したように感じられます。一息にではなく、何度か息継ぎしながら飲んだのであれば「ぐびぐびっと飲み干した。」とすれば豪快さもそれほど薄れないのでオススメです。
電車に揺られ、駅に着き。やがてオフィスへ。
⇒これは要らない文章ですね。
朝起きて、背伸びをして、パジャマを脱いで、ワイシャツを着て……と、経過をすべて書くとそれだけで文字数を費やせますが、単に「朝起きてスーツに着替えた」だけで伝わります。
それと同じで、ここでは、
⇒それから数分後にやって来た電車に乗って、会社へ向かった。
今日もアスカは一番乗り。誰よりも早くタイムカードを切った。
⇒でじゅうぶんに伝わります。
ちなみにタイムカードは「切る」より「押す(打刻する)」ものです。
まあ慣習的に「タイムカードを切る」と言いますので、あながち間違いではありません。ですのでここでは「タイムカードを切った。」のままでかまいません。
アスカは徒然なるままに机の上でうつ伏せ、始業時間まで待つことにした。
⇒ここをそのまま解釈すると、「机の上に乗っかって、うつ伏せで寝そべって、始業時間まで待つことにした」ように映ります。かなりシュールな絵が浮かびますね。
ここでは「机に伏して、始業時間まで待つことにした。」でかまいません。
より強調したければ「机に突っ伏して、〜」ですね。
十分、二十分と時間が経つにつれて人がぞろぞろとやってくる。
⇒「やってくる」も汎用性の高い言葉なので、もう少し絞りましょう。たとえば「集まってくる」とか。
そんな矢先、全身がゾワッと湧き上がるような感覚でアスカは目を覚ました。
⇒「ゾワッと」「湧き上がるような」が「感覚」にかかりますが、基本的にかかる言葉は長いものから順に並べるとわかりやすくなります。
⇒そんな矢先、全身が湧き上がるようなゾワッとする感覚で目を覚ました。
すると「ゾワッと」には「する(した)」がなかったことに気づけます。
あまりにそれが俊敏な動きだったので、他の社員たちの注目を集めた。
⇒「それが」は不要ですね。代名詞はできるだけ減らすようにしてください。
国語の現代文の試験で、よく「この『それが』はなにを指しているのか答えなさい。」という問題を見ませんでしたか? それくらい代名詞って読み手がすんなり受け取れないことが多いのです。
なくてもよいところでは思い切って削ってみましょう。
「先輩! 明日、彼氏とデートに行くんですけど、どれ着ていくか決まらないんですよ。どっちが私に似合いますかね?」
⇒ここから先は時間が隔たっているので、この前に空行を「ひとつ」ではなく「ふたつ」入れてください。たったひとつの違いでも、読み手がストレスなく読めるので、時間が隔たったら「空行ふたつ」、場所が隔たったら「空行三つ」と憶えておきましょう。
アスカは仕事ができる人として社内では一躍有名だった。
⇒「一躍」は「一気に」「一挙に」に近い副詞なのでここでは不要です。
出社するたびにこう引っ張りだこだ。
⇒「こう」も要りませんね。付けるなら「なんでも」かな、と。
時計の針は正午を指していた。
そろそろ昼食の時間だ。
⇒昼食の時間は正式には何時何分からですか? という疑問があります。
普通正午から一時間が昼食タイムという会社が多いんですよ。
もし12時30分からなら「そろそろ昼食の時間だ。」ではなく「あと三十分で昼食の時間だ。」と書けば正確ですよね。もし正午から昼食タイムなら「そろそろ」を削って「時計の針は正午を指していた。/ 昼食の時間だ。」と書くだけでじゅうぶん伝わりますよ。
偶然、コンビニ内で同期の社員に出会った。
⇒ここも「係り受け」の長さの法則を使います。
「偶然」「コンビニ内で」「同期の社員に」がすべて「出会った。」にかかります。
長いものから順にですので六文字ずつですが、状況を書いた「コンビニ内で」を優先します。それで並び替えると、
⇒コンビニ内で同期の社員に偶然出会った。
になります。ただ、どこまでが偶然なのかを範囲指定したい場合は、たとえば「同期の社員と出会った」ことが「偶然」なら「コンビニ内で偶然、同期の社員に出会った。」のほうが的確になります。
同期というのは、彼らが同じ会社の他部署に配置されてるからだ。
