「多くの同業者は安全で行きやすい湖や川で妥協するものだが、私は決して手を抜かなかった。」ここで世界観や語り手の性格が提示されることで、一気に惹きこまれました。
一つ一つの動作を丁寧に描写されているので、1000文字とは思えないほど凝縮されたストーリーでした。この作品はずっと読んでいたい……正確には、「ずっと聴いていたい」と思える文章です。耳に訴える文章だと思いました。
特に好きな描写は、「そしてその切れ目からしゃくしゃくと透き通った水を少しずつ切っていく。」です。「水」が「しゃくしゃく」と音を立てるという状況は、視覚的に理解しようとすると、どうしても見慣れた水から離れられず、私の想像力に限界があるのですが、聴覚的に理解してみると、すんなりと心に沁みてくるのです。
もっと多くの字数でこの世界が紡がれたなら、どんなに素敵だろうと思いました。
大好きな作品です。