1-7
茫洋たる平原も、海も、灰色に濁った空も、無数の戦闘マシーンによって覆われていた。AIにより生み出されたマシーンの種類は多種多様であり、機械自身により統制されていた。
地上を生き物のように這う戦車も、空を飛ぶ機動兵器も、全てがAIにより統制され敵を討つようインプットされており、人間が関与することはなかった。人々はただ決着が着くことを待つのみであった。
いびつな形をした空中要塞は各陣営の本陣となっており、そこには多数の人間が乗り込み、戦いの行方を見守っている。互いの要塞近くにイクスとマリーそれぞれの乗り込んだSOOは待機していた。シャイニングとインフェルノには二人の意志が宿っているようだった。
キャノン砲の弾が炸裂する轟音と共に戦いは始まった。互いの陣営にはミサイルや艦砲射撃による粒子ビームが撃ち込まれる。その光景は機械が壊し合うだけの凄惨な光景であったが、生命の損失は最小限に抑えられているかもしれなかった。不確かな対立構造の中、戦争が始まった。
ミサイルや砲弾が撃ち込まれるよりも速く、2機のSOOは互いの剣を交えていた。音速を超えるスピードでぶつかり合った2機の剣は、ガキィッという音と共に凄まじい衝撃波を放つ。
「剣を引けよ、イクス・ウィル!あんたには私たちがサーチャーに乗る意味なんか分かっちゃいないんだ。この星のことは全て私たちに任せておけばいいんだよ。」
ブレードを交えながら、マリーはイクスを牽制した。
「自惚れが強いな、インフェルノのパイロット。SOOに僕らが乗る意味を理解していないのは君の方だ。星の戦闘に介入するのは、我々の星とこの星の互いの利益のためだ。君のように私利私欲な考え方では何も解決はしない。」
2機のSOOは戦闘を続ける。浮遊し、飛び交いながら何度も互いのブレードを弾いた。
「ぬるい奴だが!」
マリーがそう呟いた時だった。それまで戦闘を繰り広げていた周囲の機械たちに異変が起きた。突如として、戦闘中だった2機のSOOに対し攻撃をし始めたのだ。互いの味方だったはずの戦闘マシーンが、敵味方関係なく二人に牙をむく。巨大な空中戦艦の砲塔は二人に向けられ、人型の機動兵器は次々と体当たりを仕掛けてきた。
「何だ、こいつら!」
マリーは混乱しながら叫んだが、攻撃が止むことはなかった。二人が混乱している間にも、無数のAI兵器による攻撃の度は増していった。
大量のビームをかわすインフェルノは海上に出た。無数の人型兵器の追突を受け、羽交い絞めにされたインフェルノは海の中に落ち、そのまま海中へと引きずり込まれるのであった。
地上で戦闘を行っていたイクスは大量の機械と戦いながら司令部と連絡を取った。
「司令部聞こえるか。これはいったいどういう事だ?識別信号はどうなっている」
「聞こえます。イクス殿。それが、私どもにも分かりかねるのです。この攻撃は人による命令ではありません。AI兵器は完全に制御を失っております。私たちも手を尽くしているのですが解決しません。」
個々の兵器はSOOの相手ではなかったが如何せん数が多く、シャイニングは苦戦を強いられた。ほとんど全ての攻撃をかわし、またバリアに守られているSOOにこの星で用いられる砲弾やビーム兵器が命中することはなかった。
一方でシャイニングの撃ち放つレーザーは、ロックオンした目標を追跡し、命中すれば一瞬の内に鋼鉄のボディを溶解させるのであった。しかし、何体兵器を倒そうが敵は無数に湧いて出る。制御を失ったAIたちの目は赤く不気味に光っていた。
「どういう事なんだ、一体!」
イクスは混乱しながらも、目の前の兵器による攻撃に応戦するしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます