第8話:鎬を削る
古代兵器が落ちそうになったあの日、私は空を見ていた。村には魔力を流せば結界の上ギリギリまで伸びる仕掛けがある。その頂上から、憧れの王都がある方角を眺めるのが日課だった。
あの時、一体何が起きていたのか。当時の私は分からなかったが、空を貫いた光だけはハッキリと覚えている。雲をも切り裂く一筋の閃光と、軌跡に消えていく残光はあまりにも美しかった。
常識では考えられないぐらいの高魔力を、一発の弾に詰め込まなければああはなるまい。私はすぐに分かった。どうやっても私とウィルガルディには出来なかった、高々密度の魔導弾の完成形だったから。
興奮で全身が痺れたのは、直後に起きた大爆発の余波のせいじゃないだろう。天機神様はなんて意地悪なんだろうって思った。行き詰まっていた所にあんなのを見せるなんて。
知りたいと思った。この目で見たい。私の夢を叶えるために、村を出て王都に。
すぐにお祖母ちゃんに相談した。きっと快く見送ってくれるだろうって。
そんな私の頬を、お祖母ちゃんは打った。見たこともない悲しそうな顔で、言った。『アンタも人殺しがしたいのかい』って。そう言われた時、違うと叫んだ。
誰のことを言っているのかは分かる、帝国で死んだ父さんと母さんのことだ。でも、違う。あの二人はそれが目的で森を出たんじゃない、自分の力で、自分のやり方で苦しんでいる人を助けたいから帝国に旅立ったんだ。
母さんの祖国を守りたいという父さんに嘘はなかった。
父さんの想いに感謝をしていた母さんの表情は、喜びに満ちていた。
なのに、どうして。
喧嘩になって、最後には追い出されるような形で家を出た。その足で城下町がある王都で、軍に志願した。二つ名持ちのウォリアがあるということで、事前の細かい部分は省略されたらしい。
(運が良かった――なんて思ってたけど、一筋縄ではいかないみたい)
なんていうか、癖者だらけだった。特に仮面を付けた隊長は変人の極みだ。相当なサディストだという私の予想は間違っていないはず。
でも、今はどうでもいい。
猫かぶりが見破られた、それはどうでもいい。
簡単に教えられない内容だ、確かに言われる通りだ。
だけど、私と“翠嶺”を、ウィルを見くびったことだけは。
『――アリスさん』
『分かってる。アンタのいうように、アイツに吠え面をかかせてやろうじゃないか』
言葉遣いを取り繕うのも止めだ。田舎者らしく荒っぽく行こうじゃないの。
ルーシェイナの“真紅”も同意してる。セレクターの意志を汲み取って、猛る魔力が輝いているかのよう。
……格好いい機体だなぁ。目が覚めるような深い紅は燃えるようで、すらりとした手足の装甲は実戦的だった。頭部はスタンダードだけど三眼のモノアイとのバランスが絶妙だ。両肩のあれは、増幅器だろうか。起動から循環を終わらせるのも速い。何度も繰り返したことが分かる、そりゃあ怒るわよね。
――いや、それだけじゃない?
ルーシェイナも気づいたようだけど、動きが違う。同調後なのに、感覚が……?
(確かに死ぬかと思うぐらいにキツかったけど、たった一日なのよ?)
素人じゃない、魔物の討伐にだって何度も参加した。訓練を受けながらもそう簡単に成長するわけないじゃないと思っていたけど―――考えを改めるべきね。
『おーい、準備できたかー』
「ええ。降参するなら早く言いなさ……どこ見てるのよ」
黒のニギリスだったっけ。その機体が見る先には、別の部隊の者であろうセレクターが居た。
『ああ、客だ。この機体を借りた時に、興味があるから見たいって言われてな』
模擬戦に興味があるらしい。随分と余裕そうだけど、もう切れたわ。
移動し、互いに離れた状態になると試合開始の号令が鳴った。
(小細工は要らない、最初から全力で!)
魔力を練り上げながら、
慌てて移動し始めたけど、遅い!
