第12話 姉妹仲良く拠点攻め!
夫婦がそんな事をしている内に、子供達も順々に起きて来た。祥果さんはきっちりと着替えを畳んで用意していて、1人ずつ呼んで着替えを手伝っている。
どうやら昨日の冒険や外遊びで、痣やら傷が肌についていないかチェックしている様子。昨夜の入浴で、メイとアンリは点検を終えていたのだが。
女の子の身体に傷がつくのは、母親としては見過ごせない模様。
長女のルカは散々渋ったが、結局は祥果さんの言いなりに。それでもマントの寸法を直して貰ったのに気付くと、少しだけ嬉しそうな表情に。
髪を梳かして編み込んで貰う段になると、完全に大人しくなってしまった。
メイは逆に、簡単なチェックで終了の運びに。髪を整えるのも、何故かネコ耳付きのリボンで簡単に終わってしまう。手鏡の自分を見せられて、メイもこの上なく満足そう。
どうやら、昨日作って貰った一品らしい。
アンリの番の時も、やっぱり着替えて終わりと言う簡潔さ。一緒に寝たネコの縫いぐるみを脇に携え、それにはネネは羨ましそう。取られないように、アンリは後ろ手に隠す構え。
その当事者のネネは、着替えを極度に恥ずかしがったので。結局は、央佳も一緒に手伝う破目に。特に問題無いと診断されるまで、祥果さんは容赦のないこねくり回し様。
そしてようやく納得がいったのか、朝食にしましょうとお許しが出て。
「央ちゃん、悪いんだけど何か適当に買って来て……私とネネちゃんは、一緒に部屋でお留守番してるから」
「何だ、こっちの料理は味が薄いから、なるべく作るって言ってたのに……あぁ、何か縫い物でもするつもりか、祥ちゃん?」
「うん、ネネちゃん用の縫いぐるみを、早急に1つ作りたくて」
そんな理由ならと、央佳はメイを伴って朝の街へと買い出しに出掛けて行く。暫くしてパンやフルーツ、ミルクやジャム類を大量に購入して戻って来た。
お留守番を言い渡されていたルカは、朝食のテーブル準備に苦労している模様。宿の備え付けのテーブルは、どう考えても6人家族には小さ過ぎる感じ。
それでも何とか無理やり食材をテーブルに乗せて、家族で周囲を囲みに掛かるけど。すし詰め状態なのは否めない、ネネはちゃっかり央佳の膝の上に陣取っている。
そんな幼女の腕の中には、真新しい兎の人形が。
機嫌も上々な四女は、父親に給仕されてパンとミルクで食欲を満たしている。それを眺める祥果さんも満足そう、アンリもどことなく安心した様子。
次女のメイは、朝食もそこそこに今日の予定をしきりに気にしていた。どうやら彼女的には、このエリアの敵に物凄い物足りなさを感じているみたいだ。
さもありなん、姉妹はその辺のカンスト猛者よりも強いのだ。
ドロップ品もしょぼいし、このエリアの敵と戦ってもストレスが溜まるだけだろう。とは言え、一緒にパーティ活動をする祥果さんの安全を考えると、いきなり強敵相手は怖い。
その道理を、彼女も一応は分かっている様子。
「今日は、この街の名声上げをするつもり……みんな、今日も頼むな?」
「お父さん、昨日買って貰ったばかりの剣が、もうボロボロになっちゃったの……捨てるのは勿体無いし、どうしたらいいかな?」
「お姉ちゃんてば、力任せに殴り過ぎ!」
困った様子のルカをメイが茶化すが、これは恐らく熟練度が低いせいだろう。央佳は受け取った剣を詳細に調べるが、なるほどこれは酷い。
刃がボロボロで、修理より買い替えた方が早いかも。
このゲームは武器にも防具にも、耐久度と言う数値が存在する。使い込むうちに減って行って、ゼロになると壊れるのだが、修理すれば元に戻る。
ただし、修理に出すのもお金はそれなりに掛かるし、安物に関しては買い替えた方が良い場合も。央佳もそちらを提案して、ルカはそれを了承。
