第39話 どこへ行ってしまったんだ? ◇オフライン◇
次の日――、
学校に行くと、名雪さんの姿が見えなかった。
いつもだったら、もう教室に居てもいい頃合いだ。
なのに居ない。
それでも遅れてやって来るのだろうと思っていたのだが、そうこうしている内に朝のホームルームが始まってしまった。
そのホームルームで知った事だが、
担任が言うには、名雪さんは家庭の事情での欠席らしい。
しかし俺が昨日、彼女の家を訪れた時はそんな様子は無かった。
本人も普段通り、登校するつもりだったと思う。
ノインヴェルトをやる約束もしていたし、また家でゲームをして遊ぶ約束もした。
何か本人の意志とは違う力が働いているように思える。
あの後、何かあったのだろうか?
返信が来なかった理由は分かったが、何か釈然としないものが残る。
それから数日が経った。
その間、名雪さんは一度も登校してこなかった。
彼女は母親と二人暮らしらしいが、その親も仕事で何日も家を空けることがあると聞いている。
それと何か関係しているのかは分からないが、こうも連絡が取れないと心配になってくる。
幸い、俺は彼女の家を知っている。
アポ無しだが、直接に家に行ってみようか?
家庭の事情というのなら、そこに俺が介入する権利は無いが、心配するのは自由だ。
なあに、外から様子を探るだけだ。
それなら迷惑も掛からないだろう。
そうすることにした俺は、学校が終了後、その足で名雪さんの家へと向かった。
◇
俺は名雪さんが住むアパートの前にやってきた。
遠目で見た感じでは変わった様子は無い。
それも当たり前か。
見た目で建物に変化があったら、それはそれで問題だ。
名雪さんの家は二階の一番奥にある角部屋。
俺は階段を上り、玄関の目の前まで行ってみる。
通路側には小さな小窓が一つだけあったが、中に明かりは点いていない様子。
物音もせず、静かで、人の気配を感じなかった。
ここにはいない?
なら何処へ?
出かけているだけか?
それとも、今は別の場所にいる?
何か普通ではない異様な雰囲気を感じ取った俺は、自分のスマホを取り出した。
彼女に直接、電話をかけてみよう。
もし、中に居るのなら、着信音が外まで漏れ聞こえてくるはずだ。
俺は躊躇わず、彼女の番号に電話した。
「……」
何も聞こえてこない。
ということは、彼女はスマホを持って出たという可能性が高い。
俺は安堵の溜息を吐いた。
もし、これで着信音が聞こえてきたら、中で倒れていたりする可能性もあるからだ。
そのまま呼び出しを続けるが、通話が繋がることはなかった。
呼び出し音が鳴り続けているということは充電が切れているわけでも、マナーモードになっているわけでもない。
電源はきちんと入っている状態だ。
なのに彼女が出ることはなかった。
まあ、普段しゃべらない彼女が電話に出ても会話が出来ないので、敢えて出ないという可能性も無きにしも非ずだが……。
そういえば、彼女は何故、しゃべらないのだろう?
以前、驚いた時に小さく声を上げていたから、しゃべれないという訳でもなさそうだ。
そうしているのには何か要因があるのだろうか?
理由はともあれ、ここまでやって来たが結局、彼女の存在に近付くことが出来なかった。
本当にどこへ行ってしまったんだ?
一応、これでも俺達、付き合ってるんだよな?
何にも言わずに消えてしまうなんて……。
今まで当たり前のように隣にいた存在がいなくなって、心にぽっかりと穴が空いたような気分だった。
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