秒間4発を10秒間だから、40発。着弾した地面がめくれ上がり、土煙になって宙に舞い上がった。
――これでお終いでしょ。
煙のせいで見えないけど、回避できたとは思わない。コックピットに直撃すれば流石にアレだけど、足元しか狙ってないから大丈夫。そう思い、銃を降ろした私は胸を押されて吹き飛んだ。
驚く暇もなく、後ろ向きに倒れてしまう。
今のは―――魔導砲?
「まさか……!」
『いきなりやるじゃねーか』
通信。声、あいつの。そうして煙が晴れた先には、健在である黒色の機体が見えた。
嘘、あれを全部回避したっていうの?!
避け難いように弾は散らしたし、狙いは間違ってない、その証拠に足元には弾が突き刺さった跡があるのに!
そんな、どうやって―――
『次は僕がいく!』
長剣を片手に、真正面から。にわかには信じられないけど、神業のような回避をしたレオの元へ。
(土煙に隠れる前に一瞬だけ見えたけど、アレは――)
普通ではない動きは、ゴーギン騎士と戦った時とは異なる、違和感があったような。
撃ち合いをしてもいいけど、見極めるためにここは近接戦で。
『思い切りがいいな!』
「小細工なんて、させない!」
マナジェットの推力のままに、横薙ぎに一閃。
手応えは、ある。だけどそれはニギリスの長剣によるもの、だから。
「出力ならっ!」
押し切る。全能力はこっちが上、余計なことはしないしさせない。
レオが乗るニギリスはひとたまりもなく押され、後退していく。地面をスレスレの高度で、相手もこっちも少しだけ浮いている。
手応えが減った、布を押しているような感覚。
しまった、これは敢えて退いて―――横に!?
「くっ!」
『ちっ!』
間一髪、回避に成功――いや、余裕があった。やはりこっちの反応速度の方が上だ。
それに、悔しいけど訓練の成果があったみたい。ほんの少しだけど、ウォリアの手足を動かす時のぎこちなさが取れている。
だけど、ここで退く理由にはならない。手加減も無用といった、ならばそうするまで!
ルージェイドも同じ気持ちなんだろう、僕の戦意に応えてくれている。分かる、いつもより魔力の通りが良い。
『――援護する!』
アリスさんの“翠嶺”も同じらしい、さっきよりも速い。
だけど、相手はレオだ。前世の話が本当なら、性能差があろうと侮れない。
革命というものは、権力を根底からひっくり返すもの。絶対的不利から勝利をもぎ取った、その強引な手段は日常の言動にも現れてる。それは、不利の差を跳ね除ける手段がいくらでもあるという証拠ではないか。
(つまり、相手の得意分野。引っ張り込まれた、だけど―――!)
アリスさんの砲撃がレオに襲いかかる。先程よりも威力は大きく、弾速は遅い。
だが、着弾の余波の衝撃は段違いだ。
それを見込み、ニギリスは大きい動作で弾を悠々と避けていく。
(って、ちょっと待って。なんでそんなに回避ができるの)
驚き、開いた口が塞がらない。
ニギリスの動作は遅い、僕たちにはとても及ばないし、先程より遅いとはいえ弾速とは比べ物にならない。
なのに、どういった訳か当たらない。違う、弾が追いついていない……?
(外れてる。違う、これは撃たされてる?)
左右の不規則な動きをするニギリスへ、狙いが定められていない。
そして、試してみて理解した。照準を絞りながら魔導砲を放っていく。移動する先を予測し、速度も考慮した偏差射撃を。
だけど、当たらない。当たりそうになった時に、それが分かっているかのように予測から大きく外れた動きをされている。
1分、続けたけど間違いない。射撃の癖を読まれている……そんな、分かっていたとしてもできることなの!?
それに、僕はともかくとしてアリスさんが戦う所なんて今日が初めてじゃないか!
レオを侮っていた訳じゃない、馬鹿にしてはいなかったけど、これは―――
『――降参か?』
「っ、誰が!」
弱音を読まれた。そこまで気づくのか、嫌な所で勘が鋭い。
でも、諦めるなんてあり得ない。ニギリス如きに退くなんて冗談じゃない。
……このまま遠距離で撃ち続けるのも手だろうが、そんな勝ち方はゴメンだ――なら!
