第19話 雪の街の最後の夜
さて、場面は引き続き雪の街ソルである。そして現在、子供達が今興味を示している事柄などは、まぁこんな感じで成長著しく。
それを伸ばそうと、勉強やら遊びやらの時間は、クエスト進行の合間に幾度か取られていて。
お昼ご飯の後や、夕方などに結構まとまった休憩時間を取るのだが。その時は子供達は、元気に街中を走り回って遊んでいたり、夫婦に勉強を教えて貰ったり。
遊ぶ時は姉妹とても仲良く、見ていて和む。パワーそのもののような無邪気な姿、こっちまで元気を分けて貰えそうなのだが。
勉強を教える段になると、教える方がパワー疲れする場面も。
この街で借りていたコテージは、完全に祥果さんのお気に入りとなっていて。たった数日の滞在だと言うのに、部屋の飾り付けは日に日に凝って行く有り様だったり。
さらにコテージの外は、子供達の作った力作がずらりと立ち並んで荘厳ですらある。雪だるまに始まって雪ウサギや雪ドラゴン(?)、ネネの作った良く分からない生き物まで。
本当に残して行くのが勿体無いと、親バカ心で思ってしまう程。
子供達の想像力は、大人が思うより凄いのだろう。コテージ脇に付けられた馬車は、子供達によって秘密基地へと変わってしまっていた。
コテージ内から色々と品物を持ち出して、馬車の中を装飾していたり。
どうやら祥果さんも、それに一役買っていたらしいのだが。自作の布飾りやらクッションやら、進んで子供達に提供して。知らずに覗き込んた央佳は、かなり度胆を抜かれてしまい。
そこはまるで別世界、寒さの入る隙すら無い様な。
「央ちゃん、私はずっとマイホームを夢見てたんだけど……やっぱり子供がいないと、その夢は中途半端だって気が付いたよ!
でも私、4人も産めるかなぁ……?」
「祥ちゃん、あんまりリアルとごっちゃにしない方が……そもそも俺の稼ぎだけで、家族6人養えるのかなぁ?
もっと仕事頑張らないとな、家族の大黒柱は大変だ……」
こんな会話も、3日の内には何度か交わされる始末。段々と、向こうとこちらの世界の区別がつかなくなって来た感があるけれど。
一緒なのは、毎日があっという間に過ぎて行く事。
子供の相手やギルドとの遣り取り、クエスト消費や日常の些末事に気を取られている間に、いつしか日が暮れている有り様だ。己の置かれている境遇すら、改まって考えている暇などない。
そんな忙しさに、逆に救われている気がしないでもないけれど。
とにかく子供達の存在には、本当に助かっていると央佳は思う。戦闘面はもちろんだが、こんな境遇に陥った自分と祥果さんの、心の隙間を埋めてくれている。
改めて、そんな事を考えた雪の街での3日間だった。
「さて……この街でのお仕事はもう終わったから、明日はまた馬車での旅になるからね。寝る前に、この街で一番印象に残った事を発表しようか?」
「あ~~っ、それは面白いねぇ……私は魔法? をいっぱい覚えた事と、みんなと一緒にクエストをいっぱい頑張った事かなぁ?
