第13話真と雪の壁ドン
南山高校は桜に包まれ始業式も入学式も無事に終え、今はその淡いピンク色の花ビラを春風の思うままに舞い散らせていた。
二年二組の教室で幸せをかみしめ目尻を下げている女子が一人、真壁真である。ななめ後ろの席からジト目で真を見ているのは青井留美子。留美子の前には高橋僚の背が広がっている、そう、高橋僚、真壁真、青井留美子は二年になっても同じクラスになっていたのだった。
留美子と真は「やったあ」と抱き合い歓喜していたのだがすなおに喜べなかった真。
また三人で同じクラスになれてよかったよ、でも明日は入学式。雪ちゃんがやってくる、
そしたら電車の中、僚の壁ドンはやっぱり雪ちゃんだよね、今までずっと守ってくれてありがとう僚、これからは私、二人の邪魔せず電車の隅で見守るしかない・・・
さみしい気持ちもこみ上げてくるおかっぱだった。そして入学式の朝、とぼとぼと改札を抜ける。定刻通りに南山駅行きの電車がホームにすべりこんできた。「はあ」とため息をつく。プシューとドアが開く、真のため息を無視して人々は真を車内へと押しやる。
無意識に真はいつもの壁ドンされていた場所へと人混みの中かき分けて行くと、雪が真に壁ドンされていた。うう、やっぱりとつぶやき、他の場所へ移動しようとした時、僚の右腕からひょいと顔を出した雪がニコリと笑っておいでおいでと手招きする。
真はつられて二人のところへ自分の躰をねじ込ませて行った。
「おはようございます、真先輩」さわやかに笑う雪、切れ長な目、少し垂れていて可愛い。「おう、真か」「?」「さあ入れよ」続けて僚が言う。一瞬なんのことかわからなく立ち尽くす真の躰を僚の右腕が引き寄せて、
ドンと壁に手をやる。ふ、二人ドン。むう、僚の胸が前より近くにあるよ・・・
真は顔が赤くなるのを見られないようにうつむく。そっと雪が「これからは毎日二人ドンですよ」
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