第8話 俺のステータスがぶっ壊れた ◆オンライン◆
そんな訳で俺はユーノに連れられ、彼女のお勧めだという狩り場にやってきていた。
「この辺りにポップするイビルバットがレベル上げに丁度良いと思うよ」
「へえー」
彼女が紹介してくれたのは町の近くにある浅めの洞窟。
そこに出没するというコウモリ型のモンスター、イビルバットが俺くらいのレベルには美味しいらしい。
それに防御力が低めで魔法による遠距離攻撃が主体の
推奨レベルも5~8という感じで丁度良い。
でも、
「俺はいいけど、ユーノにとっては美味しくない相手になってしまうんじゃないか?」
レベル10の彼女にとっては、かなり効率の悪いレベル上げになってしまう。
それに付き合わせるのは、ちょっと心苦しい。
「そんなことないよ。全く経験値が入らないってわけじゃないんだから。それに今日のお礼の事もあるしね」
「……お礼?」
言われて思い出す。
恐らく、下校時に不良から救ったことを言っているのだろう。
「寧ろ、そんな程度では足りないほどの事をしてくれたんだから、遠慮することないよ」
「そう?」
「うん」
彼女は嬉しそうな表情を浮かべた。
「じゃあ私が弓で一匹だけ釣ってくるから、ここで待ってて。連れてきたら魔法をお願いね」
「ああ、頼んだ」
洞窟の入口から奥の方を見渡すとイビルバットが複数飛んでいるのが見える。
子犬くらいの大きさはあるコウモリだ。
モンスターにしては小さいが、コウモリにしてはデカい。
というか気持ち悪い。
ステータス表示を見ると、どれもレベル8~9の格上モンスターだ。
慎重に行かないと死ぬ可能性があるぞ。
このゲームはプレイヤーがモンスターと戦闘をしている間、近くに他のモンスターがいるとアクティブ状態になって戦闘に参加してくる仕様になっている。
いわゆるリンクというやつだ。
だから意図せず大量のモンスターに囲まれてパーティが全滅ってことも良くある。
相当レベル差があって余裕がある場合以外は、一匹ずつ狩るのが死なない為の鉄則だ。
だから彼女は、そこから一匹だけターゲットを取って、俺の所まで連れてくるという。
イビルバット一匹を二人で相手すれば、ほぼ死ぬことは無いだろうから。
そんな訳で洞窟の奥へと向かったユーノの様子を見守る。
彼女は壁際に沿って慎重に目標へ近付き、弓を構えた。
こういう時、
充分な距離を取って、見極めながらモンスターを釣ることが出来るのだから。
すると、狙いを定めていた彼女が矢を放った。
スッと一筋の煌めきが宙を飛ぶ。
それが群れるイビルバットの一匹にヒットした。
――上手い!
他のイビルバットに気付かれることなく、一匹だけを反応させ、誘き寄せることに成功した。
彼女はそのまま俺の所まで駆けてくる。
「連れてきたよ!」
「おし!」
俺はすぐに杖を構え、ファイアの魔法を唱える。
火球が目の前に形成され、瞬く間に大きくなる。
「ファイア!」
叫んだ途端、火球がイビルバット目掛けて一直線に飛ぶ。
直後、
「グギャァァァ……」
イビルバットは断末魔の叫びを上げて爆散していた。
「え……?」
俺は目が点になった。
いくら弱いモンスターとはいえ、レベルでは格上だ。
それがファイアの魔法一発でやられてしまうなんて有り得ない。
元々、体力が少なめのモンスターなのか?
だとしても、そんなに弱かったらゲームバランスが崩れてしまう。
それに、これにはユーノも目を丸くしていた。
その反応から、やはり普通ではないのだろう。
目の前で起こった珍事に驚いていると、更に驚くべきことが身の上に起こった。
『パラッパッパッパー』
「!?」
それはレベルアップを知らせるファンファーレだった。
「ええっ!? 一匹倒しただけでレベルアップ??」
そんなに経験値の高いモンスターだったとは思えない。
それにこれまでレベル上げには結構な数のスライムを狩ってきたから、突然簡単にレベルアップしたように感じた。
ステータスを覗いてみると――、
[ステータス]
名前:ユウト 種族:ヒューマン
LV:6 職業:魔法使い
HP:250/250 MP:480/480
物理攻撃:101 物理防御:112
魔法攻撃:360 魔法防御:307
敏捷:124 器用:159
知識:294
[魔法]
ファイア〈火属性〉 Lv.3
クロスファイア〈火属性 全体攻撃〉LV.1
ブリザード〈氷属性〉Lv.1
サンダー〈雷属性〉Lv.1
[スキル]
鈍化 Lv.2
駿足 Lv.1
ファストスペル Lv.1
「なんだ……これ……」
確かにレベルは上がっているが……とてもレベル6とは思えない数値になってんぞ!?
レベル5からの上げ幅が凄い。
それに魔法もスキルも沢山増えてる。
最初から数値がおかしいとは思っていたが、ここに来てとうとう――、
俺のステータスがぶっ壊れた!?
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