1-5

 まばゆい光と共に、イクスの駆るシャイニングはインセンリー77の宇宙空域に辿り着いていた。次元に穴が開いた時の激しい空間の揺れは、地上で待機していたマリーに素早く察知された。


「お越しになったようだ。早速、挨拶ぐらいしておこうじゃないか。」


 インフェルノは唸りをあげて起動したかと思うと瞬時に空へ舞い上がり、数秒足らずで目標の地点まで移動した。共に次元を超えてきたクルー達はどこか自信ありげに、惑星の代表一同は唖然としてどこか不安げに、空を見上げていた。シャイニングの前に現れたマリーは早速、イクスに通信を入れた。


「君がファーストの新人だね。話は聞いているよ。秘匿情報ではないらしいからね。得られる情報は全て得ている。私の名前はAN=マリー、よろしく。」


 マリーは威圧ともとれる態度でそう言い放った。彼女のカラーズとしての自負心がそれをさせているのであった。


「僕は第一統合政府の任務を受けてこの惑星に来た。戦乱の最中にあるこの惑星を救い出し政府の一員として迎え入れることが目的だ。」イクスは突然の出来事に動揺もせず受け答えた。


「任務?救うだって?君は何か勘違いしているんじゃないか?こんな滅びゆく惑星に価値などあるものか。我々が全てを破壊して支配してやれば、なんの問題もないだろう。」マリーは本音で、直情的に自分の感情を相手にぶつけた。


「やはり、セカンドの人間とは相容れないな。」


 二人とも初めからこうなる事を予想していたかのように戦闘に入った。インフェルノが四次元空間に格納していた巨大なブレードは掌の中で形となり、シャイニングに振り下ろされる。シャイニングは振り下ろされたブレードをかわして距離を取り、レーザーで応戦した。放たれたレーザーはインフェルノを追尾して攻撃したが、全ていなされた。


「やるじゃないか、新人君。」


「君だって新人だろ。」


 シャイニングの、格納されていたブレードが右腕に備え付けられ二人は近接戦闘に入った。互いのブレードが組み合わさり火花を散らせた後、二人は距離を取り互いに向き直った。すでに星の戦乱には興味がなく、別の目的意識を持っていたマリーがイクスに問いかける。


「君も知っているだろう。オリジナル1とサーチャーに隠された謎を。」


「いきなり何の話だ?知らないし、興味はないな。」

イクスは挑発する素振りで言い放った。


「ふんっ。このSOOの技術が私たちの星のオリジナルのものではないってことさ。私たちはどこから来たのかも分からない代物に乗って戦っているということだ。しかもそれは私たちの星の代名詞とも言える存在だ。気にはならないのか?星の起源が。」


「僕はそんなことに興味はない。今一番重要なことはこの惑星の救済という任務を果たすことだ。」


 生真面目な性格であるイクスは、初めから放つ言葉を決めているかのような態度でマリーに言葉を返した。だが、そんなことは気にせずに、こちらもそれは重要ではないとばかりにマリーは続ける。


「この惑星、私たちの星と似ていると思わないか?統治機構は二分され果てしない闘争を続けている。しかも原因不明ときた。私たちの星のロストテクノロジーへの手掛かりがあるかもしれないという事さ。」


「興味はないな。そんな私情は、僕は戦いの中に持ち込まない。」


 何を言われようが、マリーは隠された謎を解き明かすつもりでいた。


「私情なんかじゃないさ。私たちカラーズが、SOOに乗る本当の意味を一度よく考えてみるんだな。」


 二機の戦闘は終了し、マリーは踵を返してその場を立ち去った。

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