一難去ってまた一難


「やれやれ……カッターを収容せよ」


 練習艦隊の旗艦から、「ネマ船長の来艦をこう」と手旗信号があります。

 

「今度は何なのか……」

 旗艦である、練習巡洋艦『かしい』に乗艦したのです。

 長官公室に通されると、ヴィーナスさんがいました。


「貴女がネマ船長?パールヴァティさんから聞いたけど、私の女になるの?」

 ネマは相手がヴィーナス様と、初めて知りました。

 

「歴戦の船長さんと聞いているけど、可愛らしい方ね♪」

 などといい、しっかりネマの胸など握っています。

 そして耳元で、

「で、食べてもいいの?」

 などとも言ったのです。


「どうぞ、ご賞味ください!」


 長官公室にピンクの雰囲気が漂ったわけです……


 喜色満面で帰ってきたネマ船長。

「船長、嬉しそうですね」

「そうか?ヴィーナス様にご挨拶できたからかな……」

「それで……おめでとうございます」


「なぜ目出度いのか?」

「呼ばれた以上はお手付きになったのでしょう?色気がにじみ出てますよ」

「色気?」

「そう、色気、だだ漏れです!」


 ネマ船長、格子になったのです。


「船長、友軍の艦隊が動き始めました」

「そうか、我らも次の目的地に行くか」


 つぎはアンガ王国のチャンパー港、ここは問題なく寄港、問題なく人員を収容、ただ物資の補給はなかったのです。

「亡命は拒否されたな……」


 アンガ王国海軍って小さいのですよ。

 旗艦の装甲巡洋艦ヴァスコ・ダ・ガマって三千トンですからね、主砲も二十.三センチ(四十口径)単装砲二基ですから、『ほうこくまる』のほうが強力なのです。

 あとは千三百トンクラスのヴォウガ級駆逐艦が五隻、デルフィム級とよばれる潜水艦が三隻いるだけ、これではね。


「チャンパー港は問題なかったな、あとはコーサラ王国のアヨーディアーによるだけだ」

 コーサラ王国はアンガ王国と同様、反執政官府までにはなっておらず、アヨーディアー港の対応も アンガ王国のチャンパー港と同じと判明しています。


 アヨーディアー港に入港し、チャンパー港と同じようになり、無事に出航した『ほうこくまる』

「やはり、何事もなかったか……」

 すこしホッとしているネマ船長なのです。


 しかしアヨーディアー港からコーサラ王国領海を出たところで、ヴァッサ王国海軍のルドゥタブル級に襲撃されたのです。 


「船長!潜水艦です!音紋からヴァッサ王国海軍のルドゥタブル級です!四隻います!」


「対潜誘導魚雷用意!」

「撃て!」


 これまでの戦闘経験がものをいったようで、たちまち二隻を仕留めた『ほうこくまる』。

「左舷後方より雷跡六!」

「後部機銃、本船左舷後方海面を連射!弾の無くなるまで撃て!」


 水柱が六つ上がりました。


「敵潜水艦、音紋二途絶えました!」


「続けて対潜誘導魚雷用意!」

「撃て!」


「敵潜水艦、音紋一途絶えました!」


「敵潜、浮上します!」

「砲撃するつもりのようです!」


 ルドゥタブル級は四十口径十センチ単装砲を一門装備しています。


「砲戦用意!」

 前後の短二十センチ砲が照準を定めます。

「距離五千メートル!」

「撃て!」


「左舷船首に被弾!火災発生!」

「直ちに消化せよ!」


「初弾、敵潜を挟夾!」

「連射せよ!」


 敵のルドゥタブル級はスクラップ状態、乗組員が海に飛び込んでいます。


「本船はマハラバードへ帰港する、カッターを一隻、置いていけ」


 『ほうこくまる』は任務を終え、帰港の途に就いたのです。

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