迎賓館なんちゃって、肉じゃがもどき


「なんじゃ、腹の足しにならないものばかり、儂なんてこれじゃぞ!」

 どうだとばかりに差し出されたのが『秋ジャガイモ』。


「今年初めてとれたものだ、姉魔女さん、受け取ってくれ!」

 大量のジャガイモです。


「あら、美味しそうなジャガイモね♪」

 突然、一人の女が声を掛けます。


「ヴィ……サムラート様、このような場所へどうして……」

「いいじゃない、スジャータさんの報告書を読んだのよ♪そしたら『魔女っ娘広場』って、面白そうなイベントが紹介されていたのよね、その上、パールヴァティさんが視察するようなので、私もうろうろとついてきたわけ、いけなかったかしら?」

「歓迎します!」


「『迎賓館ワンプレート』、私もいただくわ♪当然ダーツでチャレンジ、目指すはタダよ♪」

 見事にど真ん中に命中させ、嬉しそうにタダの『迎賓館ワンプレート』をゲットしていましたね。


「ああ、そうだ、ねえ、そこの方、そのジャガイモ、私が全量、買おうと思うのだけど、売ってくださる?」

 なぜか、突然、ジャガイモを買い占めたヴィーナスさん。


「私も出店するわ♪」

 凄い速さで、ジャガイモをむき、どこからか玉ねぎを取り出し、くし切りにしていました。

 ジャガイモと玉ねぎをまぜ、なにやら魔法を使い、一気に茹で上げ、さらに別に取り出した大豆肉のフレークに和風の味付けをして、これも一気に魔法で加熱、加熱した二つの材料とゴマ油を混ぜて……


「なんちゃって、肉じゃがもどき!」


 勝手にテーブルを出し、その上に『なんちゃって、肉じゃがもどき』を入れた、でっかい寸胴をおいて、勝手にお店を始めたのです。


「さあさあ、美味しいよ!そこのお兄さん、食べてみてよ!いまなら私がウインクしてあげるわ!」

「!」


 超絶美人のヴィーナスさんがウインクなどすると、瞬く間に男どもの大行列です。


「むさい男はお代はそのままだけど、可愛い娘さんと、お子様たちは10円で売ってあげるわよ、そうそう、迎賓館ダーツと同じでもいいわよ、男以外だけどね♪」


「姉さん、それはひどい!」

「ウインク付きだからいいでしょう?ね」

 ここでもウインク、男たちは盛大に鼻の下を伸ばしています。


 この『迎賓館なんちゃって、肉じゃがもどき』、大評判でした。

 ついでは、その辺の高原野菜を切り刻んだ、『フロッグ・サラダ』なんてのも売り出していたヴィーナスさんです。


 この日、ヴィーナスさんは、『魔女っ娘広場』イベントを盛り上げるだけ盛り上げて、帰っていきました。


「大変な一日だったけど……よかったわ……」

 パールヴァティさんも、そんな言葉をつぶやきながら、お帰りに……


「今日は千客万来、とんでもなく忙しかったわ……でも何だったのかしら……」

 チャンドラさんがつぶやくと、

「何か意味があったのですよ、でも私たちには関係のないことよ!」

 タラさんが答えます。


「そうね、それより、『なんちゃって、肉じゃがもどき』と『フロッグ・サラダ』、ヴィーナス様にお願いして、すこし残していただいたのよ♪いただきましょうよ♪」


 それはとても美味しかったのです、詳細なレシピが書かれたメモも置いてありました。


 しばらくして、アプサラス地域の統一した議会が設立され、ネットワーク加盟の交渉が執政官府とはじまったのです。

 執政官府との戦争終結から五十五年たっていました。

 ヴィーナスさんの一声と、スジャータ執政官の報告書が、ネットワーク審議会を動かし結果です。


 二人は相変わらずで、チャンドラさんは迎賓館の管理人を続けています。


 FIN

 

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