017 訓練での悲劇
三日後、ヒュドラルギュロス隊舎敷設の訓練施設、その只中で――
「――あばばばばばばばっばばばっばばばっばばばばっばばばばばばばばっばばばばばばっばばばばばばっばばばばばっばばばばばっばばばっばばばばっばばばばばばばばばっ」
奇声を上げたランディが、槍を片手にデスダンスを踊っていた。見届けるレイチェルとカーレルは痛ましげな、気の毒そうな視線を送っている。対照的に、術を発動するフェルトは嬉々とした表情。
先日カーレルが教授した、周囲からの攻撃を察知するための訓練だ。内容は、難易度別に設定されたフェルトの攻撃を砂時計が落ちるまで凌ぐというもの。
最初の挑戦者は、意気揚々と立候補したランディだった。自身から弱いエーテルの波動を放出し、周囲の感知に応用するという手法を披露。
それによって上級難易度までもを難なく乗り越えた少年は、致命的なミスを犯してしまう。
『うっしこれもクリア。この調子なら最高難易度どころか超級難易度もいけるな』
『――わかりました。ではお望み通り【難易度:毒竜の憂さ晴らし】いきますよ?』
『……えっ?』
直径一〇メルナの半球状領域中で、無作為に放たれる不可視の衝撃波がランディを襲う。最初こそなんとか捌いていたものの、時間が一割経過した頃から被弾が増えてゆき――結果、砂時計の三割が落ちた頃からこの有様である。
間断なき衝撃波が、ランディに安らぎを――倒れる慈悲を与えない。結果、側から見た少年は白目を剥き、不格好なダンスを踊っているのだ。まさに、一種の冥府絵図。
そんな憐れな少年に、救いの
「フ、フェルト隊長……そこまで、です」
「――はい、わかりました」
心なし残念そうなフェルトが、会議の鬱憤を晴らしていることは本人以外知らない。
波状攻撃が途切れたことで、ようやく
我先にとカーレルが介抱し、迂闊な犠牲者を壁際へと運んでゆく。
『あっずるい』
『先に助けた者勝ちだ』
出遅れた少女との間に取られる、非常に高度なアイコンタクトの応酬。取り残されたのは、次なる
毒竜は、ゆっくりと背後を振り返り、
「さてレイチェル。難易度はどうしましょうか?」
「取り敢えず初級でお願いします」
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