パータリプトラ決戦
このことでヴィーナスさんは、後日、相当に百合の会議で吊るしあげられることになります。
そもそも、ヴィーナスさんが抱いたら、側女、つまりは寵妃となるのですが、百合の会議の事前の内諾がいるのです。
今回、イシスさんが段取りしたものですから、ヴィーナスさんは内諾があるものと思っていたわけです。
女孺(にょじゅ)とし、即座に抱いて寵妃……と考えていたようですが……女孺(にょじゅ)任官だけが内諾されていたわけです。
『抱かれた女』が『女孺(にょじゅ)』という、『抱かれるための女』のカテゴリーに存在するのは、当然矛盾するわけです。
結局、『抱かれた女孺』を追認することになり、ここに『格子』という階級が誕生するわけですが、今回ばかりはイシスさんも吊るしあげられたのです。
まぁ、アニラは関係の無いことですがね。
女孺(にょじゅ)という以上、ヴィーナスさんの女官であり、アニラの体の傷はあっさり消えたのです。
しかも第六序列という魔法が使えるようになります。
これは自己を中心に十五立方メートルに魔法を行使できるのです、その上、なんとか『よりしろ』が使えます。
使い方はヴィーナスさんがインストールしてくれました。
「これで『私のアニラ』が困ることはないでしょう、パータリプトラでは味方を守ってくださいね」
アニラは第六序列という魔法が、この世界ではありえない『力』を秘めていることを理解しました。
アールヴヘイムンでは、魔法というのは空想の産物と思われているのです。
アニラは、この力をパータリプトラの地で、惜しげもなく使おうと決意したわけです。
ハスティナープラ防衛のために揚陸戦旅団を当て、第一機械化歩兵師団、第二機械化歩兵師団、機甲旅団を率いて、アニラはパータリプトラに進撃を始めました。
装備は最新のものが支給されています。
また新編成された軍司令部直轄部隊も、幾つか戦闘序列に組み込まれています。
とくに機甲旅団には、粘着型振動破壊弾の一式中戦車改ではなく、三式中戦車改となっています。
主砲は七十五ミリ砲で、四十七ミリ砲よりスケールアップ、粘着型振動破壊弾も威力が増しています。
アニラ旗下の婦人陸上戦闘団機甲部隊は、パータリプトラ近郊で会敵したのです。
師団砲兵は機動九一式十糎榴弾砲、サーモバリック爆薬をつめた砲弾を打ち出せます。
勿論ナーキッドの技術満載ですから、威力は保障できます。
敵は機動九一式十糎榴弾砲の射程外に司令部を置いていました。
アニラの部隊には、九六式十五糎榴弾砲改などを装備した、機械化独立重砲兵大隊が軍司令部直轄として配属されています。
この部隊の重砲が威力を発揮しました。
敵後方を砲撃、機甲旅団の三式中戦車改が突撃、敵のルノーFT17を撃破、敵砲兵陣地を蹂躙、第一機械化歩兵師団、第二機械化歩兵師団で敵歩兵を掃討したわけです。
「アニラ准将、完勝です」
部下が嬉しそうに報告してくれますが、アニラの顔は優れません。
「敵の残存部隊はどこにいるか!」
敵司令部はまだ健在、戦場を離脱したようなのです。
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