第15話ひまわりの種
実力テストが終わりゴールデンウィークはもうすぐだ、春の冷たかった風を学校生活を楽しむ生徒たちは嘘のように忘れ、少し動くと汗ばむ陽気のなか活気に溢れていた。
そんなある日の放課後である。
「じゃ、俺バケツの水捨ててくるわ」「うん」「机片づけとくから」
「やっぱ、四人ですると掃除も早いよね」と由美子。
「て、なんであなた掃除当番じゃないのにいっしょに掃除してるんですか」きつめに留美子。「いや、だから・・」「だから何」
その横で机を片づけながら真壁真はボソリと「おならっ子」とつぶやく。
「何よ」
「いえ、別に独り言なので気にしないで下さい」表情感のない顔で黙々と机を片づける。
「それより、ちゃんと僚にお礼言ったの」
「うぐ」まだ言ってない、テスト中おならをしたこと、高橋僚が助けてくれたこと、由美子は何と礼を言おうかとあの日から悶々としていたのだ。こんな思いをしたのは初めてのことだわ。
「それよか、あと三日でゴールデンウィークなんだよね」「そうです、ゴールデンウィークです、問題は」由美子の胸の内など知らずに話す留美子と真。
「どこか行きたいよー」「僚とでしょ」「それが問題だ~」
「わたしもわたしもいっしょに」「何で」
「だから、お礼よ、お礼言うチャンスが欲しいのよ」
「「「はあ~、どっか行きたいよーゴールデンウィーク!」」」
「それなら俺んところへ来る」
「僚!」「い、いつからそこに」僚は戸口に空のバケツをぶら下げて立っていた。
「それって」留美子が焦って返答。
「僚の家に行くの?」真の目は輝いていた。
「うん、俺んところて海に近いだろ、小さな海浜公園があるんだ、みんなで弁当もって海みながら食べようぜ」
「「「行くうー」」」
「日は明日でも考えよう、それと・・・」言う僚の頬が赤みを帯びながら留美子、真に近づいてくる。「何、僚顔赤いよ、風邪」留美子は僚の様子が変と気づいたとき、僚はポケットからゴソゴソと青い封筒を三通とりだした。手紙と一瞬戸惑う留美子たちに「これ、その何だ、俺の気持ちていうか、お礼だ」「・・・」唐突に渡された青い封筒に戸惑い、声が出ない三人。
「あとで開けてみて、俺、今日は用があるから」とさっさと鞄をもち教室を出ていく僚。
「告白・・・僚から・・・」真がぼんやりとつぶやく。「いや、三人の女子に一度に手紙渡すてことは告白じゃない」冷静な留美子だった、テニスをしているだけに状況判断は素早い。しばらくの沈黙。
「僚から手紙もらったよ」真は今の現実を理解したのか初めに言った。
「そうだな、僚からだよ」
「わたしももらった」と言う真由美にすかさず「ああ、それ、あれだわ、僚優しいから不幸平にならないようにしたんだわ」冷たく言う留美子。
「なんとでも言ってよね」と言い返す真由美。机の上に三通の手紙が並んだ。
「開けて見ようか」口火を切る留美子。
「そうですね」
「そう、そうよね」
青井留美子さんへ
いつもあなたのおかげで楽しい学校生活が送れています、ありがとう。幸せのひまわりの種を入れておきます、僕のささやかなお礼です。高橋僚
真壁真さん
電車の中で真さんを守ってるけど僕、へんな匂いしてない、女子てとてもいい匂いがするんすね。しあわせのひまわりの種を入れておきます、二年になってもクラス委員長頑張って。高橋僚
中畑由美子さん
公園でたすけた子猫とっても可愛いですね、今度ネコの名前教えて下さい、どこか寂しそうな顔されているのでしあわせのひまわりの種を入れておきます。 高橋僚
封筒ににはひまわりの種が十粒ほど入っていた。
「告白じゃないよね・・・」
「んー、お礼ね、ほら僚て口少ないから、だから私たちに面と向かって言うの恥ずかしかったからじゃない」冷静な留美子である。
「子猫の名前はミーちゃんていうのよ僚」
「「由美子さん」」
「はい」
「手紙分析官留美子のベクトル的な分析結果、あなたのはオマケです」
「同じく手紙分析官真壁真の意見も同じくそれはオマケです」
「うぐう、何もそこまで言わなくても、それより対策委員会を開くことを提起します」
「そうでした」
「では、私、真壁真が議長を努めます」
真壁真は教壇に、留美子と由美子は前の席に着席する。
ゴールデンウィークにおける高橋僚と海浜公園対策と黒板に背伸びして書く真。
「議長」留美子委員が手を挙げた。
「はい留美子委員」
「まずはお弁当対策ですね」
「そうです、最重要課題ですね」
「わたし、わたしが作るわ」
「「だめです」」
「ひぇ」
「これは微妙な問題です、まずは明日、僚の希望する弁当を聞いてから二人、いやしかたないですがオマケも入れて三人で平等にしましょう」真は淡々と、平等と黒板に書いて行く。
「まだ問題があります」
「そうです、留美子委員の言いたいことはわかっています」
真壁真は黒板にひまわりの種と書いた
「どうやら峰山雪が一枚噛んでますね」
と留美子委員は黒板をじっと睨んだ。
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