奴隷を愛した皇女は、腕のなかで愛に溺れる


第三話



 絶対に太刀打ちできない完璧な母を、はじめて別の目で見ることとができた。

⇒「見ることができた。」ですね。


肖像画の指が虫を挟さんで近づいてくる。

⇒「虫を挟んで」ですね。


 リーラ城にきて、そのルーティンが多少は崩れたが、それでも、一定の時間に起きて、分刻みですべきことが決まっているのは前と同じだ。

⇒「リーラ城にきて、そのルーティンが多少は崩れた。それでも、」

 ここは逆接の接続助詞「が」を使わなくても、前後の文の関係は明白なので接続助詞を省いて独立させます。こうすると一文に格助詞「が」の重複も回避できますので。


アニータの話が私を縛り付けて来たくびきを消したのかもしれない。

⇒助詞「を」の重複ですね。

 ここは、

「アニータの話で私を縛り付けて来たくびきが消したのかもしれない。」

 とすればすんなり読めますね。



 この一話だと「アニータにウェディングドレス姿を見せる」エピソードへのリクエストがくるかもしれませんね。

 それはマリーナとヴィトセルクの後日譚で叶うはずなので、読み手が待っていてくれるとよいのですが。



 ちなみにラストシーンに付け加え、とのことですね。

 おそらくは原文のほうがインパクトはあると思います。

 原文は着陸強行で、ここに書かれているのが軟着陸です。

 感情を直撃するのが原文で、物語をフェードアウトさせようとするのが軟着陸。

 読後のキレを求めるなら原文かなと思います。

 恋愛ものだと、あまり説明しすぎると醒めてしまいかねないので。




【講評】

【文章】

 公募の選考さんは漢字の変換ミスはスルーしますが、助詞の混同や比喩表現が妥当かあたりを厳しくチェックしてきます。

 アメ様の文章には、ある程度クセがあります。地の文で必要もないところに「私」が書いてあったり、表現の畳みかけ方であったり。

 これは独自の表現力、「アメ・ワールド」とも呼べる域にあります。

 添削で少し矯正されて、一次選考を通過したら、文章力はだいじょうぶでしょう。



【構成】

 構成ですが、若干性急だった部分もありました。

 文字数と話数からアドリブで進路を決めているので、まったりした時間が長かったり、重要な部分がビュンビュンすっ飛んでいったり。

 今回は結末だけは決めてあったので、そこへ向けての字数合わせとなりました。

 受け身だった皇女としての主人公マリーナが、突如として活動的になり恋を追い求めるようになる。

 ユーセイも、奴隷から解放されたとしても、それまでのツライ記憶まで吹っ切れてしまうものなのか。

 ある程度ふたりの心境の変化を描くと、読み手に納得感が生まれやすい。



【物語】

 恋愛小説はあまり読んでいないのですが、第三部第一章までは「甘々な恋愛もの」ですね。第三部最終章は「シリアス」な展開へとシフトし、結果生き別れとなる。

 まぁ「どんなに離れても心はひとつ」というのもパターンとしてはあるようですね。

 公募でどの程度「甘々な恋愛もの」を求める層にシリアス展開が読まれるか。

 勝ち抜きたいと思ったら、「甘々」だけより波乱に満ちたほうがウケがよいはず。



【課題】

 あとはレヴァルが唐突にならないよう、『炎の巫女』が異世界からこちらにくる逸話にレヴァルのことも書いておきましょう。

 直接「レヴァルには人を異世界へ送る力がある。」と書けばただのご都合主義です。

 理想はヴィトセルクからレヴァルの役割をきちんと聞いて、「レヴァルなら異世界人を返せるだろう。『炎の巫女』の件もあるしな」と匂わせて、実際レヴァルがふたりの家にやってきたら『炎の巫女』をなぜ異世界からこちらに転移させなければならなかったのか、を語らせる。

 前作を読んだ前提で書かれると、読み手は「面倒くさいから読まなくていいや」になりやすいので注意してくださいね。

 公募も、応募原稿だけで勝負するべきです。

 「他の物語で詳しく説明しているので」は公募の選考さんには通じませんよ。

 他のキャラクターについてはそれなりに書けているので、レヴァルをなんとかしましょう。おそらく『炎の巫女』とはから軽く説明することになるでしょう。



【総合評価】

 夏井先生の査定は!——一歩前進! 十段階で「九」です。

 文章もあまり致命的な点はありませんでしたし、物語も緩急がやや不安定でしたが、連載小説としてはそれなりに書けています。

 構成も恋愛小説としての大筋はこんなものでしょう。

 公募で戦うには足りなかった「一」をどう補っていくかです。

 できれば前作を読まなくても人となりや役割などをきちんと本作だけで完結できるように気を配っていただけたら「十」に届いたはずです。

 それ以外は全体的によく書けていましたよ。



 これにて査定——ではなかった、講評を終えますね。

 ここまで推敲お疲れさまです。

 宿題を出していますので、それが応募締め切りまで間に合うかですね。

 あとわずかな時間ですが、できるだけ私も集中して取りかかりましたので、締切までには5日くらいの余裕はありますよね。

 ラストスパートで頭のイメージを書き込んでいってくださいませ。

 それで頑張って直してくださいね。



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