小説賞向けの作品なのでどの作品かわからないように

「お辛いところを申し訳ありませんが、警察の方がお話したいようで、あちらで待っています」

⇒私もあまり完璧な敬語は話せないのですが、この距離感なら、

「お辛いところを申し訳ありませんが、警察の方がお話ししたいようで、あちらでお待ちです」かなと。

 私の最大限だと、

「お辛いところを申し訳ございませんが、警察の方がお話を伺いたいそうで、あちらでお待ちいただいております」

 ですね。

 どのくらいの敬語が適切かは人それぞれで、とくにキャラクターによってつねにどの程度の敬語を使うのかは読み手にはわかりませんよね。

 それを会話文ひとつでキャラクター付けしなければならないので、敬語は難しいのです。



 三人の男達がいた。

⇒三人いれば「達」は当たり前なので「三人の男がいた。」でかまいません。

 人数や性別がわからなければ「三人いた。」ですよね。

 性別がわかれば「「三人の男」がいた。」わけですから「達」は要りません。

 男だけど人数がわからないのであれば「背広と制服を着た男達がいた。」になります。



この事実を知れば、母が興奮して泣くだろうと思うと憂鬱になった。

⇒「興奮して」より「感情が高ぶって」のほうが適切ですね。

 「興奮」の語はスポーツ観戦のように良い意味で使われることが多いので、「あまりに嬉しくて泣いた」ように感じられます。



「少しお話を伺いたいのですが、こちらに来ていただいても」

⇒最初に「ちょっとお話をお伺いしたいのですが。〜」で始まっているので、若干冗長なセリフに見えます。

「折り入った話になりますので、こちらに来ていただいても」

「改めてお話を伺いたいので、こちらに来ていただいても」

 あたりが的確だと思いますが、この刑事の口調はアメ様のお心ひとつなので、キャラクターにふさわしい敬語になるよう調整してください。



 年配の男はそういうと病院の待合室に案内した。

⇒「待合室へ」ですね。

 助詞「に」は動作の到達点を指します。助詞「へ」は動作の方向を指します。

 行き先が知っていれば助詞「に」でもよいのですが、勝手知らぬ病院なので「方向」を書いたほうが妥当です。



 一ノ瀬は辛抱強く答えを待っていた。

⇒「辛抱強く」は一ノ瀬の心の中です。

「一ノ瀬はただ答えを待っていた」「一ノ瀬は黙って答えを待っていた」のように陽菜子から見える範囲で書きましょう。



 一ノ瀬は次の言葉を期待して黙り、それから要約するように言った。

⇒ここで「黙り」と書いてあるので、上記は「ただ」のほうが的確でしょう。



 彼は頷くと自動販売機まで行った。

⇒待合室から自動販売機が見えているならこれでよいのですが、見えないのなら「自動販売機まで行った。」ではなく「待合室を出ていった。」が陽菜子の視点からは正しいですね。





※第二話は敬語の扱い方に課題がありました。

 キャラクターをセリフだけで印象付けられるので、敬語はただ正しければよいというものでもありません。

 あえて間違った敬語にすることで、キャラクターが立つことが多いのです。

 私もそうですが、完璧な敬語を話す人のほうが限られていますので、敬語の使い方でキャラクター分けできるように、登場人物によって使い分けてみてください。



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