第六章 シュルティの物語 ラージャ・ラクシュミー・ラレ

陸上婦人戦闘団独立歩兵第一大隊長


 シュルティ・ラージャ・ラクシュミー・ラレ。

 パータリプトラ決戦後の山岳戦闘で勇名をはせた、陸上婦人戦闘団独立歩兵第一大隊長である。


 独立歩兵第一大隊はしばしの保養の後、再び戦闘にかりだされた。


 そのころマッラ王国王都のクシーナガラを攻略した陸上婦人戦闘団は、アヴァンティ王国の王都ウッジャイン攻めていた。

 しかしウッジャインなかなか落ちない、港湾側から攻撃した揚陸戦部隊もかなり苦戦しているようだ……


 ここでシュルティは……


     * * * * *


 シュルティ・ラージャ・ラクシュミー・ラレ……

 陸上婦人戦闘団独立歩兵第一大隊長である。


 ラージャ・ラクシュミーと呼ばれるように、ラクシュミーと呼ばれる二つの海洋国家の一つ、ガンダーラ王国に属するラージャ、つまり貴族の家柄、ラレ家の出身。


 このラレ家はその昔、ガンダーラ王国を支配していたが、敗れて山岳地帯の狭い範囲に閉じ込められた、ガンダーラ王家の辺境地の自治勢力として、大公家となっていた。

 虫がくるまでは……


 パータリプトラ決戦後の山岳戦闘で勇名をはせた、独立歩兵第一大隊はしばしの保養の後、再び戦闘にかりだされた。


 マッラ王国王都のクシーナガラを攻略した陸上婦人戦闘団は、アヴァンティ王国の王都ウッジャインを攻めていた。

 しかしウッジャインはなかなか落ちない、港湾側から攻撃した揚陸戦部隊もかなり苦戦しているようだ……


「貴官に来てもらったのは、ウッジャインを空から奇襲できないか、聞きたかったからだ」

 アニラ司令官の質問です。


「空からですか……」

「先ごろの山岳戦において、山頂狭隘地への強襲は見事なものだった」 

「しかしどこへ降下するのですか?ウッジャインは瓦礫の山、めぼしい建物も、執政官府の空爆でなにもありません、そこに降下といっても……四方八方から狙い撃ちにあいますが」


「やはり無理か……」

「敵は瓦礫や建物の残骸に身を隠し、徹底抗戦をしている、わが軍の機甲兵力を警戒し、防衛陣地を構築、市街戦に持ち込み有利な講和を目指しているようだ」


「講和?しかし聞くところによれば、無条件降伏以外はありえない、それも国王の処刑は絶対条件とか……」

「そのとおり……この戦いは徹底した総力戦、執政官府は敵の国土は何も残さぬつもりなのだ……最悪は敵国民の抹殺まで視野に入っている……」


「執政官の上位者によると、アールヴヘイムンの戦争とは『子供の戦争ごっこ』らしい」

「このように言われたのだ」



 ……あの者たちは、戦いを賛美するものと思っている、戦いの残酷さなど承知していない……

……生きるか死ぬかの、生存をかけるのが戦争、敗者は生きる資格がない、そううそぶいているのがこの世界、しかも負けても、生存できると思っている……


 ……現実を見せなければならない、虫に侵略され連戦連敗、そこに我らが手を差し伸べた、負けていないと考えている彼らは、所詮は子供の戦争ごっこをしているだけ……



「では敗者になればどうなるか、本当に生存ができない事態となる、我らが経験した『苦難の日』が、この地に再現される」

「日干し作戦はその前段階、ここで思い知らなければ、敗者に『苦難の日』がプレゼントされるわけだ」


「執政官府は不退転なのだ、執政官はその上部組織から厳命されている、今回、それでも抵抗するならば『最終解決』、虫がやってくる……」


「できれば避けたいですね……」

「私もそう思う、だから早急に、この戦いのケリをつけるべきと考えている、なにか良い手はないか?」

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