第33話 アイリと一緒にエロゲ⑴
その日、俺はアイリと二人きりで下校した。
紗耶香は、放課後の体育館倉庫での突撃失敗の余韻があって、「すいません今日は先に失礼します」と俺から距離を置いてくれた。ここいらへんの気遣い? は、紗耶香を嫌いきれないところでもある。あと、美少女としての魅力。俺、凡夫だから。
彩音ちゃんは、週一のたからやセールの買い出しで先に帰っていて下校には同席していない。
「ねえ。清一郎。久しぶりに私の部屋に遊びに来ない?」
新緑に萌える港南中央公園脇を歩きながら、アイリが声をかけてきた。
「久しぶりじゃないだろ? 一昨日俺がアイリに声をかけて、その部屋でアイリから告白してきたばっかりだろ?」
あと『遠見』で、アイリが人形を使ってやっていたストレス発散のまじないもどきを覗き見ていることもある。内緒だが。
「まあそうね。でもおとといは清一郎と遊んだりすること、できなかったから。久しぶりに清一郎とゲームとかやりたいなって思って」
「ゲームくらいなら別に構わんが。お前の合気道とかで拘束されて無理やりってのは流石になしにしてほしい」
「わかってるわよ。私もさっき紗耶香に注意したばっかりだし、清一郎のこと無理やりというのは本望じゃないし。清一郎が欲情の赴くままに強引に私を……ってなら望むところなんだけれど」
ふふっと、昔を思い出させるように子供っぽく笑うアイリ。
セリフの内容の割に、俺の胸にズキンときた。
いつもは怒っている様な顔付きのツンデレツインテール。だから、時折見せる素直な表情に直撃される。子供の頃、俺はこいつのこんな顔が好きだったなと思い出す。
昔の様に一緒にゲームを楽しむのもいいか……と、ちょっと懐かしむと同時にわくわくしつつ、アイリに従って高級住宅街に足を踏み入れた。
◇◇◇◇◇◇
アイリと連れ立って部屋に入る。
落ち着いた色合いのちょっと大人びた部屋。言っちゃあなんだが、普段のアイリには似つかわしくない。大き目の机に並んでいるゲーミングパソコンと散乱しているゲームのパッケージが、アイリっぽさを醸し出している唯一の演出だ。
二人して部屋の脇に鞄をおいて、アイリがパソコンの電源を入れて椅子に座る。俺も並んでいる隣のチェアに腰を落ち着ける。
うん。変わりない。
中一まで俺とアイリが入り浸ってゲームをしていた頃の間合いそのままだ。
懐かしさと楽しさと、再びアイリとゲームをやるちょっとしたドキドキ感を味わっている俺の隣で、アイリが慣れた手つきでマウスをクリックする。
画面にウィンドウが開いてゲーム画面が表示された。
『ご主人様と虐められっ娘メイド』
え?
画面には、目隠しされたメイド少女が、あられもない格好で縛られている。
なに……これ……?
いや、エロゲ―なんだろうが、いきなりの絵柄にビビってしまった。
中学生一年までは、一緒にギャルゲーをわいわいと遊んでいた。それってヒロインのセリフとしてどうなの! とか突っ込みを入れながらあくまで友達同士として楽しくにぎやかに。
それが今! こいつ、いきなりエロゲ―を起動しやがった! それもメーカー製ではなくて同人らしきメイドもの。
幼馴染なんだが、それでもいきなり部屋に呼んだ男に同人ポルノを提示するっての、年頃の女の子としてどうなのよ! と脳内で突っ込みを入れた。
「メーカー製も悪くはないんだけど、いまいち自主規制とかいろいろあって尖りにかけるというか、もっと言うと突き抜け間に乏しいというか。これは色々探して一番出来が良い作品なのよ。同人だけど」
こいつ、純愛風味のノベルゲーが好みだったんじゃないのか?
アマキスとか。
それがいつの間にか……なんてモノに目覚めちゃったの! 思っている俺に、隣のアイリがウキウキだった声音で説明してくる。
「アマキスみたいな定番恋愛物ももちろん好きなんだけど、これはオリジナルとしては別格の出来栄えだから清一郎にも楽しんでもらえると思って!」
アイリがスタートボタンをクリックした。
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