部分的にも特定されづらい添削も必要です
それなのに、この警察の男は、さも重要だとでもいうようにうなずいている。
⇒これまで「頷く」と書いてありましたが、かな書きか漢字か統一しましょう。
一ノ瀬は手帳に何かを書き加えると、無意識に「そうですか」と、また繰り返した。
⇒ここは直前の描写で
> 名前、なんだっけ。
> 聞いたばかりの彼の名前が思い出せない。
とありましたので、ストレートに「一ノ瀬」ではなく「背の高い警察の男は」のようにぼかしたほうが陽菜子の心の声にはぴったりハマります。
自室に戻り、ベッドに倒れれば眠れると思ったが、頭が妙に冴えている。
玜介が刺された。
⇒ここは空行をひとつ入れて、読み手を惹きつけたほうがよいですね。
⇒
自室に戻り、ベッドに倒れれば眠れると思ったが、頭が妙に冴えている。
玜介が刺された。
⇒このほうが刺されたインパクトが出ますよね。
ベッドで反転しながら重く沈み込む身体を持て余した。固定電話が鳴った。
⇒ここも「固定電話が鳴った。」は改行して空行を入れたほうがよいですね。
⇒
ベッドで反転しながら重く沈み込む身体を持て余した。
固定電話が鳴った。
⇒ミステリーなので、空行を生かすとそのものが強調されて、読み手が憶えようとします。副次効果として「読み手がドキッと」します。唐突に起こったように見えるからです。
もちろん正解でないものにもこうやって伏線を仕込んでおいて、真相から遠ざける仕掛けも必要にはなります。
ただ、情報が少ない現時点では、ありとあらゆるものが伏線に見える、くらいのほうが読み手は食らいつきますよ。
「二時間前に病院から戻ったばかり」
⇒たしか午前四時に病院から帰ってきて、四時間半眠って起きたら八時半を過ぎていたはずではないでしょうか。
それともこの「二時間前」が伏線となりうるのか。
現時点では書き手のケアレスミスに見えますが、それを狙った仕掛けならまんまと引っかかったわけですよ(笑)。
風邪を引いて熱を出したときに言って欲しい言葉だ。
⇒このくらい短い文なら意味を取り違えることはないと思いますが、助詞「を」が気になるようでしたら
⇒風邪を引いて熱が出たときに言って欲しい言葉だ。
で解決します。
ただし、このあと何回も出てきますが、陽菜子の動揺を表したいのなら、あえて文法を外すのも妙手となります。
人間動揺しているときにまともな思考はできませんので。
とりとめもなく、でもわからなくはなっていない。
この塩梅が難しいですね。
髪を手でかき乱しながら、「ありがとう」と、受話器を置いた。
⇒続くこちらも助詞「を」が重複しますが、係り受けが明確なので、それほど気にしなくてもよいでしょう。
陽菜子はキッチンに行き、コーヒー豆を選び豆を挽いた。
⇒ここは助詞「を」が近くかつ「豆を」が重複しているので解決したほうがよいですね。
解決法は「選んだコーヒー豆を挽いた。」と動作に主眼を置くとよいでしょう。
ただ、陽菜子の動揺を表したいのなら、心情描写としてこのくらいとっちらかったほうが「らしく」見えます。
文法で正しくいくか、でも三人称一元視点だから陽菜子の心の声として読んだときに自然に映るか。その塩梅ですね。動揺を出したいなら原文ママで。
ちなみにコーヒーミルに入れて手動で挽いたのか、ミルサーに入れて自動で挽いたのかがわからないので、そこをちょっと付け加えてみてください。
もうひとつ。すでに焙煎されているコーヒー豆ですよね? あえて書く必要はないのですが、コーヒーに疎い方は「なぜ?」となりかねません。で、ここでコーヒーのうんちくを語るとリアリティーは出ますが、それが謎とどう関係するのかも問われます。このコーヒーを挽く行為に、なにがしかの暗喩が込められているのかを読み手は考えてしまうからです。
だからコーヒーのうんちくを語るのでなければ、単にコーヒーミルで挽いたのか、ミルサーで挽いたのか、くらいの情報でじゅうぶんですね。
コーヒー豆を挽き終わり、サイフォンに入れ、固定電話ではなく、スマホをスピーカーにした。
⇒本来は「挽き終わったコーヒー豆をサイフォンに入れ、」だと思うのですが、「この小説は三人称一元視点」だし、陽菜子の心情を余さず文章に起こしたら、とりとめのないものになった。となりますので、かえってリアリティーが出ていますね。
なのでここは原文ママで。
コーヒーカップが床に落ち、綺麗な茶色い模様を床に広げた。
⇒最後のこの惹き、いいですね。
不穏さも感じられますし、どうしようもない心情もうまく描けています。
第三話の主役はコーヒーではないか。
くらいに引き立っています。前回の自動販売機の缶コーヒーと相まって、小道具が効果的でうまく役に立っています。
前回からコーヒーを引き継いでいるので、つながりも感じられます。
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