第16話海浜公園1
五月三日のゴールデンウィーク。留美子、真、由美子たちは電車に揺られていた、窓の外には五月の穏やかな日差しを照りかえす海が見えている。僚の住む緑浜へもう三駅で着く、車内では連休を楽しもうとする家族、友達グループ、恋人たちがそれぞれ自分たちの計画を話し合っていて賑やかだった。
流れる窓の景色を眺めながら。
「なあ」
「何ですか留美子さん」
「私たち、何だかういてるよな」
三人ともGジャン、青いポロシャツ、オフホワイトのジーンズで揃えている。
白い野球帽も同じだ。
「偶然被りましたね」おだやかに由美子は言う。(いつまでもオマケでいられないわ、今日は一歩も二歩も先に行かせてもらうから)
「何だか私たち引っ越し業者みたいですね」
(留美子さん、あなたの公園デートで僚とペアルックだなんて許せません、今日は私も同じ服でアタックです)
「それより何にも持ってこなかったよな」
「それなんです」
「それなんだよな」
ゴールデンウィーク前に僚からじいちゃんとばあちゃんが喜んでさ弁当もお菓子も全部用意してくれるから手ぶらで来てと言われた。
手作り弁当に手作りお菓子をそれぞれ内緒で計画していた三人だが僚からばあちゃんが張り切ってるからとの言葉で思いとどまった。
せっかく僚のおばあさんが喜んでいるならここは甘えさせてもらおうと三人は抜け駆け無し、女子力は次の機会にもちこそうと話しは落ち着いた。
「まあ、雪さんも来るし、ひまわりの種のこととかいろいろ聞きださないと」
「「そうです」」
やがて電車は緑浜駅へと滑り込んだ。
改札を出たところで僚と雪が迎えていた。
「よう、田舎へようこそ」
「よく、来てくるたわ、ありがとう」、
僚は三人の期待通りGジャン、青いポロシかャツ、オフホワイトのジーンズ、白い野球帽。顔をほころばせていた。
雪はジーンズに黄色いポロシャツ、白いパーカーを羽織り笑顔で出迎える。
(((キター やっぱり被ったよー)))
叫びたいほど、嬉しいがここはがまん。三人はさわやかな笑顔作りにいそむ。
「今日はよろしくね」
(オマケ、先をこすな)
「海浜公園はこっちだよ」僚がスポーツバッグを持ち上げ案内しようとする
「何」
「何が入ってるの」
「今日、遊ぶ道具。バドミントンとソフトバレーのボール」
「うふふ、小さい砂浜だけど今日は楽しむの」といつの間にか真の横にならぶ雪。
真由美はちゃっかり僚の左側へまわる。
僚の右手にはスポーツバッグが、それが邪魔で右側に回れない留美子。
(ぐ、オマケに先を越されてるな)
唐突に僚が後ろを振り向き「留美子はテニス部だからバドミントンも得意かな」
「もちろん、ラケットならなんでも来いよ」
輝いた顔をみせる
(そうね、スポーツならみんなには悪いけど私が一番、差をつけさせてもらうわ)
「私たち僚に言われて何にも持ってこなかったけど」
「ばあちゃんが喜んでさあ、後でじいちゃんが車で持ってきてくれる」
真由美が僚の隣で上目遣いで言う。
(ふふふ、今日の上目遣いはたっぷり練習してきたわ)
最後尾では真が雪に手をつながれていた。
(うふふ、可愛い真さん、私の妹になって欲しいな)
それぞれの思惑を胸に、五人は海岸通りをテクテク歩いていく、五月の日差しは少しきついが海からの風が心地よい。
公園に着き芝生広場にビニールシートを敷き終えた僚はみんなに
「さあ、何からする」
「バレーボール」と珍しく真が口火を切る
(む、オカッパ今日は積極的だな)
五人は砂浜へ駆けだし輪になり、ボールが空に舞った。
しかし、真壁真は致命的だったボールを手で受け止められず顔で受け止め皆が笑う。
「それ真」「ハイ」ポテと顔で受け止める
しかし、真がボールに追いつこうとするたび
胸がユサユサ揺れる。
((あれは反則だわ))留美子、真由美は僚の視線の先を見て想うのだった。
次にダメだったのが雪。ボールはレシーブするがボールはあちらこちらへと飛んでいく。
それでも嬉しい顔の雪。楽しい時間を砂浜へ押し寄せる波が流して行く。
「少し休もうか」と僚が雪に向かって言うと
「うん、少しね」と、ああやっぱり雪さんの心臓のこと僚は心配してるんだ、心配されてるの羨ましいな、でも自分も電車通学のとき壁ドンで守ってくれてるし・・・少し皆に遅れながら芝生広場へ戻る真の悩め顔を見て
「真、顔真っ赤」「へ」「顔でレシーブばっかりしてたから」皆が笑顔で言う。真は悩んでいた顔を悟られなかったことに安堵しながら「みんな、私ばっかり狙うからでしょ」
「真は可愛いな」と僚がさらりと言うと、う、可愛いて・・・顔が赤いのが今は助かったと「えへへ」と誤魔化す。留美子たちが聞き逃すはずもないが笑ってなんとかやりすごした。
「プープー」とクラクションの音が駐車場からする。
「ああ、じいちゃんが来た、みんな昼にしよう」と駐車場へと向かう。
「「「私たちも手伝う」」」
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