第10話 ゲーム脳とかやばくない!?
はい、問題です。
夕食の支度しないといけないし、ユイナさんが呼びに来るかもしれない。
そんなまともな思考が頭をよぎったのは何分前だったかな?
やばい。
これがゲームにはまってご飯も食べず、身だしなみも整えず、ひたすらゲームやっちゃうゲーム脳ってやつなの!?
「ゲーム脳とかやばくない!?」
やばっ。
また、思わず心の声が口から出てたみたい。
気を付けないとうっかりで済まないかもしれないし。
「リナリア、それ違うから。ゲーム脳関係ないよ?」
隣に座ってるエステルがふるふると首を横に振って、かわいそうな子を見る目で見てくる。
え? ゲーム脳じゃないの?
『空気読めない独り言でごめんなさい』をしないといけないやつなの?
「それで私がこのギルドのマスター・マリーナです。皆さん、マスターと呼んでくださいます。クラスはビショップです」
だから、部長さんだよね?
髪型変えてるけど分かってるからね!
ともかく、そのマリーナさんが勧めるがまま、ギルドのサロンに連れてこられた。
良く言えば、案内。
悪く言えば、拉致。
まぁ、部長さんとスミカだから、知り合いじゃなくて友人なんだし、別に怖がる必要もないし、いいんだけどね。
気になるのは鎧くんことランスさんとクロスケことヴォルフさんよね。
「私は説明する必要ないと思うけどエステルよ。クラスはアーチャーなの」
ん? 何、この新学期の自己紹介みたいな流れは。
あたしも言わなきゃいけないのかな。
流れ的に言わないと駄目なやつっぽいけど。
「僕はランスです。クラスはパラディンです。ディフェンスに定評あります」
パラディンは聖騎士のことだっけ?
聖騎士なんてタケルにピッタリな気がするわ。
それに守ってもらうあたし……。
いけない、タケルは今ここにいないのについタケルの事を考えちゃった。
「僕はヴォルフ。クラスはソーサラー。何でも消し炭にしてあげるよ、くっくっ」
クロスケくんは放火魔らしい。
物騒なんじゃないの? 消し炭って、何なのよ。
あっ、これはあたしが言わなくちゃいけないやつぅー。
期待を込めた目で見られてる気がするんだけど。
「あたしはリナリアです。クラスは……クラスは何だろ?」
「「「「え?」」」」
全員に「え?」の大合唱をされてしまった。何、あたし変なこと言った?
「リナリア……試しに『ステータス』でクラスを確認してみて。他にも項目あると思うから、気になったところあったら、何でも聞いて」
エステルに言われた通り、ステータスを開くをやってみた。
そんなのあるって、言ってよね。
説明書すらついてないんだよ?
紙が一枚入ってるだけで分かると思ってるの?
「えっと……プリンセスって書いてあるけど?」
「「「「プ、プリンセス」」」」
また、大合唱された。
何、この人たちユニゾン訓練してるの? あたしは遠慮したいけど。
面倒そうだもん。
「リ、リナリア、それ超レアクラスじゃない! 普通に選べないのよ、そのクラス」
エステルが瞳を輝かせて、ぐいぐい迫ってくる。普段、慣れてるとはいえ、近いんですけど。
圧がすごいんですけど。
「え、そうなの? よく分からないから、ランダムを選んだだけで」
「あぁ、さすがは姫。運命が姫を秘めたる姫のプリンセスにしたのです」
マリーナさん、美人だけど残念美人ね。
言ってることのほぼ半分が意味分からないもん。
「それでプリンセスって、何が出来るんでしょう?」
「それがどこにも情報が出てないの。超レアだし、実在するかも分からないクラスって話だったの」
「えぇ? 初心者なんですけどそんなのでどうすれば、いいのか……」
最新のゲームはすごいなんて、感動してた気分はもうどこかに飛んじゃってた。
それよりもどうすれば、いいのか分からなくて不安に押し潰されそう。
こんな時、タケルがいたら、きっと『大丈夫だよ。分からなくても一緒にやればどうにかなるよ。僕がいるから』って、励ましてくれる。
「うーん、情報がなくて誰も分からないんですよね。だったら、僕たちと一緒に遊んでみませんか? 一人で分からなくても側に誰かがいれば、きっと何とかなりますよ」
ランスさんは相変わらず、表情の読めないバケツみたいなヘルメットであたしを勇気づけるように言ってくれる。
不安になってるあたしのことを元気づけるように言ってくれてるのかな。
やっぱり、見た目はアレだけどいい人なのかも。
「そうですわ。つまり、リナリアさんも今日から、我がギルドのメンバーということで」
「は、はい? ギルド? え? メンバーって?」
あたしはよく分からないうちにギルドなるものに加入しちゃったらしい。
新手の宗教勧誘みたいな手口なんですけど、こんなので大丈夫かな。
「それでは時間も時間ですから、皆さん、フレンド登録をしてお開きとしましょう」
マリーナさんの一言でお開きということになって。
あたしは文字通り手取り足取り教えてもらって、どうにか四人をフレンド登録することに成功するのだった。
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