第10話

仲間ってさ。同じ目標をもって切磋琢磨して一緒にいる時間が長くて困ったときに助け合える信頼関係があって助けられたことを情けなく思ったりしなくてすんで喜びをわかちあい、辛さは半分になるっていう関係だと思うんよね。

そんなやついないよ。

おじさん60年も生きてきて仲間もいないの?

部下は沢山いたけどね。

寂しくない?

いや、淋しさとか感じた暇もない。

あたしはね、人の表も裏も全部みてきたの。汚い嘘、優しい気遣い、両方持ち合わせてるのが人なんだよ。

ドキっとした。日菜子が裏をみて、辛い思いをしてきたのかと思った。まだいたいけない少女なのだ。悟ったようなもの言いは似つかわしくない。65歳になり性欲も枯れはてた何ももたないじいさんに、日菜子は何を期待しているというのだろう。

仲間?なんだよ。それ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る