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マリーはSOOを召喚するに当たった人間たちに容赦なく問い詰めていた。
「貴様ら、何がどうなっているんだ。あの機械の群れは何だったんだ。まさかこの星の人間たちがグルになって私を嵌めようとしたんじゃないだろうな。SOOの能力を手に入れようとしたんじゃないのか。」
翻訳機をあえて使わず、マリーは相手に怒りをぶつけた。
「め、滅相もございません。あなた方のような超越した力を持った方々を相手に我々が何かを行使できるとは思いません。」
「じゃあ何を隠している!返答によってはこの星を破壊する!」
マリーはインフェルノに乗り込み、怒りのままその感情を行動に移そうとした。
「落ち着けマリー!ここで事を荒立てても何もわからないままだぞ。この星の人間たちと手を合わさなければ解決はないんじゃないのか?」
ブルーノはマリーのお目付け役と言っても良い存在であった。
「まるでイクス・ウィルのような事を言うじゃないか。しかしな!こっちはあそこまでやられたんだ!」
マリーの怒りは収まることはなく、ブルーノたち船の一同が恐れていた事が彼らの目の前で表現された。
インフェルノは片腕を伸ばし、手のひらに収束されたエネルギーを一閃に放った。放たれたビームは格納庫の壁を一瞬で溶かし、壁だけでなくその射線上にあったもの溶解させた。機械都市には大穴が開けられ、そのビームは重力に引かれる事なく水平線の彼方の宇宙空間にまで突き抜けていた。閃光は機械都市の工業ブロックを突き抜けており、幸い人的被害は出ていなかった。
「機械の生産設備だったか?この星のほとんどはオートで動いているらしいな。さあ、どうする?お前たちの知っている洗いざらいを話せ。」
「こ、この星は全てが機械によって制御されています。人々はAIの作り出したシステムの上で生活をしているのです。今までエラーが起きた事などなかった。異常があるとすれば人ではなくAIでしょう。全てを管理するマザーコンピュータがこの星のどこかにあると思うのですが…。」
「あると思うだと?貴様らはそんな重要なことを把握もせずに戦争なんかやっているのか?そりゃ存亡の危機にも陥るよ。」マリーは呆れながら言った。
「あくまで推測に過ぎないのです。この星の複雑に入り組まれたネットワークの全貌を把握するのは困難を極めます。」
「そうか、それならネットワークの回線を貸してみな。私が調べてやるよ。」
マリーはそう言うとインフェルノと自らの脳をリンクさせた。自らの思考とSOOの回路を並列化させることにより、膨大な量のデータを一瞬で処理し、惑星のシステムの全貌を明らかにした。
「ふうん、マザーコンピュータねぇ。ここにネットワークが集約されているってわけ。このマザーは一体どこからやってきたものなのかしら。俄然、興味が湧くじゃないか。」
柔らかな光に包まれたコクピット内でマリーは呟いた。
「マリー、何か分かったのか?」ブルーノが呼びかける。
「ここから800km西へ行った海底にデータの集約ポイントがあるわ。これがマザーコンピュータってやつじゃないのかしら。こんなものを放っておくとはね。」
「私共は…探そうと思った事もなかったのです。それに管理用サーバーは無数に存在しており複雑に入り組んでおりまして…」
「もういい!今からは宝探しの始まりだ。戦争なんてやっている場合じゃないぞ!」
別次元の宇宙からの使者の力まで頼り、戦争に明け暮れようとしていた星の住民であったが、2機のサーチャー・オブ・オリジンのために自分たちの抱いていた野望は置き去りにされる形となった。だが、それは問題の解決に向けて、一歩大きく事が進んだかのようにも思えた。イクスとマリーは各々の導きだしたポイントに向けてそれぞれのSOOの羽を向かわせるのであった。
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