02 異世界転生
私はすぐにそのゲームにはまった。
そのせいで、兄から課してもらったゲーム機を返すのを何度忘れたか、数えきれない。
勉強も、最終的には持ち直したけど、一時期は成績が下がってしまった。
でも、だからといってあのゲームをやめようとはおもえなかった。
きっと、もの珍しさもあったのだろう。
今までゲームをしてこなかったから、強い刺激を受けてそれではまったしまったのかも。
けれど、私がそのゲームのキャラクター、ウォルド様に抱いた感情は本物だ。
彼の存在は私のすべてだった。
たとえ彼がこの世界に存在しない、仮初のキャラクターだとしても、彼の一挙一動が、その生きざまが私に希望をもたらしてくれた。
彼がいてくれたから、私はあの世界で充実した日々を過ごせたのだと思う。
願わくば、奇跡が起こるならば、次に生まれ変われるのなら彼がいる世界が良い。
そんなことも思った。
彼と共に歩ける、なんてそんな大それた望みを持つつもりはない。
ただ、彼のその歩みの一助になれば、私はそれで。
孤高の主人公、ウォルド。
友人を守るために、悪魔に喧嘩をうり、戦いを挑んだ気高い少年。
心臓発作を起こして倒れた私が、最後に脳裏に思い浮かべたのは、家族と、学校の友人と、ウォルド様。
会いたい。
世の中には、転生といった概念があるらしいけれど、もし運命の女神さまが私に微笑んでくれるのなら、彼に合わせてほしいと思った。
差し出せるものも、できる事もない、ただの女子高生だけれど、彼に会えるのなら。
そして、次に目を覚ました時、私は薄れゆく前世の記憶を脳裏にうかべながら、驚いた。
転生した私は、彼のいる世界に、生まれ変わったらしい。
けれど、私がいたところは、質素な家。
主人公であるウォルド様の関わり合いになれるような立場の人間ではなかった。
彼と触れ合い、言葉を交わすことなど、できるはずもないだろう。
それでもいい。
私はあの世界に生きていた時には抱けなかった強い希望を抱いていた。
世界に差別がはびこっている?
天使のふりをした悪魔が世界を支配しようとしている?
そんなのどうだってよかった。
私は、彼と同じ世界に生きている事が幸せだった。
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