刀自(とじ)と女史(じょし)
「先ごろカマラ様が、サムラート様に『湯舟の謁見』で請願なされたのです」
「それでサムラート様のお許しがあり、フント租界に小さいですが、お屋敷が用意されたようなのです」
「フント租界なら、カマラ様も気兼ねなくやってこられます」
「ただお二人とも、一般女官としてサムラート様にお仕えいただくことになります、これが条件なのです」
「私の子供は娘のカマラだけになってしまったし……王家は傍系に移ったし……租界に引きこもるのも一つの考えね……」
「サムラート様の女官でもいいけど、いまさら、このような『おばあちゃん』が女官になれるのかしら……でもそうなると、王家からの援助は打ち切られるわ……」
「サムラート様にお仕えする女は、侍女と一般女官に分かれます」
「一般女官は色事なしで、お二人が任官なされるのなら、一般女官の刀自(とじ)と女史(じょし)の位となられます」
「刀自(とじ)は引退した女官に与えられる名誉職ですが、貢献大の一般の方々の身内に贈られることもあります、この場合、退職年金はつきませんが、刀自(とじ)加算として、ささやかですが金貨二枚、年収三百万の終身年金があります、カマラ様の貢献を認められたということです」
「女史(じょし)とは女官などが退職後、貢献大の者を、再度中堅幹部として採用する方がつく資格で、外部との折衝などを仕事とします」
「女史はハレムの外でも居住が可能で、自由恋愛もできます」
「金貨四枚、年収六百万です」
「ぶしつけながら私はジャーリアですので、お給金もそれなりにいただいています、カマラ王女もそれなりのお給金をいただいておられます」
「私たちがいかようにもいたしますので、ラージマータ様とララ様にご不自由はかけさせません、ご安心ください」
「それはいけないわ……カマラは娘だから迷惑もかけられますが、カーンティは違うわ!」
「ラージマータ様、私の今があるのは全てラージマータ様のおかげです!ですから御恩を返したいと思っております!」
「しかし……」
ここでララさんが、
「ラージマータ様、とりあえずフント租界に行きましょう、その後の事はカマラ様とご相談ということで……」
「サムラート様の女官になれば女二人、生きていく分には何とかなるでしょう、それにフント租界は女性だけの町、きっと住みよいと思います」
とにかくフント租界に行く、と決まりました。
カマラさんは側女待遇格子、カーンティも采女です。
二人ともオルゴールなどを所持していますので、
「カマラ様、お二人ともご了承いただきました」
「そうですか……なら申し訳ないけど、貴女のオルゴール、母に少し貸してあげてくれない?お顔を拝見したいわ……」
「ラージマータ様、カマラ様です」
ラージマータが手に取ると、小さい立体ホログラムが浮かび上がりました。
「カマラ!おぉカマラ!」
「お母様!これからいつでも会えるわ!お話もうかがえるわ!」
「フント租界の執政官府の職員にお願いして、二人を迎えに車を出してもらうわ、いつがいいかしら?」
「別に荷物もないし、身一つなのでいつでも良くてよ」
「では昼過ぎに迎えに行ってもらうようにするわ、私もいまからそちらに行くわ、三日後にはフントに着くわ♪」
「じゃあ、カーンティさん、ご迷惑をかけるけど母とララさんを頼むわ♪」
むわ♪」
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