1-12

巨大な穴の中に降り立ったイクスは、周囲の状況の確認を急いだ。


「ここは何の施設だ?廃墟のようだが。」


 事実、イクスの降り立った場所は、その星の前世紀の機械兵器製造の工場らしかった。朽ち果てた兵器の数々がシャイニングを見つめていた。


 イクスが辺りを見回している時だった。金属のこすれ合う大きな音と共に、イクスの入ってきた巨大な扉が閉まり始めた。金属の扉は最後まで動き続け、轟音と共に出口は塞がれた。


 「なるほど、閉じ込められたって訳か。あれくらいの扉、破壊するのは訳のない事だが…。敵は何を考えている?真意を確かめなければ。」


 イクスは機械たちの罠に嵌まっていることを理解しつつも巨大な空間をさらに下へと降下していく。


「この機械の残骸や設備…ここは兵器を作るための工場だったという事か?」


 シャイニングが工場の最深部に辿り着くか否かの瞬間だった。突如としてシャイニングの手足に電磁ワイヤーが巻き付けられた。不意を突かれたシャイニングはそのまま全身にワイヤーが巻き付けられ、設備のクレーンに吊るされる形となった。機械の残骸に隠れていた自立兵器は俄かに動き出し、シャイニングの周囲に電磁フィールドを形成し、シャイニングを完全に捕らえるのだった。


 「なるほど、捕獲が目的だったという訳か。初めから罠に嵌めるつもりで偽の情報を流していたのか。」イクスは感心したような表情で呟いた。


「しかしだとすれば敵の目的もあらかた読めてくる。危険は伴うかもしれないが、このまま敵の作戦に乗ってやるしかない。」


 イクスは敵の裏をかくためにわざと無抵抗を装った。機械たちにわざと捕らえられ、自らを、惑星を動かしているシステムの中心部まで誘導させようとした。




 瞬間、天井がばらばらと落ちてきてインフェルノが現れた。機械たちにとってはイレギュラーだったらしく、束の間、その場のAI兵器たちは思案するための時間を要した。機械たちは直ぐに攻撃態勢に入ったが、インフェルノの前にその攻撃は為す術なく跳ね除けられていった。マリーは敵を切り伏せた後、シャイニングを確認した。


「偶然だな、青色。なんだ、その恰好は。馬鹿丸出しじゃないか。」

敵にホーミングレーザーを浴びせながらマリーはシャイニングを見据える。


「まったく、偽の情報を何度もつかまされて嫌になるよ。で、君は何かつかんだのか?イクス・ウィル。」


周囲の敵は一掃されていた。


「今、つかもうとしていた所だ。君のせいで計画の遂行が不可能になった。」

その刹那に、2機のSOOは剣を交えていた。会話が終わらないうちに、インフェルノはシャイニングに突撃していた。息つく暇もなく2人は戦闘に入る。


「僕を見るなり攻撃か。それしか考えていないのか?我々がサーチャーに乗る意味は戦う事ばかりではないはずだ。あまりに無体だな。」


「全てお互い様さ!私たちの星が二つのシステムに分けられている以上、避けられない運命なんだよ。ここであんたに消えてもらっても私には何の損もないね。戦う理由はそれだけで充分さ!」


マリーがそう叫んだ瞬間、インフェルノの振り下ろしたこぶしがシャイニングを直撃し、シャイニングは穴の底、深く掘られた地面の最深部に叩きつけられた。


「どうだ!決まり事を守るだけのお坊ちゃんには私は倒せないのさ。悔しかったら君も信念ってものに基づいて行動しなよ!」


 インフェルノの攻撃をまともに受けたシャイニングであったが、間一髪のところでバリアが作動し、致命傷は避けられた。勝負に固執するマリーに対し、イクスは冷静にその場を対処しようとする。


「なんとか攻撃を感知できたか。しかし、ここでインフェルノとやり合うことは得策じゃない。僕がここに連れて来られた理由をいち早く探し出さねば。」


 シャイニングに同期されたイクスの精神は、答えを求めて周囲の環境に問い続けた。索敵システムを全開にして周囲を探索する。


 答えを見つけ出したシャイニングは瓦礫の下で動き出す。大出力のビームが地面に向かって放たれると、瓦礫は吹き飛び土煙が辺りを覆った。土煙の中で目を光らせていたシャイニングは、地面に向かってブレードを抜き放ち、自らの足元の岩盤を円の字を描くように切り裂いた。


「なんだ⁉」突然巻き上がった土煙にマリーは警戒を強めた。「目くらましか?そんな事をしたって無駄だよ。さっさと出てきな。決着を付けようじゃないか。」


 マリーの頭の中にはシャイニングを討ち倒すことしかなかった。惑星オリジナル1の象徴ともいえるSOO同士の戦いは、自らの星をかけた戦いと言ってもよく、対をなしている相手との戦いに勝利することは名誉な事とも言えた。


 土煙の中から一向に姿を見せない相手に対しマリーは疑問を抱く。


「動きがない?尻尾を巻いて逃げ出したか?サラウンドのスキャンを!」

インフェルノは土煙の中へ突進する。


「何もない。奴はどこへ消えた?」


 モニターに映る穴を彼女が見つけるまでに時間はかからなかった。


「この穴は何だ!まさか先を越されたっていうのか?」

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