第2話 酷い仕様だな ◆オンライン◆
『ノインヴェルトのステータスをリアルと同期させますか? Yes/No』
リアルと……同期? どういうこと……??
これまでやってきたゲームでこんな表記は見たことが無い。
正直、戸惑った。
これを広義に解釈するなら、プレイデータをクラウド上に保存するかどうかって事を聞いてきてるんじゃないだろうか?
「なら、これはイエスだな」
誤ってデータ消して悲惨な目には遭いたくないし。
この選択が今後の俺の人生に大きく関わってくることになるなんて、この時は知る由も無かった。
その項目を終えるとキャラクターメイキングに入った。
鏡のようなものが目の前に現れ、そこに自分の姿が映っている。
容姿はリアルの自分をキャリブレーションした姿が基本になるらしいが、ある程度美化補正がかけられている。
加えて髪型や肌の色、背丈、体格、性別なども変更可能なようだから、時間をかければ全く違う姿にもなれそうだ。
俺はキャラメイクにそんなに時間をかける方ではない。
見た目よりもゲームの中身の方が気になるからだ。
でも、せっかくだから背を少し高くして、体格もちょっとだけ良くしてみた。
容姿を決定した後は、初期職業の選択だ。
最初に選択出来る基本の職業は、
の四つ。
この基本職がある程度レベルアップするとクラスチェンジが可能となり、様々な関連職業へと枝分かれして行くことになる。
こういう時、俺は大体、魔法が使える職業を選ぶ。
なんでかって言うと、現実では出来ないことをやりたいからだ。
剣は現実でも振ることは出来るけど、さすがに魔法は使えたりしない。
そういう非日常の力に、どこか憧れを持っているらしい。
という訳で、迷わず
すると、入力を促すカーソルが宙に浮かび上がる。
「あとは名前か……」
どんなキャラ名にしようかな?
これから始まる仮想世界での新たな人生。
それに相応しい名前を考えていると――入力ウインドウに異変が起こった。
カーソルがひとりでに動き出したのだ。
しかも、勝手に名前が入力されて行く。
そこに表示されたのは――、
[ユウト]
の三文字。
「え……」
俺、なんも触ってないんだけど……。
ていうか……これ俺の本名じゃん!
俺の名前は
まさに、そのまんまだった。
「いや、さすがにこの名前はちょっと……。もっと格好いい名前に変えないと……」
『キャラクター名を決定しました』
「ぎゃーっ!?」
なんで勝手に決定した!?
名前変更の為に手を伸ばそうとした所、システムが決定を告げてきた。
そういえば種族選択とかの項目も無かったな……と思い出す。
鏡に映し出されたアバターを見る限り、強制的に人間に設定されてしまっているようだ。
これは最初からやり直した方がいいな。
そう思い、リセットしてみたが、キャラクター名を決定した所から再開するだけで、〝次へ進む〟のボタンが点滅していた。
どうやら変更が利かないらしい。
「酷い仕様だな……」
約束された神ゲーに一抹の不安を覚えながらも、このままでは何も始められないので仕方なく先へ進むことにした。
〝次へ進む〟のボタンに触れると、決定したステータスが表示される。
[ステータス]
名前:ユウト 種族:ヒューマン
LV:1 職業:魔法使い
HP:10/10 MP:30/30
物理攻撃:2 物理防御:2
魔法攻撃:10 魔法防御:9
敏捷:3 器用:5
知識:9
[魔法]
ファイア〈火属性〉 Lv.1
[スキル]
なし
どうやら初期の数値は職業に応じて自動的に割り振られるらしい。
特に変わった様子も無い、よくありがちなレベル1の数値。
色々、手間取ったがこれでキャラクターメイキングは完了だ。
あとは、目の前に表示されている、
『ノインヴェルトへ降り立ちますか?』
のボタンを押すだけ。
俺は胸が高鳴るのを感じながら、指先でそのボタンに触れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます