04 主人公との出会い
ファンクラブシステムを通じて、ウォルド様の旅の状況が報告される。
今日は、追手に追いかけまわされた、とか。
今日は、珍しい動物を見つけてしとめた、とか。
原作と違って、旅の様子はずいぶんにぎやかなようだった。
本来なら起きるはずのイベントが起きていなかったり、逆に起きていないはずのイベントが起きていたりもしていた。
だが、どちらにしても、ウォルド様が楽しそうなのが良かった。
「今日は、ウォルド様に食事をつくってあげましたまる。けれど私の押し、私のご飯をせんべい扱いしてくる件について」
「今日はウォルド様のお召し物を洗濯、すんすん。かぐわしいにほい。なんて事やってたら、ウォルド様にドン引きされた。嫌わないでー」
「今日はウォルド様の誕生日。なけなしのお金を作って、ケーキを手作り。爆発! ウォルド様に笑われてしまった。くそう。無念なりー」
知らされるものは、そんなものばかり。
原作のような孤高のウォルド様ではなくなってしまったけれど、楽しそうな彼の姿を想像すると心が温かくなった。
けれど、相変わらず勇気のない私は、遠くからウォルド様の事を応援するだけだった。
ウォルド様の力になりたいと思いつつも。そんな勇気がでてこなかった。
話が変わったのは、ウォルド様がこの村にやってきたころ。
話の序盤で脱獄したウォルド様は、多数の追手から追われる身。
彼は逃走劇の中で、身を隠す場所を探すのに苦労していたようだ。
私はなけなしの勇気を振り絞って、近くを通った彼らを呼び止めて、家の中にかくまうことにした。
ウォルド様は、見た目は少しこわかったけど、やはり優しく気高かった。
そんなウォルド様が、手を伸ばせば触れられるような近くにいる。
私はとても嬉しかった。
けれど、自分から話しかけるなんて、できそうにない。
目を合わせただけでドキドキするのに。
そんな中、ウォルド様は何かに悩んでいるようだった。
私は、そんなウォルド様を見ていられず、つい自分から、「一度だけ」と心に言い聞かせながら、話しかけた。
ウォルド様は、自分一人で全てを成すつもりだったらしい。
旅の中で、多くの人を巻き込む事になるなど、思いもしなかったようだ。
今では、あの謎の女性のおかげで、ファンクラブシステムを通じて、協力者がたくさんいる。
彼ら彼女らの協力は、ウォルド様の行動を大いに助けたが、深刻な事情に巻き込んでしまう事に罪悪感を抱いているようだった。
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