傷ついた言葉

彼は言葉が巧みではない。

分かっている。

分かっていても傷つくこともある。

今日は彼が、自分は損なことばかりを選んできたという話になり、

「お前と結婚したのも損」

と言われ、私は悲しみと怒りで動揺してしまった。

彼が私が病気であるのに結婚したことを一般でいう「損」だという意味で言ったのも分かっている。それでも私は深く傷ついた。

確かに私は病のせいで普通には働けないし、その薬のせいで子供も作れない。一般的に言えば彼の言うとおり、損な選択になるだろう。

でも私は、

「あまりにも酷くない?失言だと思う」

と言ってしまった。涙が落ちた。

「それでもお前を選んだ。それは好きだからって言いたかったんだよ」

彼はそう言って、

「失言かな?そうかな。だったら謝るよ」

と謝ったけれど、私の中では彼に「損」と思われているということに悲しみ、それから、実際損をさせていることに申し訳なさが残った。


結婚しても同じ人間ではないから、思いや考えの違いがあるのは当然だ。

でも、こんな夜は彼の寝息が遠く聞こえる。

だめだめ。それでも彼は私を選んだと言っていたのだから、私はそちらをありがたいと思わないと。

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