⇒この文は不要ですね。基本的に「同期」は同じ年に入社・入学した人を指しますから。
ただし児童文学を想定しているのであれば、おそらく「同期」の意味を知らない可能性が高いので、ここは残してもかまいません。その場合は、
⇒同期というのは、同じ会社に同じ時期に入った人を指す。
のようにきっちり説明したほうがよいでしょう。
アスカが商品企画部に配属されてるのに対し、二人はマーケティング部に配属されている。同じビル内で働いていても、オフィスが違うので顔を合わすことはほとんどなかった。
⇒「配属」が一文で二回出てきます。これもひとつに集約しましょう。
たとえば
⇒アスカは商品企画部に、二人はマーケティング部に配属されている。
続く文も「同じ」「違う」と書くと野暮ったくなるので「違う」「同じ」の順にします。
⇒オフィスが違うので、同じビル内で働いていても顔を合わすことはほとんどなかった。
としたほうがよいですね。
篠木に関してはアスカの幼馴染みでもある。
⇒「に関して」は要りませんね。ここではアスカが中心で動いているので「アスカの」もなくて通ります。「篠木は幼馴染みでもある。」でじゅうぶん通じます。
田中さんはようやく気づいたみたいだ。
自身のズボンにトイレットペーパーが挟まっていたことに。先ほどコンビニのトイレを借りたみたいで、そこから紙がレールのように敷かれていた。
取り乱す彼の背後には、苦笑いのコンビニ店員が佇んでいた。
⇒「ようやく」は不要ですね。それまでにトイレットペーパーへ言及していたら「ようやく」は必要なのですが、言及していないので単に「田中さんは気づいたみたいだ。」だけで伝わります。
と添削しましたが、この笑いをとりにいく姿勢は評価できます。小説はシリアスな展開が多くなりがちなので、笑えるポイントを作っておくと、読み手も一息つけますからね。
田中さんは中途採用で会社に雇われた、齢40ほどのおじさんだ。
⇒「会社に」は不要です。すでに「同期」だと説明していますので。
ちょうどアスカたちの同期に当たる人物だ。
⇒この文も「同期」で説明しているので不要です。
アスカはオフィスに戻って食事を済ませてから、仕事に取り掛かる。
⇒この文は思い切って削除しましょう。塩むすびを2つ買っているのですから、当然それを食べるでしょうし、その後は当然仕事に取り掛かるはずですからね。
当たり前のことはなるべく省いたほうが、展開がさくさくと進んで読みやすくなります。
これにはヒバリは頷いて納得せざるをえない。
⇒「これには」か「ヒバリは」か、どちらかを立ててどちらかを省きましょう。
取り立てて「ヒバリは」と書かなくても、文の流れからヒバリとわかります。
また「これには」が示す内容は直前に書いてあります。
なのでどちらかを削れる文なのです。両方削るとなんのことだかわからなくなりますので、削るのは片方のみです。
「場合によっては魂が肉体を乗っ取った後に、衣から元いた魂を追い出すという荒行を出ることもあるだろう。そうなっていなければ良いのだが……」
⇒「荒行を出ることもある」はおかしいですよね。「荒行」は修行のことですから、使うなら「荒業」と書いて「あらわざ」と読みます。そして「出る」につなげるなら「荒業に出る」です。すると「場合によっては」「乗っ取った後に」「荒業に出る」の三つの「に」がある文になります。
しかし「場合によっては」の「に」は厳密には「〜による」という慣用句なのでこれは助詞「に」にはカウントしません。そして「肉体を乗っ取った後に」の「に」は無くても意味が通じます。ただ、重文と判断することもできるので、リズムや口調を整えたい場合は無理に削らなくてかまいません。
⇒「場合によっては魂が肉体を乗っ取った後(に)、衣から元いた魂を追い出すという荒業に出ることもあるだろう。
死肉みたいな異臭を放っている。
⇒この少年が「死肉の異臭」を嗅いだことがないのであれば、この表現は不適切です。
単に「何かが腐ったような異臭を放っている。」でよいでしょう。
牛乳吹いた雑巾? それを俺に一体どうするつもりで?」
⇒「牛乳拭いた雑巾?」ですね。
一歩、また一歩と歩み寄って来る男に怖じて、少年は後ずさりをする。
