魔女っ娘広場


 二人でドタバタと迎賓館の掃除を終わったのが日が沈み始めるころでした。

 

「ふう、やっと終わったわ……お腹減ったわ……姉さん、何かない?」

「夕食を作るけど、それまで待てる?」

「絶対・ま・て・な・い!」


「しかたないわね、たしか非常用の備蓄食料があったわ、これを食べましょう」


 ?


「期限切れ間近の物は管理人が頂けるのよ、知っているでしょう?」

「そうだったっけ?」


「そうか、タラは知らないわよね、五年ほど前に決まったのよ」


 迎賓館の非常用備蓄食料といっても主に乾パンです。

 なぜ乾パンというと、レイルロードの物資補給部が簡易ステーションにでも食事が出来るように、『コッペハウス』という施設を作り、そのランチ用として大量製造しているもので、こんな辺鄙な星の末端の施設にも配給されるようになったのです。


 副食用として、『ミートメンチ』と『ラタトゥイユ』の真空パックの物も配給されています。

 これらはもともと原料単価もやすく、その上の大量製造ですから、ネットワーク世界の末端施設にばらまいても、なんてことはないようなのです。

 

「もう、姉さんは!」

 ここでもチャンドラさんの『あわてんぼ』さんは健在ですね。


 乾パンとミートメンチとラタトゥイユで、軽い間食をしている二人。


「ねえ、魔女っ娘広場に私たちも何か出さない?」

 タラさんが、いつもの思いつきを口にします。


「出すと云っても……なにを出すの?」

「この食事よ!乾パンとミートメンチとラタトゥイユで、簡単な軽食になるわ!」

「でも迎賓館の備品よ」


「期限切れ間近の物は管理人が頂ける、といったじゃないの」

「そうだけど……」

「ではウルヴァシー様に聞いて見るというのはどう?」

「それなら……」

「決まりね♪」


「そろそろウルヴァシー様が来る頃よね、私、夕食の準備をしてくるわ、貴女、お風呂の準備をしてね」

「分かったわ」


 チャンドラさんはチャパティを焼き、サモサを揚げ、キョフテなんて作っています。

 本来、ウルヴァシーさんは王族の一人、こんな家庭料理みたいなものは食べないのですが、ヴィーナスさんは庶民料理が大好き、で影響を受け、この頃このような料理を好むようになっているのです。

 ただ、ご自分で料理なんてのは無理のようです。


 食後のデザート?

 タラさんの持ってきた、パンプキンロールケーキのようですね。


 ロビーに誰か転移してきました、ウルヴァシーさんのようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る