第15話 俺、アイリを狙うも返り討ちに合う⑸
「ずっと、『虐めっ子と虐められっ娘』になりたいって思ってた!!」
「は……い……?」
空気が一変に変色した。恋人同士の告白の場面が緩んで、俺の緊張の糸が切れる。
アイリは真面目な訴え顔で俺を見つめていた。
「いや……そこはまず彼氏彼女からの付き合いからというか。お前のことだから俺を虐めるのは好きなんだろうが、俺もノーマルだから最初は普通の付き合いからというか」
「違う! 逆よ、逆。私が、清一郎に虐められるの!」
「え?」
「私のこと下僕にして虐めて!」
いきなり言い放ってきたアイリに俺の脳内は混乱した。
なんだって?
俺が『虐める』?
『下僕』ってなんだ?
ちょっとわからない。状況が把握できない俺に向かって、アイリが説明を始める。
「エロゲの名作と名高い調教ゲームをしたら虐められる女の子に目覚めちゃったの! 試しにゲームやってみたら物凄くはまっちゃって。それから清一郎とそんなゲームみたいなプレイするの、夢見てた、ずっと! 一人プレイとかしてみたんだけど全然満足できなくてストレスが溜まって! やっぱりこういうのは男女ペアでプレイするものだって思い直している所、今!」
アイリが立ち上がり、クローゼットにまで歩いていき、ガーとそれを大開にする。
中から、それ系のDVDやブルーレイ、大人のおもちゃ等が床にあふれ出た。
「これだけじゃなくて、この屋敷の地下にはそういうのに使う専門の部屋があるの。昔お父さんとお母さんが使っていたんだけれど、私も使っていいって。相手は清一郎ってこと伝えてあって、両親にも許可を得ているわ。最初はソフトなのからってお勧めも得ているから」
え? え?
何が起こってるの?
俺、今何を見て、何を聞いているの?
地下になんだって?
お勧めって、なんだ?!
脳内が混乱して思考がまとまらない。アイリって……ツンデレサドっ子ガールじゃなかったの?
え? え? どういうこと?
アイリと付き合うとなると、アイリの性格からして、プロセスが進んでくるとちょっとレベルの高い『虐め』を受ける可能性があることも想像しないわけじゃなかった。でもそれは男女関係の進んだ遥か先の事で、アイリと恋人同士として付き合えるのならデメリットとして甘受すべきかなぁ~程度に思っていたのだ。
「さあ私のこと虐めて! 清一郎の好みに調教して清一郎色に染め上げて!」
ちょっと! なんてこと口にするんだ、この少女は! そこは思春期の女の子としての恥じらいを持とうよ!
「ちゃんと清一郎とプレイできたらお父さんもお母さんも喜んでくれるから! なんならもう結婚して夫婦生活に突入していいって承諾とってあるから!」
お義父さんお義母さん、なんてこと勧めるの!
アイリがずずずいっとこちらに迫ってきた。
「清一郎はもう私と『キス契約』をしないとこの屋敷から出られないから! このまま清一郎のこと監禁して男女関係に突入するつもりもないわけじゃないから!」
なんでアイリが『キス契約』のこと知ってるんだ! いや今はそれどころじゃない。
俺、このまま監禁されちゃうの? っていうか無理やり男女関係に突入!
それは……困る、もとい、嫌だ!
アイリが迫ってきた。
所詮女の子。腕力で脱出すればいいと考えるのはアイリをしらないただの素人。
このアイリ。基本オタクゲームマニアなのだが、大昔のギャルゲーヒロインがやっていた合気道にハマって早十年。もはや初段の腕前。マジ、監禁されかねない。
アイリの目に狂気の色が見え隠れしている気がするのが、なんともヤバイ感じだ。
俺はソファを立ち上がる。
アイリにじりじりと壁際に追い詰められて、そのアイリの手が俺にかかると思った瞬間――
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