勉強もたくさん進んだよねぇ、みんな頑張ってくれたよ♪」
一番手に名乗り出た祥果さんは、楽しそうにそう語るのだが。全然1つに絞り切れていないので、全部が楽しかったと解釈せざるを得ない。
今は皆がベッドに寝転がって、灯りもランタン一つに落としている所。ネネなどは、もう既に眠そうな顔付きで、央佳の隣で目をこすっている。
それに気付いた央佳が、ネネに何が楽しかったか尋ねると。
「……姉っちゃとぉ、いっぱい雪遊びしたのが楽しかった……」
「面白かったねぇ、雪遊び! この街初めてだったから、私も興奮したよ!」
「メイとネネが、一番張り切って雪だるま作ってたもんね……私はやっぱり、お父さんに装備を選んで貰った事かなぁ……?」
嬉しそうにそう告げるルカは、実はその後スキル振りも手伝って貰って、今やいっぱしの前衛キャラである。戦闘訓練も少ししたけど、近くには弱い敵しかおらず。
その点少し物足りないが、まぁすぐに実践で存分に試せる日も来るだろう。潜在能力は抜群な娘なので、きっと優秀な前衛戦士になるに違いない。
親バカと言うよりも、これは純然たる事実。
メイとネネは、初の雪遊びがこの上なく楽しかったみたいだ。姉妹で雪だるまを作っただけでなく、クエの報酬で何故か小型のソリまで貰えてしまって。
それを使って、街の外れの坂道で姉妹揃ってソリ遊びに興じたのだ。四女のネネも果敢にチャレンジして、結構楽しんでいた様子。
人見知りな幼女だが、スピード系の遊びは平気な様子。
それからスケートも、一度だけ家族で遊びに赴いたのだけれど。全員が氷の上を滑るのは初だったのだが、祥果さん以外は10分もあれば何とか滑れるようになって。
実はこの遊びチケットも、クエスト報酬で貰ったモノ。人数分には足りなかったが、スケートと言う遊びに姉妹が興味を示したので。
それならばと、家族で足を運ぶことに決めたのだった。
目的地のリンクは、完全に野外で元はただの池なのは明白だったけど。一応は休憩所だとか貸しスケート靴などの施設は、NPCによって運営されていた。
そこでは甘酒などの、甘くて暖かい飲み物も売っていたりもして。ただ、この世界の常識に則って、残念ながら味はイマイチだった。
とは言え、氷上遊びもソリと同じく姉妹は充分に楽しんだ様子。
それはアンリも同じらしいが、照れているのか三女からの発言は聞こえて来ない。その代わり、隣の祥果さんの耳元でヒソヒソ内緒の打ち明け話。
それを聞いた祥果さんの代弁によると、アンリは悪者をやっつけたのが一番面白かったらしい。どうやら裏通りのクエで、父親の後をこっそりついて来た時の事を言ってるみたい。
我が子ながら末恐ろしいなと、央佳の正直な感想。
その後も、起きている面子で最近の出来事を語るのが暫くの間続いた。早々に撃沈したネネを気遣いながら、小声でお互いの思い出を話し合う。
それもいつしか静かになって行き、最後に起きているのは両端に寝ている央佳と祥果さんのみ。そっとお休みを囁き合って、やがて2人も夢の住人へ。
こうして“水と氷の街”ソルの最後の夜は、ゆっくりと更けて行った。
――最後の最後に、蛇足的に祥果さんとルカの新しく覚えたスキル紹介。
***祥果*** 種族『幻』♀
種族スキル《幻身》敵の攻撃を避けやすい
《幻視》敵に見付かり難い
《MP量up》MP総量が上がる
《幻痛》魔法攻撃力up
《幻律》魔法範囲up
幻スキル《幻突》……防御力無視の攻撃魔法
《虚仮嚇し》……対象の敵に恐怖を与える
《幻水想花》……対象のMPが徐々に回復
《桜華春来》……対象のHPを回復/遠隔攻撃から完全防御
《震振打針》……対象をスタン・鈍足化
水スキル《ヒール》……対象のHPを回復
《ウォーターシェル》……対象の防御力up
《ウォーターミラー》……対象の魔法防御力up
《フレッシング》……対象のHPを徐々に回復
氷スキル《魔女の囁き》……対象の魔法攻撃力up
《アイスランス》……単体攻撃魔法
《魔女の接吻》……指定の敵のMP奪取
《アイスウォール》……術者の前に氷防御壁
光スキル《ライトヒール》……対象の状態異常を回復
風スキル《風属性付与》……術者の武器に風属性を付与
***ルカ*** 種族『龍人』♀
種族スキル《竜の神秘》全ステータスup
《竜の心臓》MP総量up
《竜の双角》攻撃力up
《竜鱗》防御力up
《竜の咆哮》魔法耐性up
竜スキル《拍龍》……指定の敵に攻撃・吹き飛ばし
《臥龍》……術者の攻撃・防御力up/術者は移動不可
《双翼撃》……単体攻撃魔法(物理)
《ドラゴニックフロウ》……範囲攻撃魔法
土スキル《アースウォール》……術者の前に土防御壁
《アースヒール》……術者のHPを徐々に回復
風スキル《エアカッター》……単体攻撃魔法
《ウインドエッジ》……範囲攻撃魔法
大剣スキル《大切斬》……威力upの斬撃
《上段斬り》……威力upの斬撃/敵の詠唱力down
盾スキル《ブロッキング》……敵の敵対心up
《シールドバッシュ》……盾攻撃/スタン効果(微)
***祥果さんの取得魔法は、大半が宝珠によるもの(水と氷)。
ルカの幾つかのスキルは、『契約の指輪』によって取得したモノ(土と風)。
両者とも、スキル振りによる補正スキルに関しては略。
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