それぞれの役目 « role & rule » 




結局僕は午後の授業を体操服で受けることになった。


おまけに弁当も食べ損ねた。


黒の制服の中でポツンと一人、橙色のジャージで英語の授業を受けながら僕は思う。これでついに視覚的にもひとりになったな、なんて。


授業ではちょうど食べ物の話をしている。


僕は今にも鳴きそうな腹の虫を必死に抑えて、クラス観察をすることにした。


前の席で苗村は堂々と睡眠、龍ケ崎はまじめに板書を写している。他、クラスの若干名が僕のほうを見て何やらクスクスしている。


いじめのシナリオは不思議だ。

クラスの誰か一人が始めたはずなのに、気が付けばクラス中に広まっている。


ほとんど話したことないようなやつも僕を遠巻きにし始めて、そのうちクラス全員が敵になる。


でもその役目から外れると絆は復活する、いじめられる役はクラスに一人っていう人数制限があるみたいだ。


僕は教室をぐるりと見まわして、僕をちらちらと捉える視線の裏にある心の台詞こえが聞こえる気がした。


「あいつには近寄らないでおこう」


「別に俺はいじめてない」


「僕がいじめられるのはゴメンだ」


僕はそれを考えると、いじめで本当に怖いことが何か分かった気がした。


自然と僕の視線は元いじめられ役だった小畑を捉える。


「____。」


小さくても声に出したかっただけ。それなのに、

聞こえないとわかっていても罪悪感からその言葉はのど元につっかえて出てこようとしない。


たった三文字のその文字は今僕の頭の中で行き場所を忘れて彷徨っている。


だから代わりに、いつか自分にいじめられ役が回ってくるんじゃないかとビクビクしている演者に告げる。


安心しな、僕が逃げ出さない限りお前たちに刃は向かないさ



「キーンコーンカーンコーン。」



戦闘の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。


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