魔女姉妹
「姉さん、久しぶりね、今日から三日間お世話になります」
「タラ、元気にしていた?」
「この通り元気よ、そうそう、お土産なんて持ってきたわよ♪」
「私に?何かしらね?」
「マルスのお菓子でね、パンプキンロールケーキ!この間いただいたの!」
「いただいた?誰から?」
「ウルヴァシー様よ!」
「えっ、どうして?」
「私ね、この間、ウルヴァシー様の御供をして、マルスに行ったの♪」
「でね、ご一緒にお茶なんてしたの♪でね、その時、このケーキを食べたの♪」
「だから姉さんにも食べてもらおうと思って、取り寄せたの♪」
タラはウルヴァシー付きの侍女、こちらも何度も転勤話が持ち上がりますが、なんといってもウルヴァシーの侍女にと固辞しています。
これには訳があるのです。
チャンドラさんが目も当てられない病にかかり、タラが決死の覚悟でヴィーナスさんに訴えたことがありました。
その時、ウルヴァシーさんがチャンドラさんの病気を嫌がりもせず、親身に世話してくれ、以来二人の姉妹はウルヴァシーさんに恩義をかんじているようなのです。
そしてウルヴァシーさんは、この迎賓館での姉妹に対する行いをヴィーナスさんに評価され、以来、パールヴァティに次ぐ、アプサラス・ハレムの次席と認識されるようになったのです。
ウルヴァシーさんはそのため、この迎賓館をこよなく愛しているようです。
そしていつのまにか、この迎賓館の管理はウルヴァシーさんの管轄となり、それもありチャンドラさんとしては大恩あるウルヴァシーさんの為というのも、長く執政官府迎賓館管理人の職を続けている理由の一つではあるようです。
「もう!タラったら、幾つになったの?小娘のような喋り方はやめなさい!」
たしかにタラは十分におばあさんの年齢ですが、なんせ寵妃ともなれば、歳はとりませんからね、気持ちは娘さんのままの方が多いのです。
「姉さんったら、年増なんだから」
「誰が年増よ!」
「ほら、目じりに小じわが」
「えっ」
あわてて、鏡なんて見るチャンドラさん。
「冗談よ冗談、姉さんは若くて綺麗よ」
「もう!」
おっとりとした姉のチャンドラさんと、おきゃんな妹のタラさんの会話は、いつもこのような物のようです。
しかし、大変仲の良い姉妹ではあります。
「そうそう、ウルヴァシー様が『魔女っ娘広場』を見に来るっておっしゃっていたわ」
「えっ、ウルヴァシー様が!大変、お風呂の掃除がまだだったわ!お部屋のお掃除もまだだわ!」
「タラ、貴女、手伝いなさい!」
「いいわよ、姉さんのいつものことだから」
魔女姉妹は、ばたばたとお掃除をはじめたのです。
そう、チャンドラさん、お淑やかで上品で文句なしの女性なのですが、『あわてんぼう』なのですね。
当然、姉に似てタラさんもしっかりしているようで、『あわてんぼ』さんなのですね。
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