第3話 初恋の相手は愛を知らない

 今回は意図的に指摘箇所を絞りました。

 第1話・第2話で指摘してあるものは、基本的に指摘しないようにしています。

 そのほうが添削が進むからです。

 それに「一を聞いて十を知る」でなければ、将来「読まれる作品」は書けません。

 では、今回の添削です。




 フィーネは手紙を持って、アルド、エイミ、ララの元にやってくるとその手紙の内容をみんなに見せた。そこに書いてあったことを読んだみんなは、言った。

⇒アルド、フィーネ、エイミ、ララが一行の「みんな」ですよね。であれば人物名や「みんな」をこれだけ出すと重複しています。

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 みんなの元に戻ると、フィーネは手にした手紙を見せた。そこに書いてあったことを受けて言った。



ララの鍵はすると突然輝きだした。アルド達一行は考える間もなく、現代へ飛ばされた。その時代のバルオギー村の草原にアルド達一行は飛ばされてきた。

⇒これまで書いていますが、「達」と「一行」は複数を指す言葉なのでどちらかだけでお願いします。「アルド達」か「アルド一行」かです。



 アルドとエイミの警戒心はMAXだった。フィーネは逆に困っていた。

(動物さんたちはラスクのこと警戒していないし、ラスクは悪い人には見えない。だけど、お兄ちゃんとエイミは、怪しく思っているみたい。私がこのことをどうやってお兄ちゃんたちに今、伝えればいいのかな?)

⇒ここを読むと「フィーネの心の中を読める」ので、この話数の主人公はフィーネかなと思いますよね。



 アルドも言った。

 そして、アルドは聞いた。

⇒ここは「アルド」「アルド」と続きます。ここでの「言った」「聞いた」はともに同じ動作なので冗長ですね。



 次の瞬間放たれた一言に、みんなは絶望を感じることになる。ラスクは冷静に言った。


「僕が消えることだよ」

 フィーネが聞いた!

⇒先にネタバレしてしまうと興を削ぎますし、そこに感情が伴うとなおさらです。

 肝心のラスクが冷静なのですから、ここは淡々と答えさせるだけでよいですね。

 そして「!」を付けるとちょっと間抜けな印象を受けます。句点でできるのに感嘆符でゲームのような「○○できた!」表現が適切でしょうか。



 そういうと、ラスクは突然アルドに襲い掛かって来た!鋭いヴァンパイアの爪で、切り裂くように攻撃してくる!そして、突然始まった悲しい戦いの中で、ララは叫んだ!

⇒ここも「悲しい戦い」とネタバレしてしまっています。

 先に感情や結果を書いてしまう、読み手はそれ以上読まなくてもよくなってしまうのです。それではいいねも評価も付きませんよ。



 みんなはそう叫んだ!しかし、ラスクの心は本気の本気すぎて、みんなの言葉はなかなかラスクに届かない、それでもララ一人だけが、答えを知っていた。

(ラスクは私のためなら。自分が消滅することで、私を助けたいと願ってしまっている。そして、その優しさは、本当の私への忠誠と愛から来ている。)

⇒今回は句読点の間違いを直さないと思っていましたが、ちょっと直してみます。

 また「ララの心の中」が読めているので、この話数でフィーネとララの心の中が読める、つまり禁じられている「神の視点」になっています。

 心の中を読ませず、いかにしてララの気持ちを表現するか、に注力してください。

————————

 みんなはそう叫んだ。しかし、ラスクは本気で、みんなの言葉はなかなか届かない。それでもララ一人だけが、答えを知っていた。



 一方で、地面に倒れこんだララとラスクはこんなことを話していた。

 ララは泣きながら。傷だらけのラスクの頬に手を添え、そして言った。

 すると、ボロボロのラスクはゆっくり近寄ってきて、ララの手を取った。

⇒ここをそのまま解釈するなら、ラスクは地面に倒れ込んでいて、ララは倒れているラスクの頬に手を添えていますよね。なのになぜかラスクがララに近寄っているのです。

 矛盾していますよね。ラスクは倒れているはずなのですから。

 ラスクはいつ立ち上がったのか、ひざまずいてかもしれませんが、少なくとも「近寄れる」だけの体勢ではいるはずです。



しかし、それは新しい悲しみの始まりだった。

そのことを、今だけはみんな知らなかった。

⇒ここも前フリしてしまっていますね。こういう前フリなしで面白くできなければ、小説で書く意味がないのです。

 読み手は書かれているものを読んで感情を動かされるのであり、「新しい悲しみの始まりだった。」と書かれていて「ここから先はさらに悲しいんだな」なんて考えて読んでいる方は誰ひとりとしていません。

 文章を読んで、結果として「悲しい物語だ」と感情を覚えるのが、正しい小説のあり方ですよ。




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 今回の添削はこのくらいです。


 句読点の間違いやこれまで指摘した来た語彙・類語の問題はあえてスルーしました。

 一度聞いて、その指摘を最後まで持ち続けるのも添削のひとつですよ。

 同じ添削を何度も繰り返すのは、本来添削とは言いませんので。通常は単にボツにするだけです。


 私は原作を知らないため、この「ララとラスク」が原作キャラクターかは知りません。

 もしオリジナルキャラクターであれば、もっと動かしようがあるはずです。

 あと、ここまで読んできて「舞台」がよくわかりません。どの時代だとしても、そこはフィールドであり「舞台」なのです。どこになにがあってとかどんな建物があってとか。そういう説明をいっさい見ませんでした。

 原作にあるのなら省けると解釈しがちですが、原作にあるからこそきちんと説明しなければ読み手には伝わらないのです。

 その点を考慮してリライトしてみてくださいませ。




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