「5分で読書」になんかに負けない
西東友一
第1話 パクリじゃないかあぁ!!
「あれっ、この作品って…」
僕は走り読みでページをめくっていく。
「僕の…いや、僕たちの作品のいいとこどりじゃないか」
読み終えた僕は絶望に叩きつけられる。
ピコンッ
スマホを見るとSNSのキズナで
『
『あぁ、朔夜さんも読みました?あれって…』
『俺たちの…」
『僕たち…』
———パクリじゃないかあぁ!!
僕と朔夜さんはヨムカクという小説投稿サイトに「5分で読書」の投稿職人である。僕は異世界ファンタジー、朔夜さんが現代ファンタジーを書いていて、同じイベントに参加し、読み合ったのがきっかけだ。
『はじめまして、斉藤と申します。朔夜さんの作品読ませていただいて、物凄い感動しました!』
ピコンッ
『どうも、朔夜です。俺も斉藤さんの作品読んだぜ?あんたとは気が合いそうだ。意見交換してこうぜ?』
流行りの熱血主人公が吠えているスタンプ。
『はいっ!!僕も朔夜さんと同じこと思いました!!』
そんなこんなで顔は知らないが連絡を取り合っていた。
それから励ましたり、アドバイスをしたり、お互いを高め合っていた。
僕たちは鳴かず飛ばずの小説家で受賞なんて1つもない。
コンテスト期間中に自分達の作品のPVが1週間無いと愚痴をこぼすようなおままごとレベルなのかもしれないけれど、それでも僕たちはプロを目指して、受賞を目指して、収益化をできるように頑張っていた。
ピコンッ
燃え尽きて真っ白になってしまうスタンプ。
『俺は…もうやってらねーよ』
びっくりのスタンプを送る。
『そんなこと言わずに』
『頑張りましょうよ』
連続コメントをする。
『斉藤さんは、悔しくねーのかよ?』
「…」
僕はそのコメントを見て、指が止まる。
「僕だって、悔しいですよ、っと」
四つん這いになって悔しがるスタンプ。
ピコンッ
『やつらはちっちゃな餌を使って、俺たちからアイディアを奪って言ったんだぞ?』
泥棒を追いかける警察のスタンプ。
『それは…わからないんじゃないですか?』
『いや、奴らはビックデータを集めるために投稿させて、投稿者と読者のデータを分析し、AIに傾向やどんな話ならウケるかを食わせて、それを元に小説を書かせてるんだ』
『そんな…陰謀論を』
世迷言を言いなさんな、の老人のスタンプ。
『いや、逆にAIがデータもなく書けると思ってんのか?』
『そりゃ、そうですけど』
『おい、これを見て見ろ!!』
朔夜さんがスクショを載せる。そして、一部に丸がしてあった。
そのスクショを拡大してみる。
「ヨムカクの注意事項…」
スクロールしていくと、注意書きの丸してある部分を読む。
「えーっと、本コンテストに投稿していただいた作品の著作権は……甲に帰属する?えー…っ、自動学習装置(ヨムカク君)に学習させます?」
ピコンッ
『読んだ?』
人差し指を口に当てた少女が頭上に?を浮かべるスタンプ。
『読みました…』
僕もショックで肩を落とす。
ピコンッ
『俺…ヨムカク辞めよっかな。本当に』
『朔夜さん…』
『コツコツやってたけどさ、リワードが1年で消えるのを見てショックを受けたとき以上だわ。ちな、あん時、斉藤さんが励ましてくれなきゃ…辞めてた』
(あぁ、あのときか)
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