第37話 聞き慣れたレベルアップの音 ◆オンライン◆
野次馬でごった返す暴走車の事件現場から逃れてきた俺は、ようやく自宅に着いていた。
まさか、自分があんな事件に出会すとはな……。
思わず魔法を使って綾野さんを助けてしまったが、その行為自体は仕方が無いと言えよう。
目の前で惨状が繰り広げられたら寝覚めが悪いし。
そもそも反射的に体が動いてしまっていた。
魔法を目撃した者は近くにいたと思うが、一瞬だったし大丈夫だろう。
生成した岩もすぐに消えてしまうので証拠としても残らない。
精々、噂として近しい人に広がる程度だ。
事故にあった綾野さん自身も車に轢かれそうになった瞬間は、恐怖から逃れるあまり目を伏せてしまっていたので、実際、自分がどうやって助かったのかは分からない様子だった。
ともかく、家に帰ってくるだけで疲れてしまった。
ここは、気分転換にノインヴェルトにログインすべきだろう。
そうでなくても、名雪さんと帰宅後に落ち合う約束をしてたし。
そんな訳で俺は自室に籠もると、すぐにアビスを頭に被り、ノインヴェルトオンラインを立ち上げた。
◇
前回ログアウトした場所である、ディニスの街並みが視界に入ってくる。
靄が消え去るようなフェードインと共に景色がハッキリと瞳に映った直後だった。
『パラッパッパッパー』
「っと……!」
聞き慣れたレベルアップの音が脳内に鳴り響いた。
またもやログインと同時にレベルアップである。
考えられるのは……。
「どう考えても、アレしかないな……」
暴走車から綾野さんを助けた事だ。
それ以外、経験値を稼げそうなイベントはリアルでは起きていない。
今日は一日中、名雪さんとゲームをしていただけだし。
レトロゲーをプレイした時の他のゲームの経験値が加算されるとか、そんなのだったらビックリだ。
でも、それは考えにくい。
これまでの経験から何かを倒した時に経験値が得られるのだと思う。
今回は恐らく、暴走車を倒したと判断されたのだろう。
じゃあ、早速ステータスを確認していこうか。
[ステータス]
名前:ユウト 種族:ヒューマン
LV:10 職業:魔法使い
HP:603/603 MP:804/804
物理攻撃:411 物理防御:484
魔法攻撃:697 魔法防御:639
敏捷:425 器用:473
知識:508
[魔法]
ファイア〈火属性〉 Lv.6
クロスファイア〈火属性 全体攻撃〉LV.3
ヘルファイア〈火属性 グループ全体攻撃〉Lv.2
ウインドカッター〈風属性〉Lv.1
アイススピア〈氷属性〉Lv.3
サンダー〈雷属性〉Lv.3
ロックバイト〈土属性〉Lv.4
アースクエイク〈土属性 全体攻撃〉Lv.2
プロテクト〈土属性 付与〉Lv.1
ダークマター・アブゾーブ〈闇属性〉Lv.1
ハルシネーション〈闇属性〉Lv.1
[スキル]
鈍化 Lv.4
駿足 Lv.4
不可視 Lv.2
隠密 Lv.2
シールドバッシュ Lv.1
絶対詠唱〈パッシブ〉 Lv.2
ファストスペル〈パッシブ〉 Lv.4
オートヒール〈パッシブ〉 LV.3
オートマジックヒール〈パッシブ〉 LV.3
今回も基本ステータスが大幅に上がっていた。
相変わらずレベル10とは思えない数値だ。
魔法では初めて風系の魔法が手に入った。
[ウインドカッター]
風の刃を放ち、対象を両断する魔法。
土属性モンスターに有効。
ファイア同様、風系では基本のような魔法だ。
それと今回はもう一つ、ハルシネーションという闇属性魔法が増えている。
名前からして幻覚を見せる系の魔法だろうか?
[ハルシネーション]
対象にこちらが望む幻覚を見せ、行動を制限する魔法。
効果発動中、相手は攻撃不可。
やっぱりそうだ。
ゲームでは定番の幻覚系魔法だが、これはリアルでもかなり使えるかもしれない。
スキルについては……違和感のあるものが増えている。
シールドバッシュだ。
[シールドバッシュ]
盾を使った打撃技を放つ。攻撃を受けた対象は攻撃をキャンセルされる。
ノックバック効果あり。
これって大盾が装備できる
なんで魔法使いの俺に……??
しかも俺、職業的に盾は装備出来ないぞ……。
こんなの、どうやって使えというのだろうか……?
そういえば既に活用している駿足のスキルも本来は
たまに他職業のスキルまで覚えてしまうことがあるようだ。
増えた魔法とスキルはそれだけだが、今回、暴走車を止める際に使ったロックバイトや駿足スキル、その他諸々が軒並みレベルが上がっていた。
それらの威力や効果が強化されていることだろう。
一部、使い方が分からないスキルがあるものの強くなっていることには変わりは無い。それは良い事だろう。
さて、色々覚えたこの状態で、今日もこの世界を楽しみたいところだが……。
俺はコンソール上のフレンドリストに目を向ける。
唯一のフレンドであるユーノの文字はオフラインを示す灰字のままだ。
「おかしいな……まだログインしてないのか」
家に着いたと同時に、彼女にはスマホでメッセージを送った。
『今、家に帰ったから、これからログインする』
というふうに。
何か用事が残ってるんだろうか?
こうやって待ってても仕方が無いし、彼女がログインしてくるまで、俺一人で何かモンスターを狩っていよう。
ついでにユーノの所属国であるエルフの国方面に行ってみるのもいいな。
国境近くまで言っても、このステータスならソロでも、そうそう死ぬことはないだろうし。
それに彼女がログインしてきても土地勘があるので合流し易いだろう。
「よし、そうしよう」
俺は新装備で身を固めた姿で、隣国であるフロニカ王国方面へ向かうことにした。
◇
二時間後。
俺は道中に現れるモンスターを倒しつつ、フロニカ王国に向かって進んでいた。
モンスターと戯れるように、だいぶゆっくりと進んできたが、そろそろ国境付近である。
稼ぎもだいぶ貯まってきている。
「やっぱり、この辺りのモンスターはディニス周辺より美味しいなー」
所持金は前回の稼ぎと合わせ、そろそろ140万G近くに達しようとしている。
そんなふうに金が増えるのは良いことなのだが……。
気になることがある。
あれからユーノがログインしてくる気配が全く無いのだ。
「おかしいな……いつもならすぐに入ってくるのに」
一旦、ログアウトして直接、連絡取ってみるか。
でも、リアルで何か差し迫った用事が発生した可能性もあるな。
それだと、無理強いは出来ない。
ともかく俺は彼女に確認を取る為、一度ログアウトすることにした。
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