侵略者

「キャーー!」


歓声とも悲鳴ともとられる女性たちの声が広場を埋め尽くす。中には感激のあまり卒倒する女性までいた。


現れたのはどの角度から見ても美少年と言えるような少年だ。彼は彗星の如くデビューしたモデルだった。

無垢な光を宿した目が三日月をかたどる。口元に浮かぶのははにかむような笑み。深々とお辞儀をして歓声に答えていた。


「皆さんアリガトウ」

耳が喜ぶような美しいテナーの声。どこかイントネーションの不思議な言葉も彼の人気の一つだ。


最前列で見ていた女性たちがまたパタリパタリと倒れるが、周りは誰もそれを気にもとめない。

せめて見たい。あわよくば目が合えば! とイベント会場に集まる女性たちの必死さは、男性スタッフから見れば気味悪くさえ映りそうだが、そんな彼らもどこかぼんやりとした目で少年を見ている。

確かに非の打ち所がない少年だが、これ程までに少年に惹かれるのは何故なのだろう。


数分のトークショーを終えて少年が去ったら後も、女性たちはまだ心ここにあらずな目で少年のいた辺りを見ていた。





その話題の少年はワンルームの部屋に帰ると、ふぅとため息をついた。その姿を見た者がいたなら、ギョッとしただろう。

美しい少年の面影はどこにもなく、ただのぺっとした凹凸のない顔に大きな目のような物が光っていた。

彼は窓からベランダに出て、目のようなものから光線を出す。すると上空に不自然に光る物体が現れた。

「本日の感染者、約200人。明日はオオサカでイベント」

上空の物体に通信を行う。

「了解。実験は成功している模様。

我々の発明したウイルスは、感染者が最も好みの姿に見えるようにし、敵意を失くすよう作られている。

いづれは地球人の中からサンプルを選び、我らが遺伝子を残せるかの実験もすることになるだろう」

「了解。心してかかる」

「我々の最終目的は地球を我々の星にすることだ。抜かりないように」

「了解」




貴方の隣に物凄い美男子、美少女はいませんか? もしかしたら貴方、感染してしまってるかもしれませんよ?


                        了

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