第4話 平均寿命15歳の時代に生き延びる
相場を見ながら第4話を添削しました。
七割の税金については確かに当時だと適当ですね。豊臣秀吉が太閤検地を行なって田畑の広さを確定させて、そこから同率の税金を徴収する仕組みができるまでは、豪族それぞれが領民から好きなだけ巻き上げていましたからね。
話が逸れました。今回の添削は以下のとおりです。
私は横目でオババを伺った。
⇒前回やりましたね。「窺った」です。常用漢字ではないのでひらがなで「うかがった」でもかまいません。
しかし、今、満月の明かりに照らされるその顔は青ざめている。
⇒「満月」は明るいものですし、「照らされる」だけの明るさを持っています。
ですので「の明かり」は不要ですね。なくても意味は通じます。「満月に照らされる」だけで月光が浮かびますよね。
オババは無心にカマドに薪を入れ、雑炊をかき混ぜながらラップしていた。
⇒ここはふたつの助詞が重複しているように映ります。
まず「無心にカマドに」の助詞「に」ですが、「無心に」は形容動詞の連用形なので助詞「に」ではありません。つまりこちらは重複していません。
「薪を入れ、雑炊をかき混ぜながら」の助詞「を」は重複しています。
しかし「あるルール」によって許容される書き方でもあるのです。
「あるルール」とは以前ちらっと触れましたが「並列」するときは助詞を重複してもかまいません。
ここでは「薪を入れ」「雑炊をかき混ぜながら」と動作を重文で「並列」されてあるため、ここは「重複なし」と捉えられます。
ちょっと気になるのが「薪を入れ、」ですね。薪は通常「くべる」ものなので、「薪をくべ、」がより適切な表現です。ただし想定する読み手に小学生が含まれるなら「くべる」はわからないと思うので「入れる」でかまいません。
⇒これは添削ではなく感想なのですが。「雑炊をかき混ぜながらラップしていた」で、サランラップをなにかにかけていっている光景が思い浮かびました。そうともとれますよね。
戦国時代の貧しい壊れかけの掘っ立て小屋で粗末な雑炊を作りながらのラップミュージック。
⇒お馴染み「掘っ建て小屋」です。
それから私たちは思う限りの彼女たちに起きる悪い事を予想した。それは一種のゲームのようで、夢中になって戦国時代の人間が未来に飛んだ時の心理状態を言い合った。あまりに夢中になり、しばらく、自分たちの状況を忘れることができた。
⇒ここはなんてことはないのですが、三文すべて「〜た。」で終わります。文章の型が同じで三連続なので、読む人によっては至らなさと判断するかもしれません。
ただし、これもよく言っていますが「勢い」やリズムを作るために、「あえて」三文「〜た。」で終わる方法もあります。
「小説賞・新人賞」では減点を食らうかもしれませんが、応募作でなければ「勢い」やリズム重視でそうしてもかまいません。もし崩すなら「心理状態を言い合う。」と現在形にすればよいでしょう。
それから…
⇒これは多くの書き手が間違えて憶えているのですが、三点リーダー(…)は二個セットで用います。伸ばす場合も二の倍数で使うのです。三個や五個、また一個で用いるのは原稿用紙の使い方として減点対象です。「小説賞・新人賞」応募作なら、三点リーダーは「二個セット」にしてください。できれば、どんなに長い間を表したくても「二個だけ」で表記しましょう。「……」自体がひとつの記号なのです。これはダッシュ(──)も同様です。
また三点リーダーもダッシュも文を閉じる記号ではないので、それで終わるときは句点を付してください。ですので以下が正しい表記になります。
⇒それから……。
わたしたちは再び深く深く沈黙した。
⇒「私」と表記しているので、ここでひらがな表記すると「意図的に分けて書いているの?」という疑問が湧いてきます。ここは「私たち」とするべきでしょう。
「文明社会じゃ」
「危険が多い」
「戦国時代で生き延びるのと、文明社会では、どっちが生存の可能性が高いんでしょうか」
「われらのほうは知識があるが、しかし、こっちの世界は飢え死にするのが普通のサバイバル時代、生活保護制度もないし、ここで生き延びるのも、そうとうハードそうだ」
⇒どちらがどのセリフを口にしているのか。混乱していますね。
まずアメ「文明社会じゃ」、オババ「危険が多い」、アメ「戦国時代で……」、オババ「われらのほうは……」だと、前半は口調が違っています。後半は合っていますよね。逆にすると前半は合うのに後半が違ってくるのです。おそらくオババのセリフが「危険が多い」と「戦国時代で……」の間からひとつ消えているのではありませんか。もし最初からこのセリフしか話していないようなら、アメのセリフを二回出しているので混乱するんですよね。その場合は「危険が多い。戦国時代で……」とひとつのカギカッコに収めるようにしてください。
戦場で真っ先に突進して行く。
⇒補助動詞なので「突進していく(ゆく)」ですね。
カエルの声がかしましいうえに、耳もとでは虫が飛ぶ音がする。
⇒ここは女性の話し声がうるさい「かしましい」よりも音が騒がしい意の「やかましい」「かまびすしい」のほうが合っていますね。
オババが我慢しているのだから、ここで泣くには嫁としての矜持が。
⇒「ここで泣くのは」「ここで泣いては」だと思います。
会話文のやりとりで同じ人が二回連続でしゃべると受け答えがちぐはぐになるので、可能なかぎり往復させるか、同じ人が二回しゃべるときは地の文を入れて調整してくださいね。
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