フロッグ・スパゲッティ


「そういえば……たしかスマン様が迎賓館に宿泊すると聞いていたわ……昨日から三日とおっしゃっていたような……」

「スマン様ってあの『テンプリンセス』の?」

「私の叔母様になる方よ……お父様の妹様なの……」 


 実際この時、スマンは26歳なのです。


「じゃあ、ご挨拶がてらに執政官府の迎賓館に行き、そのついでにカウラパパに寄るといえば、外出の許可も簡単ね♪」

 執政官府の迎賓館は、カウラパパの崖のすぐそばにあるのです。

 行く気満々のウルミラの提案です。


 三人はすぐに行動を起こします。

 ランチはそのままランチボックスにいれ、ラージコーヒーは水筒にいれ、制服のまま迎賓館に向かいます。

 なんせ『テンプリンセス』へご挨拶するわけですから、制服は一応、礼服扱いなのですね。


 三人は途中で、フロッグの名物料理でもある、フロッグ・スパゲッティのお店につかまります。

 テイク・アウトもありますので、そしてスマン様のお土産用に一つ、ご購入ですね。


「美味しかしら♪」

「フロッグの名物料理の一つと、後輩の方が言っていたわよ♪」

「私も聞いたわ、香辛料が強烈に入ったドロッとしたソースがかかっているらしいわよ♪」


 出てきたものは……

 強烈な胡椒のような香辛料が、一杯かかっているスパゲッティは、まだまだお子様の三人の口には合わなかったようです……


「うぇー、あんなに香辛料が入っているなんて……もう、決めたわ!フロッグのスパゲッティは絶対に食べないのだから!」

「私も同じ!」 

「私も!」


「ねぇ、フロッグ・スパゲッティをスマン様の手土産に買ったけど……あれでは……」

「あそこにジェレビ――インドから中東、北アフリカあたりの揚げ菓子、ドーナツ状でサトウのシロップにからめる、ネパールではジェリと呼ばれる、ウィキペディアより――が売っているわよ!」

「別に珍しくないけど……でも口直しに食べませんか?」


 三人はこのジェレビを購入、どうやら、このフロッグのジェレビは、テラで云うところのジェリのほうのようで、少しばかり三人の知るジェレビではないようです。


「美味しい!」

「あっ、本当に美味しいわ♪」

「これをスマン様の手土産にしましょう♪」


 買い食いなどしたものですから、30分のところが、一時間ほど余計にかかって、目的の執政官府の迎賓館へ。


「小さい建物ね、もっと大きな建物と思っていたわ、だって迎賓館にもなるのでしょう!」

 たしかに小さいコテージのような建物です。


「まぁ、それはさておいて、ラーニーの出番よ、スマン様にお目通りをお願いしてきて」

 迎賓館の呼び鈴を鳴らしますと、しばらくして綺麗なジャーリアさんが出てきました。


「どちら様でしょうか?」

「私はアプサラス・レディス・スクールの生徒で、マハーラージャー・ディラージャ・バハードゥル・クマーリー・ラーニー・ヴァツサ、叔母様である、マハーラージャー・ディラージャ・バハードゥル・クマーリー・スマン・ヴァツサ様にご挨拶に伺いました」


 と、そこへスマンが出てきて、

「やはりラーニーなのね、どこかで聞いた声がしたと思ったわ♪」

「今日は学校が『半ドン』なので、カウラパパ観光も兼ねて、お友達とご挨拶に来ました、これは大したものではありませんが、どうぞ」

「ラーニーも気を遣う女性になったのね、嬉しいわ♪」

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