「――僕がレオの動きを止める! アリスさんは大きいのをお願い!」
“翠嶺”の固有技能はまだ聞いていないけど、推測はできる。
あの杖型の武器と大魔法を、と望んだことから恐らくはウォリアでの簡易魔法行使を可能とするギミックが編み込まれているんだ。推測と作戦を伝えると、予想通り。同じことを考えていたらしく、アリスさんは手に持った杖を一回転させて答えてくれた。
『二人掛かりで、って所が最高に情けないけど』
「負ける方が嫌だよね、お互いに」
効率を優先するレオのことだ、本当に使えないと判断したら全てを置いていく。それは嫌だ。訓練学校に居た頃と同じ、自分さえ信じられない自分に戻ってしまう。
――“自分にさえ裏切られたら誰が自分を”、と。
閉じていた僕の世界を壊してくれた言葉はまだ覚えている、だから!
「追いつくから――覚悟しなよ、レオ!」
告げならば僕は、
ルージェイドの能力は実にシンプルだ。遠近どんな状況にも対応できる万能型。だが、同格の相手には器用貧乏になりやすい。それを覆すための手は1つ、
真紅の機体の
(今もヒヤヒヤだってのに、ってやばっ、くっ、へあっ!)
当たれば死にかねない砲弾が、すぐ近くで炸裂した。ヒリヒリと感じるは忍び寄る死の気配。目を閉じれば、その死神の手ぐらいは見えそうだ。
それほどまでに、この五体は死を感じている。感覚が鋭くなった、いや、“鋭くした”からこその芸当だ。
でも、性能差はほんとマズイ。余裕に見せているが、実質は紙一重だ。
今の俺の顔は誰にも見せられないぐらいに酷いものになっているだろう。
最初のルーの一撃だって、上手く受け流さなければ思いっきり後転した上で地面に後頭部から激突していた。
俺を倒してやろうという気持ちのまま迫ってくる二人の感情がチリチリとうなじを焦がしてくる。
――だから当たらない。技量は決して低くない、むしろ帝国の正規兵ぐらいはある。それでも回避できてるのは、いや危っ、のはどこかで遠慮しているからだった。
殺さないように、どこかでセーブしている。
その遠慮が一部だけど消えたようだ。
正面の真紅の機体の両肩に魔法陣が浮かんだ。
以前に一度だけ見たことがある美しい山吹色の光で描かれたそれは、ルージェイドが本気を出したことを示すもの。
ぎろり、と真紅のモノアイが俺を捉えた。
このまま待っていれば、突撃されて一撃、それで終わり。
流石に衝撃を流すこともできないため、ニギリスは大破することだろう。
―――だから、俺は前に出た。
すれ違う真紅。
ルーの驚愕の声さえも無視して、俺はあの日と同じ“身魔法”の精度を高めた。
「なっ……!?」
剣を振ろうとした先に、黒の機体は居らず。
思わず溢れた声。消えた、違う、横にすれ違う感覚がする。
強化した機体で近接まで一気に踏み込み剣戟に誘って押さえつける。
僕の狙いだけでなく、踏み込みのタイミングさえ読まれた。
(それに、速度が上がって視野が狭くなったから……!)
加速している途中で気づけなかった。
即座に反転しようとしたけど、速度が乗っているため時間がかかる、距離が離れる、届かない……!
正面から、完全に出し抜かれた。でも、ニギリスの魔導砲なら10発は直撃させないと“翠嶺”の装甲は抜けない筈。
そう思っていた僕の前で、レオはゆっくりと狙いを定めた。
(ハメられた……でもまだ!)
杖型銃を背負った状態で手をかざし、これにて準備は完了した。
“翠嶺”の
指に詰めている媒介を元に、足を経由して機体を覆い尽くせるほどの広さで魔法陣を広げる。威力を重視するならもっと時間がかかるけど、動きを大いに乱すだけなら数秒で発動は可能……!
