ん? パンチか?

お風呂が嫌いになったのはいつからだっけ。

入浴剤を入れてゆったりという時間にならない。

お風呂に入っていると嫌でも自分と対峙してしまう。その日の反省。気になること。メンタルが落ちていないときはまだまし。

メンタルが落ちてくると、ありもしないことまで考えて不安になり、そればかりか黒い自分が見えるときもあって、自己嫌悪にずぶずぶと沈んでいく。

シャワーにしても同じこと。狭い場所に一人。自分のことばかりを考えてしまう嫌な時間。


だからお風呂から上がるとほっとする。

彼が起きていれば彼にぴとりとくっつくし、起きていなくても彼の無防備な寝顔に安堵する。

本当に私にとって彼ってどれだけ救いになっているか。


毎日浅い眠り。目が覚めて彼が隣にいることにほっとしながらまた眠る。

その日も何度か目が覚めては寝てを繰り返して、カーテンの外が白み始めたかなというころ。

「ん?」

彼の拳がにゅっと突き出された。私は、え?何?パンチ?と動揺する。

彼の顔を見ると、薄目で半眠りの状態。

これは何だろう?

そう思っているけれど彼は手を引っ込めない。


ああ。これは。


私はおずおずと彼の腕へと移動した。それを待っていたように腕が折りたたまれた。

そうかあ。腕枕の意味だったのね。


彼の顔はまだ半眠り。

私はいつもより幸せな朝に口元が綻ぶ。

疲れているんだもの、まだ寝てていいよ。

私は幸せそうに寝ている彼の寝顔を堪能するのだった。

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