やはり亡命拒否


 まずシューラセーナ王国のハスティナープラ港を目指します。

 このあたりの海域はパンチャーラ王国海軍のサーモン級のうち、三隻ほどが遊弋しているとの情報があります。

 

 一度、シューラセーナ王国海軍の、フロリダとユタの戦艦二隻よりなる艦隊に遭遇、執政官府旗を降下して敬意を表すと、答礼をして離れていきましたが、十二インチ砲は照準を定めたままでした。


「ふう、何とか離れてくれたか……それにしてもひどい嫌がらせだな……」

「潜水艦に注意せよ、先ほどの艦隊が当方の位置を知らせているはずだ!」


 ネマ船長はハスティナープラ港への航路を急遽変更しました。

 一旦チャルーサダ方面へ南下し、北上してハスティナープラ港を目指したのです。

 チャルーサダ軍港で物資を補給、太陽光発電衛星から受電して電動エンジンだけ使用し、速力八ノットでゆっくりと航海したのです。

 

 敵は本船が最大速力二十一ノットで、最短航路を進むと思っているはず……裏をかければいいのだが……


 しかしあと少しのところで、哨戒任務についていた旧式のカシャロット級に発見されたのです。

「潜水艦発見!」

「対潜誘導魚雷用意、本船は射程距離は五千五百メートルまで接近する!」

「五千五百メートルです!」

「右舷対潜誘導魚雷用意、一本だけ発射、そのまま退避せよ!」


 水面に水柱があがります。

「ソナーの反応なし、命中です!」


「サブのバイオ燃料タービン、予備の水素エンジンも始動、全速でハスティナープラ港へ向かう!」

 二十八ノットでハスティナープラ港に近づき、入港と乗客女性の亡命の申請すると、入港は許可するが亡命は却下するとの返事でした。

 

「どういたしますか?」

「とにかく入港しろ、ハスティナープラ租界の人員を収容しよう」


 ハスティナープラ港に入港するにも接岸も拒否され、沖合に投錨した『ほうこくまる』。

 次々と小型ボートに乗って租界の人員が避難してきます。


「周囲の船舶に注意しろ!いつでも発砲できるようにしろ!」

「緊急出航できるようにしていろ!」

「舷梯(げんてい)を下せ!」


 厳戒態勢で租界の人員を収容した『ほうこくまる』は、すぐに出航準備にかかります。

 一応、無事に出航した『ほうこくまる』は、次の目的地カーシー王国のワーラーナシー港に向かうのです。

 シューラセーナ王国への亡命希望者は帰るところがほかになく、執政官府がなんとか身の振り方を考えてくれるようです。

 

 食堂は大混乱です。

 着の身着のままで逃げ出したようで、ハスティナープラ租界にシューラセーナ王国は物資の搬入を拒否、食料不足になり、食事も満足に食べられなかったようです。


 三名の配属を受けた食堂ですが、人手が足りないようですが二十四名の亡命希望者が手伝ってくれるようです。

 

 ……さてカーシー王国のワーラーナシー港へ向かうが、ヴァッサ王国海軍のスルクフが遊弋していると情報が入ってきたが……

 まさか砲撃をするとも思われないし……やはりルドゥタブル級を警戒すべきか……


 スルクフとはヴァッサ王国海軍が誇る巨大砲撃潜水艦です。

 二十.三センチ連装砲を搭載しており、装甲などない『ほうこくまる』など一撃で撃破できます。

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