選択するは風、ニギリスの周囲に檻のように吹かせて動きを封じる。
“真紅”ならその風でも突破できる。そして、間合いは十分だ。
(――魔導砲を構えた。無駄よ、数発程度なら通じない)
生身の時ほどじゃないけど、魔力による機体強化も可能。だから、出力が低いニギリス程度の魔導砲であれば、同じ所に50発でも受けない限りは問題ない。
詰めるべく、私は詠唱を始めた。
「――“荒野に吹き荒ぶは風の御子、青たる羽根よ踊り狂え”」
静かに、間違えることなく。余波で、魔法陣の周囲に風が漏れていく。
あとは最後の一言で完成する。
ニギリスが魔導砲を構えた、けれど遅いね、このまま―――いや。
(何かを見落としている)
違和感がある。“真紅”をすり抜けた、つまり読んでいた。
ならこの展開も折込済みだということ。
レオンは、こうなることを理解している上で向かってきている?
だが、特別な武器も無いのに何を―――いや、ちょっと待って。
魔法陣越しに、ニギリスを見る。そうだ、ニギリスだ、黒のウォリア、その筈なのにさっきまでとは明らかに違い過ぎる。
着地し、構え、狙っている仕草。それは気味が悪いほどに人間染みていて。
(――“
俺には操縦の才能が無い。多少はあるが、頂点にはたどり着けない。
ガリオには言われ続けた。それもそうだ、操縦の腕は突き詰めれば自身の白兵技能や射撃技能に依存する。天賦の才能が無い俺のような奴は、二流止まりがせいぜい。
――などという言い訳が通じるような戦況じゃなかった。
ならば、どうするか。決まっている、無理やりに精度を高めればいい。
ルーとアリスへの訓練はその一環で編み出した訓練法だ。魔力の扱いに慣れた者は疲労時、無意識下で身体、肉体の傷みを修復するように魔力を流す傾向がある。
つまり、魔力が流れやすくなる。その上で全身強化――魔力をフルにして身体を動かし、経験則により魔力の強化、状態を把握する。これにより、同調後の魔力全開での動きがスムーズになる。
これが第一のステップ。だが、それでも不足していると感じた当時の俺は次の段階としてこう考えた。
どうしたって、人間の思考がある内はウォリアの動作に慣れない。関節部や重量など、いつもの身体と細かい差異があるからだ。これが操縦の邪魔になる。
ならば、それを取っ払うのが最善かつ最短の道だ。
魔力で包み、機体と同調するという錯覚を錯覚ではなく、真実だと強く認識する。魔力の中に居るのは俺とウォリアのみだと自分勝手に確信する、同一のものだと俺自身が決定付ければいい。
ぎしり、と身体が痛む。無茶をさせた機体の反動のせいだろう、痛むのは当たり前だ俺の身体なんだから。
(だが、代わりによく見える)
命中させたい標的と、放った後の魔導弾の軌跡が。
引き金は、2度だけ。
飛んでいく魔導弾は風に翻弄されながらも、大きな魔法陣の奥にある“翠嶺”の指に直撃し、その魔法を強制的に中断させた。
反動で“翠嶺”が吹き飛んでいき、魔法陣が崩れた余波により強風が荒れ狂った。
焦ったルーが背後から迫る、でも烈火舞踏を発動した“真紅”であっても、この風の中だとどうしても鈍るだろう?
「――
振り返り、引き金を引き絞る。
2発の弾がルージェイドのコックピットに命中し、煙を上げた。
『……いや、効かないんだけど』
うん、そうだろうな。俺は魔導砲を地面に落として、降参のために両腕を上げた。
「……それで? どこまでが計算しての行動だったのかな」
「勝った気がしねーよ、けったくそ悪い」
降りた後、俺はいつもの詰め所の中で勝者のはずの二人から睨まれていた。ていうかアリスちゃん口悪ーい。
「うっさい。で、始めから勝つつもりは無かったのかよ」
「当たり前だろ。つーかニギリスの出力で二つ名持ちに勝てるとでも思ったのか?」
「ドヤ顔で胸を張ってんじゃないよ……クソ」
悔しそうに呟く。魔法陣を潰されたからだな、これは。
勝者なら勝者の顔をしてもらいたいもんだね。ていうか勝てるとか一言も言ってない。俺の訓練にはなった、でも勝つとは言ってないもんね。
しかし、予想以上に苦戦した。ぶっちゃけると最初の斉射は生きた心地がしなかったんだが。最後の魔法のチョイスも、こっちが思う以上に練られていたし。