何にせよ、最初の内は安物を使い潰して熟練度を上げるのも手だ。
熟練度はその言葉通り、その武器を使い込めば上がって行く。高くなれば武器の耐久度の減りも小さくなるし、逆にダメージは高くなる仕組みだ。
ダメージを上げようと思ったら、その武器にスキルポイント振り込む手もある。これはレベルが上がると自動的に2Pほど入手出来て、何に振り込むかはその人の自由だ。
武器に振り込めば武器が、魔法に振り込めば魔法が得意になる仕組みだ。
ファンスカはスキル振り込み制度と前にも述べたが、このスキルPが10貯まる度に、冒険者は《スキル》を得る事が可能だ。つまりは必殺技を覚えたり、魔法を覚えたり出来る訳だ。
他にも《HP20%up》や《攻撃力10%up》など、常時作動型の補正スキルなども存在するので、まぁ一概には言えないが。とにかく、キャラが強くなるのは間違いのない事実。
冒険者は、こうやってキャラを練り上げて行くのだ。
長女と次女での口喧嘩を制して、央佳は今日のスケジュールの続きを発表する。昨日と同じく祥果さんメインのパーティを組んで、ルカとメイで戦闘を進める。
名声上げに獣人の拠点を攻撃しますと告げると、子供達は一斉に盛り上がりを見せた。獣人や蛮族の拠点攻めは、派手な上にお宝に巡り合うチャンスなので、楽しみにする冒険者は多いのだ。
その代わり、敵の数は多いし必ずリンクするので厄介ではあるが。
「あっ、獣人の集落潰しのクエ、私が受けてた! パパ、はいこれ♪」
「おっ、ありがとう、メイ。……問題は、他の冒険者に先を越されて無いかだけだな」
人気のあるクエだけに、集落に行っても獣人はもぬけの殻だったと言うパターンも実は多いのだ。期待し過ぎないようにと、一行は冒険の支度を整えていざフィールドへ。
ちなみにルカの装備は、街を出る前に若干の変更が。ボロボロになった片手剣を下取りに出して、新しく大剣を購入したのだ。央佳がふざけ半分に、ルカなら大剣も片手で持てるんじゃないかと言った所。
本当に装備出来てしまって、何とも破天荒なイレギュラー。
大剣は、普通の冒険者なら両手持ちで、盾を装備出来ない分威力が高いと言うメリットが。耐久度も高いので、ガンガン削るには持って来いの武器なのだけれど。
冒険者たちの琴線にはあまり触れないようで、実は人気は低い武器である。両手武器なら、アタッカーはもっと威力の高い両手斧や両手鎌を選択するのだ。
両手槍だとチャージ技もスキルで豊富にあるし、つまりは中途半端な印象が。
ただし、片手で扱えるとなると話は変わって来る。攻撃速度はやや遅くなるが、その分片手剣よりも威力は遥かに高い訳だから。これからはこっちにしなさいとの、父親の説得をルカはすんなりと了承し。
そこからは張り切り娘達の狩り行進のスタートだ。昨日と同じ布陣で、戦うのはもっぱらルカとメイだけど。アンリは祥果さんの隣、ネネに限っては央佳が抱いている始末。
しかもそのネネの腕には、兎の縫いぐるみが。
ファンタジー世界と言うより、ファンシーに偏っている気がしないでも無い央佳。それでも目的地に向かって、家族パーティは順調に歩を進める。
相変わらず途中に遭遇するモンスターは、足止めにもならない弱さで瞬殺の憂き目に。いや、娘達が格段に強いだけなのだし、文句を言う筋合いも無いのだけれど。
後方でそれを眺めながら、強さのインフレに頭を悩ませてみたり。
――バランスって大事だよなと、何となく敵に同情する央佳だった。
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