第7話 本当にレベル10? ◆オンライン◆
俺は家に帰るなり自分の部屋に直行。
すぐにアビスを装着して、ノインヴェルトの世界へとダイヴした。
不良達から名雪さんを助けたあの後、彼女とゲームのことで意気投合して、ついつい話し込んでしまった。
その流れの中で、
「どうせなら今度と言わず、今日、家に帰ってからすぐにやらない?」
という話になったのだ。
俺がログインして降り立った場所は首都ディニスの正門前。
前回、スライム狩りを終えてログアウトした場所だ。
名雪さんとの待ち合わせ場所もこの正門前ということになっていた。
彼女はエルフ族らしいけど、既にこの人間族の国、ルマナントまで来ているということだった。
サービス開始二日目で他国まで足を伸ばしているとか、かなりの猛者だぞ。
名雪さん……外見は大人しそうに見えるけど、ゲームの中では結構大胆なんだな。
俺は町を行き交う
ちょっと早くに来すぎたかな。
一応、約束した時間まではあと十五分くらいはある。
暇つぶしに少しだけ道具屋でも見てみるか。
そう思って踵を返した時、目線の先に活発そうな顔立ちの金髪美少女が立っていた。
少女は俺と目が合うと、ピンと来たかのように駆け寄ってくる。
そして、そのまま――
「見ぃーつけたっ!」
抱きついてきた!?
「おわっ!? な、何??」
金髪美少女は俺の首に腕を回し、尚も強く抱き締めてくる。
最近のVR技術の進化は凄まじく、ちゃんと肌の温もりや柔らかさを感じるから気が気でない。
「桐島君でしょ?」
「えっ……まさか、名雪さん!?」
少しだけ体を戻すと彼女の顔が視界に入ってくる。
良く見ると長い耳がある。エルフだ。
そして、随分と朗らかな笑顔に包まれていたのですぐに分からなかったが、その顔立ちは確かに名雪さんの面影があった。
「この世界ではユーノだよ」
「ユーノ……」
彼女の頭の上に浮かぶアバター名と、リアルの彼女を重ね見る。
現実の大人しく人見知りの彼女からは想像も付かない笑顔に、俺はびっくりしてしまった。
しかも、普通にしゃべってるし。
彼女は俺の頭上に浮かぶ名前を見ながら言う。
「桐島君はリアルと同じアバター名なんだね」
「え? ああ、そうだけど」
名雪さんもじゃん!
と言いかけたが、押し留める。
それに俺の場合、アバター名を勝手に決められちゃったんだよな。
今だから思うけど、それも同期の影響なんじゃないかと思う。
ゲームがリアルに反映されるだけでなく、リアルもある程度ゲームに反映されているのかも?
「じゃあ早速、何しよっか?」
「うーんと、やっぱりレベル上げかな? 俺、まだレベル5だし。そういえば名雪……じゃなかった、ユーノは今、レベルいくつなの?」
「私はレベル10だよ」
「10!? もう、そんなに?」
このゲーム、レベルアップに必要な経験値と経験値稼ぎが結構シビアな設定になってるから、なかなかレベルが上がらないんだけど、それで昨日の今日で10とか凄くないか?
「昨日は寝てないし!」
彼女は満面の笑みでそう言って退けた。
「……」
名雪さんて……もしかして、かなりの廃ゲーマーなんじゃ……?
とはいえ、どうやってそこまで上げたのか気になる。
「ちょっとステータスを見せてもらってもいい?」
「うん、いいよ」
許可が出たので、俺は彼女の名前に視線を合わせ、ステータスウインドウを開いてみた。
名前:ユーノ 種族:エルフ
LV:10 職業:
HP:96/96 MP:52/52
物理攻撃:35 物理防御:35
魔法攻撃:21 魔法防御:19
敏捷:34 器用:27
知識:29
[魔法]
なし
[スキル]
スマッシュショット Lv.2
ホークアイ Lv.2
なるほど、こんな感じか。
職業は
彼女のリアルでの雰囲気だと、
ってか、思ったんだけど……このステータス、おかしくないか?
俺が違和感を覚えた理由。
それは数値の低さにあった。
これで本当にレベル10?
職業や種族の違いはあれど、レベル5である俺のステータスとあんまり変わらないんだけど?
ちなみの今の俺のステータスはこれだ。
[ステータス]
名前:ユウト 種族:ヒューマン
LV:5 職業:魔法使い
HP:101/101 MP:180/180
物理攻撃:35 物理防御:35
魔法攻撃:106 魔法防御:98
敏捷:41 器用:46
知識:87
[魔法]
ファイア〈火属性〉 Lv.3
[スキル]
鈍化 Lv.1
中には俺の方が勝ってる項目すらある。
どういう事だ?
「何かおかしな所でもあった?」
「えっ」
ステータスを見つめたままボーッとしていたから、ユーノが不安そうに尋ねてきた。
「いや、
「そう? 私、クラスチェンジが出来るようになったら真っ先に
「……」
目標は、もっと意外だった。
「で、準備はもうOK?」
「ああ」
「それじゃ行こ! 私、いい狩り場を知ってるんだ!」
彼女はそう言うと、突然、俺の手を握ってきた。
「!?」
バーチャルとはいえ、女の子に手を握られることなんて初めてだったので、かなり戸惑った。
「どうしたの?」
「え……いや、その……手……」
手を繋いだだけで動揺している、なんだか格好悪い男になっている予感がするが、ユーノはそんなこと全く気にしていないようで、寧ろ肩と肩が触れ合うくらい近くに寄り添ってくる。
なんか距離感とかおかしい気がする!
それにユーノ……いや、名雪さんてこんな積極的な人だったっけ??
俺が困惑していることに気付いているのか? そうでないのか?
彼女は上目遣いでこう言ってきた。
「こういうの……ずっと、やってみたかったんだ」
てへっ――と照れ臭そうに舌を出すユーノは、反則なくらい可愛かった。
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