「え、どういうこと?」
「大魔法ってのは普通、魔法陣に直接魔導弾を受ければ制御不能になって動作不良を起こすものなんだよ。そこでアリスは最低限の威力を出すだけで、あとは制御に集中してたんだ。媒介か核の部分でも撃たれなければ問題なく発動できるってレベルで」
途中で気づけて良かった。でなければ普通に魔法陣に撃ち込んで終わりだったのに、精密射撃をするために身魔法まで使うハメになった。
まあ、結局は俺の負けなんだが。
「……どこがだよ。勝ち逃げされた気分しかないよ、内容的には完全に僕たちの負けだったしね」
「私も同感だ。というか、あんた正気かよ?」
「なにがだ?」
俺はルーを横目で見た後、アリスに向き直る。
あ、舌打ちした。追求するつもりはないって顔だなこれは。
優しいねえ。流石に気づかれているようだ、俺の太ももに内出血が起きてるのは。
これも過度の同調が起こす弊害だからな。機体のダメージが、俺の肉体にフィードバックしてしまう。
古代兵器を撃ち落とした時は、魔導弾への同調と魔力の集中――それも下手すれば破裂しかねない程の高密度の――による反動が仇になった。
残っている全魔力を注ぎ込んだからか、血管の5割が破裂した感覚があったからな。
そのあたりを推測できるなんて、やっぱり掘り出し物だ。そして、あの場面での固有技能の行使―――やっぱり、両親に対する拘りはあるようだな。
なら、留め置くのが最善だろう。いずれ真実を話すにしても。
「……なんだよ」
「何でも。あ、俺の教えた訓練法。あれを繰り返せば、ウォリアと同調した時でも少ない反動で大掛かりの大魔法を使えると思うぞ」
告げると、アリスは本当に嫌そうな顔をしながら目を逸らした。
年相応なその仕草を見ると、美人じゃなくて美少女に見えるな。よっぽど魅力的だ、性根を隠そうとしている時に比べれば。
「で、どうする?」
「……世話になる。よろしく頼みます、隊長、副隊長」
アリスは俺とルーに頭を下げた。こういう所も律儀だな。こらルー、照れない。副隊長かどうかはこれからの頑張り次第だ。
さしあたっては、ルーに罰ゲームの負けを払ってもらうとしようか。
「え……な、何を命令するつもりなの?」
「城下町の案内をしてやってくれ。勝手が分からない王都だからな」
別の部隊からちゃちゃ入れがやってこないとも限らない。そう告げると、二人から呆れた視線を向けられた。いや、なんでだよ。
「なんでじゃないよ、誤解されるようなことばかり言っちゃって。そういうつもりじゃないって分からなければ嫌われてるよ?」
「全くだ……苦労してそうだな、アンタも」
「うん、分かってくれる? あ、でも僕の方が年上なんだからね。これでも20歳だし」
「なにそれうける」
冗談だと思ったのだろうアリスの発言に、ルーが膨れ始めた。頬を押せば息が出そう……あ、やった。勇気あるなあいつ。
女三人寄ればというが、二人でも十分のようだ。でも、相性は悪くないようで良かった。巨乳の騎士団長には礼を言うべきだろう。これから辛い訓練が続くだろうけど、競争相手が居ると居ないでは身の入り方が違うから。
訓練方法だけ聞いて逃げ出さないのも、お人好しの部分がある証拠だ。魔女たる祖母と喧嘩をしたというが、あのババアのことだ。本心からの行動じゃなくて、そう仕向けた可能性もある。
(思えば、あいつらも義理堅い奴だったな……マリー、アズガルド。お前達の娘は、元気に育ってるよ)
帝国革命の功労者の裏表を含めた上位10人を上げれば、確実に入っているであろう夫婦。命を賭けて目的を遂げるだけでなく、子供への愛情も忘れなかったということを知れた。自らの命を捧げた熱情と覚悟に感動はしていが、それ以上に嬉しいという気持ちで胸がいっぱいになっている。
そうだよな、共犯者。お前達が死んだ時の真実を知れば、この先に完成するであろう大魔法の杖の先が、俺に向けられる事になろうとも。
『――いつかどこかで、出会えたらでいいの。あの子の力になってあげてちょうだいね、我らがリーダー』
笑い、血を吐きながら告げられた言葉を反芻しながら。俺は満更でもない表情でルーと話す
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