仕事してる彼
彼の仕事は多岐に渡る。
図面の作成は事務所でする仕事。
工場での仕事は鉄板の切断や、溶接、組み立て。
小さな会社なので、一人がすることが多いのは当たり前。ただ、図面は彼だけの仕事。
「残業で遅くなるから、お弁当か何か買ってきて届けてもらえると助かる」
と電話があり、私は作っていくか買っていくか少し迷ったけど、買って持っていった。
この日、彼は溶接をしていた。
狭い工場の中で、大きな身体を縮こませるようにして無心で溶接をする彼。
作業服は汚れていて、髭もだいぶん伸びている彼の姿を見ていると、とても心が痛む。
私は働いていない。彼が毎日こんな風に頑張ってくれているから成り立っている暮らし。
側から見たら彼のこの姿はどう映るか分からない。でも、私はこの彼の姿は尊いもののように見えた。
ありがたい。彼にもっと感謝しようと思った。
彼が仕事を終えるまでの3時間、私は彼にスポーツドリンクを持ってきたり、邪魔そうなものをどかしたり、必要なものを取ったり。そんなことしかできなかったけれど、とにかく一人、働く彼の姿を目に焼き付けた。
自宅に戻って寝る前、彼は私に言った。
「ありがとう、花香。花香がいてくれるから頑張れるよ」
私は涙が出そうになった。
「こちらこそありがとう。お疲れ様」
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