カウシャーンピー沖合、練習艦隊を発見


「マツヤ王国のヴィラータナガラ港に、入港可能か問い合わせしてくれ、カーシー王国でもあのようでは、マツヤ王国では無理かもしれない」

 

 事実、マツヤ王国からの返事で、

 

 ヴィラータナガラ港の入港は、現在港湾施設の大規模拡張工事中で不可能、沖合に停泊する分には可能、亡命申請はマガダ王国との国際関係上、認められない。

 

 というものでした。


「亡命申請は不可か……沖合に停泊する分は認めるか……機雷があるやもしれんな……しかし執政官府の人員を収納しなくては……」 


 現地の出先機関との交信は可能でしたので、収納人員を聞くと五名ほど……

 テンダーボートに乗り、夜間に脱出するとの返事でした。


「夜間に脱出?相当情勢が悪いようだが、なぜ沖合の停泊は認めるのか……やはり機雷があるのか……」

「どこの誰が敷設したのか不明……という訳か……」


 ネマ船長は、指定の泊地の場所を勝手に変更しました。

 そして無事に人員を収納、錨を上げたのです。


 事実、指定された場所には機雷が敷設されていたのです。

 ヴァッサ王国海軍の機雷敷設潜水艦、サフィール級が全力で敷設したようなのです。


「つぎはヴァッサ王国だが、カウンシャーンピーは無理ではないか?」

「とりあえず入港可能か問い合わせをしてくれ」


 返電は不可、亡命申請は却下、領海にも入るなということでした。

 執政官府の人員は国外追放とするので、領海外で引き渡す、ということです。


「仕方ない、指定の海域に向かう、警戒を緩めるな」

 

 『ほうこくまる』が指定海域に到着すると……婦人海上戦闘団の艦艇が遊弋しています。

「友軍です!第二揚陸戦隊と練習艦隊です!」


 発光信号で、『到着を祝す』といってきてくれました。


 第二揚陸戦隊の十二隻の一等輸送艦特々が廻りを取り囲んでくれます。


「船長、特々なのですが、回天四型改を全艦積んでいるようですが……」

「本当だ……艦隊決戦でもする気なのか……」

 回天四型改とは巨大な遠隔操縦魚雷で、一発で戦艦クラスを撃沈できる代物です。


 そうこうしていると、ヴァッサ王国海軍が執政官府の人員を運んできました。

 乗せてきたのはクールベ級練習戦艦です。


 このクールベ級は四隻あり、二隻はこの時点で練習艦に改装されていました。

 残りはその後、一隻は執政官府の機雷封鎖からの脱出時に座礁、別の一隻がアールヴヘイムン条約加盟国連合艦隊に参加したのですが、このヴィーナスさんの艦隊に撃沈されたのです。


「クールベ級練習戦艦に乗せてくるとは……」

 練習戦艦といっても主砲は健在です……


 発光信号で人員を引き渡すので、カッターをよこせといってきました。

  

「カッターを下せ!」

 人員を引き取りにカッターが下され、殺気の満ちた海面を漕いでいきます。


 何事もなく引き渡された人員を受け取り、カッターが戻ってきました。


 クールベ級練習戦艦が動き出し、『ほうこくまる』の真横を通り過ぎていきます。

 副砲が照準を合わせています……

 こちらの練習巡洋艦も主砲の照準を、クールベ級に合わせています……


 そのまま何事もなく、クールベ級練習戦艦は戻っていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る