⇒「後ずさりをする。」と書くくらいなら「後ずさる。」と動詞にしたほうがわかりやすいですね。
酔っ払っているのか分からないが、今にミンチでもされるんじゃないかと。
⇒おそらく「今にもミンチにされるんじゃないかと。」かなと。
ちょっと油断を見せた隙に少年は一生の後悔をすることとなった。
⇒「油断」と「隙」は近しい言葉なので扱い方が面倒です。「ちょっと油断した隙に」とします。後半は「一生の後悔をすることとなった。」はこれが「人生最後の後悔」という意味ならまあわからなくもないのですが、おそらくは「大きな後悔をすることとなった。」をより大きく言い換えようとしたものと思われます。でもそれが「人生最後の後悔」というほどのものかどうか。もしそうでなく「できるかぎり大きな後悔」を表したいのなら「これまで味わったことのない後悔」くらいにしておきましょう。「一生の後悔」と書かれるよりは読み手も認識しやすいです。誰もが「一生の後悔」を経験していなくても「これまで味わったことのない後悔」は経験しているはずですからね。
よって、
⇒ちょっと油断した隙に、少年はこれまで味わったことのない後悔をすることとなった。
が適切だと思います。
「ボ、ボスこれって……」
⇒本来なら「ボ、ボス、これって……」か「ボ、ボス。これって……」なのですが、あえて区切らない方法もありますので、意図して書いているのであれば直さなくてかまいません。
突然、少年の視界にモヤがかかり出す。
⇒この文は「少年の心」に入り込んでいます。「三人称視点」が崩れて、小説では禁忌とされる「神の視点」となっているので、この文は省くか、外見からわかることのみ書くかしてください。たとえば「突然、少年の瞳は虚ろになった。」のように、外から見てわかる変化を書くのです。
男の突き出した手が少年の心臓のすぐ真下に突き刺さっていた。
⇒「すぐ」と「真」はほぼ同義です。「心臓のすぐ下に」か「心臓の真下に」でかまいません。
「すまない、」
⇒会話文は読点で終わらないようにしましょう。カギカッコ前の句読点は省くのが原則です。余韻を残したければ「すまない……」か「すまない――」にしましょう。
まるで体が急激な変化を迎えているようだった。
⇒比喩を使うのは評価できますが、ここでは使い方を間違えています。「まるで〜のような」は「〜」が比喩そのものを書き、その外に比喩されるものを書きます。
今回の場合では「まるでサナギが羽化して蝶になるように、体が急激な変化を迎えていた。」のように、「まるで〜のような」が比喩そのもので、その外に「体が急激な変化を迎えていた。」と比喩されるものを書くのが一般です。そして比喩は「比喩されるもの」を省けるので、その場合は「まるでサナギが羽化して蝶になるようだった。」とする方法もあります。
比喩は使い方を間違えなければ、表現力を底上げしてくれる便利な仕組みです。
失敗を恐れず、どんどん使っていきましょう。
男はそんな彼に残忍な殺し方をして、現場を去った。
⇒ここはかなり直しづらいですね。
まず「男は」はなくてもわかりますので省きます。
次に「そんな彼に残忍な殺し方をして」はちょっと意味がとれないので「そんな彼を残忍な手口で殺して」「そんな彼を残忍に殺して」ならわかりやすくなります。
すると「現場を去った。」で助詞「を」が出るので、助詞「を」が重複してしまいます。
ここは「現場から(立ち)去った。」にすると方向性も出ますのでよいと思います。
総合すると、
⇒そんな彼を残忍な手口で殺して、現場から(立ち)去った。
になります。「立ち去った」がベストだと思うのですが、もし異能があって飛んで去る可能性もなくはないかと思い、あえて「立ち去った」と断定はしませんでした。
もし「立ち去った」のであればそう書きましょう。
※本話は笑いをとりにいったり、比喩に挑んだりと、なかなかよい企みが見られます。こういう文章の遊びがあると、読み手もリラックスしたり情景を思い描きやすくなったりしますので、ぜひ積極的に取り入れてみてください。
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