第45話 打開策

 その晩はベッド上で悶えた。


 解決方法が浮かばない。


 紗耶香もアイリも彩音ちゃんも、俺以外とキス契約を交わすつもりはないとはっきりわかってしまったからだ。


 誰か一人を選ぶと、残り二人は『ずっと彼氏なし』で過ごしてゆかねばならないという。


 俺はもともと女っ気がない独り身だったし、彼女になってくれる相手をあれこれ要求できる立場でもなかったから、諦めもつく。


 しかし、あの三人も夢魔契約していたというのは予想外の展開だった。


 やっぱりあの方法しかないか……とぼんやりと思考を固めてゆく。


 三人が夢魔契約していることが判明した時から考えてはいた方法だ。


 部屋隅の段ボール猫ハウスに丸まっているクロぼうに声をかける。


「クロぼう、俺、キス契約するわ」


「ほう」


 クロぼうは目がぱっちりと覚めたという調子で相槌を打つ。


「やっと相手を決めたんだね。いいことだと思うよ。で、お相手は誰かな?」


 俺はクロぼうに、考えていた計画を話す。


 クロぼうはいまいち信用に欠ける所があるのだが、夢魔という専門家であることには違いない。


 クロぼうは俺の説明を聞いて、ちょっと目をつむって考える仕草。


「その方法だと、どうなるかわからないね。君の思っている通りになるとは限らないよ。カウントされないかもね」



 でもな、と俺も言葉を継ぐ。


「ほかに方法ないじゃん。俺も可哀そうだが、あの三人はもっと不憫だわ。カウントされなかったら三人にくじ引きしてもらうわ、土下座して。外れた人は俺以外の誰かとキス契約してもらうという約束つきで」


「清一郎君がそれでいいというなら、僕が口出しすることじゃないけどね。清一郎君が誰かとキス契約してくれるのなら僕の責務は果たされるから無問題なんだけど。上手くいくといいね、その方法」


 言い終わるとクロぼうはまた段ボールハウスに丸まって寝始める。


 俺も今後の事を決めて一息ついた気分だ。


 何はともあれ、当たって砕けろ、だ。


 俺と三人の前に立ちはだかる壁が本当に砕け散るのを望みながら、その晩は休みについたのだった。

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