第7話 データチェックは開幕の前に


「被害者生徒の名は井石英一いぜきえいいち。AIガンのブローカーかと思ったが、そうではないらしい」


 レッドは検分の資料に目を走らせると、一同を見渡しながら言った。現場から壱係へと戻った俺たちは、少ない手がかりを元に捜査会議を開始した。


「第一校舎の二年G組に在籍中だが、最近は授業への出席率が落ちていたようだ。かといってスクールマフィアとのつながりも見当たらない。内気で真面目なごく普通の生徒だったようだ」


「内気で真面目……か。本当にそうなら焼き殺されるなんてひどい最後にはならないはずだけど」


 咲がそう言うと、周囲の評判など何のあてにもならないと言わんばかりに鼻を鳴らした。


「マッドが言ってた脳がどうとかってのは、解剖しないとわからないのかな」


 リードが自分のこめかみを指さしながら言うと、レッドが「それなんだが、少し前にも脳みそが少ない死体が二、三あったらしい。AIガン依存症の余病かねえ」と返した。


「そう言えばマッドはどうしたんだ。検視に夢中で捜査を忘れたんじゃないのか」


 ヤサが呆れ声で疑問を口にすると、リードが笑いながら「いや、どうも知り合いにAIガン依存を研究してる教師がいるらしくてね。第三実験室の方に行ってるよ」と答えた。


「とにかく手がかりが少ない以上、捜査の方向性は二つね。AIガンのブローカーを探るか、似顔絵の美少女を探すか」


 咲がコピーした鉛筆画をかざしながら言うと、レッドが顎をしゃくりながら「女子生徒への聞き込みならリードがうってつけだろう」と言った。


「僕ですか。……まあ、構いませんけど」


「新人君の研修も兼ねて聞き込みに言ったらどうだ?優男が二人 そろって顔を出せば、大抵の女子生徒は口が軽くなるだろうよ」


 レッドがしたり顔で言うと「女子を軽んじるのもたいがいになさいな、レッド」と咲が苦言を呈した。


「そんじゃあたしとレッドはブローカーの方を探ってみるとしやしょう」


 ヤサがそう言うと早くも端末で何かを調べ始めた。俺が動くのをためらっていると、リードが「バリケードの一件じゃ活躍したみたいだね。期待してるよ、ルーキー君」と言った。


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