存在

「ご主人、天音さんといると表情が違うね。生き生きするというか」


二人でコンビニに行った時、コンビニで働く友人に言われて私はそうならとても嬉しいなと思った。私でも彼を元気にしてるのかなと。


私にとって彼はエネルギー源。彼が休日、家にいるだけで、普段は捗らない家事が進む。やろうという気になる。彼の存在はすごいのだ。

それは恋人だった時とはまた少し違う。



「ねえ、なんで彼だったの? 彼のどこが好きなの?」


同じ研究室で彼と付き合っていることが判明した時、何人かに尋ねられたことがある。

そのとき私は答えていた。

「人間味に溢れているところです」

その言葉に首を捻られたけれど。

彼は研究室でちょっと変わった人で、でも特別仲のいい人がいるわけでもなく、謎に満ちた存在だったようだ。

講義中の姿勢のいい静かな佇まいも好きだったし、綺麗な字も好きで、彼のレジュメを何枚も集めた。

その頃は「好きな理由」があったのだ。


でも、今は彼の好きなところを尋ねられると、きっと私は困ってしまう。

彼の存在そのものがありがたく、私にとってなくてはならないものだからだ。どこがとかいう問題ではない。彼が生きている。それがかけがえのないものなのだ。


コンビニの友人の言葉を聞いて私は思った。彼にとっての私が、そうであればいいな。

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